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達セミに学ぶ 英語学習のヒント

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英語教師による英語教師のための情報シェアの場「達人セミナー」通称「達セミ」をご存知ですか。毎週のように自発的かつボランティアで全国各地にて開催され、それぞれの授業方法を公開しシェアしています。基本的には中学・高校の教師の方々が中心ですが、その授業には英語を楽しく学ぶヒントがたくさん隠されています。その中から毎号1名の先生にレポートしていただきます。

今回のヒントはこれ:

  • 洋書デビューのための最初の一冊

樫葉みつ子 先生

広島大学
樫葉みつ子 先生

英語力の向上につながることを楽しく続ける方法のひとつは,読書です。今回みなさんに紹介するのは,少し変わった本,講談社のルビー・ブックスというシリーズです。『老人と海』,『オリエント急行殺人事件』,『夏への扉』など,気になるタイトルの名作を原書で読んでみたいという夢を叶えてくれるだけでなく,洋書を楽しむ日常へと導いてくれるのが,このシリーズです。

1 ルビー・ブックスの特徴

その特徴は,ヘミングウェイ,アガサ・クリスティといった有名な作家によるオリジナルの英文に,ところどころに日本語訳を小さいルビで打ってあることです。そのため,英語の意味が気になるところがあれば,辞書を引くことなくルビ訳を読んで確かめることができます。もちろん,その必要がなければ英語だけを読み進めることもできます。つまり,一言一句の意味を確認しながら読む精読と,わからない英語を飛ばして読む多読との架け橋のような役割をしてくれるシリーズなのです。意味のわからない箇所があると先へ進めなくなるという読者,また,それがために洋書を手に取ることができない読者にとっては,日本語訳や注釈がルビで打たれていることで,洋書の敷居はうんと低くなります。

2 『そして誰もいなくなった』との出会い

私の場合,ルビ訳の助けを借りて,ずっと憧れていた推理小説の『そして誰もいなくなった』を読破することができました。その時に味わった感動と達成感とがあまりに衝撃的で,すっかり癖になりました。洋書を読めるという自信を与えられ,もっと読みたいという意欲をかき立てられました。忙しい日常の合間を縫って洋書に親しむことは,今では楽しみのひとつですが,その源をさかのぼって行くとこの経験にたどり着きます。また,現在はルビ訳のない本を,たくさんあるわからない英語を飛ばしながら読んでいます。そんな気楽な読み方へと移行することができたのも,この本との出会いによってでした。

3 最初の一冊をルビー・ブックスから

脳科学者の茂木健一郎は,その著書『モギケンの音楽を聴くように英語を楽しもう!』(朝日出版社)の中で,「最初の一冊を読み終えることができれば,二冊,三冊と積み上げていくことができます。」と述べています。最初の一冊をいかにして読み切るかは大きなポイントのようです。その意味でも,ルビ訳という心強い伴走者の助けをうまく借りて,最初のゴールに見事到達していただきたいものです。ただ,残念なことに,ルビ訳シリーズは再版されておらず,現在入手できるものは一部の作品に限られますので,その中からピンとくるものを探してください。あなたを変える運命の一冊との出会いを求めて。

樫葉みつ子先生によるTOEFLメールマガジン78号「「チャンツ」で、楽しく練習を! | 達セミに学ぶ 英語学習のヒント」の寄稿文についてはこちら

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