インタビュー
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昨年の「TOEFL®メールマガジン」10周年100号記念アンケートで、「英語を使う企業へのインタビュー」のご要望をいただき、企業における「グローバル人材育成のための英語への取組」や「英語力の重要性」、「英語の利用状況」についてのインタビューをお届けします。
今回は、ボストン コンサルティング グループ(BCG) パートナー&マネージング・ディレクターの服部奨さんにお話を伺いました。将来、グローバルな舞台で活躍したい方必見です。

ボストン コンサルティング グループ
パートナー&マネージング・ディレクター
服部 奨さん
貴社について及び業務内容についてお聞かせください。
- 服部さん:
- 弊社は経営コンサルティング業務を行っております。クライアントの大多数は、各業界をリードする大手企業です。BCGがサポートする経営トピックは多岐に渡り、「戦略」と名のつくもの全て、あるいは、「企業のあらゆる悩み」と言ってよいでしょう。具体的には、全社戦略や中期計画などの「会社全体」に関係するプロジェクトもあれば、営業改革、海外市場参入など、より具体的な経営トピックを扱うプロジェクトもあります。そうした様々な経営課題に対して、戦略策定・実行のサポートを提供しています。コンサルタントはプロジェクト単位で業務を遂行しており、その期間も様々です。短いもので2~3カ月、長いもので1年~1年半にわたるものもあります。
業務における英語の使用頻度はどの程度でしょうか。
- 服部さん:
- 英語の活用機会は多くあります。例えば、中国に既に進出しているが、マーケットシェアを伸ばしたいと考えている日本企業のプロジェクトの場合、BCGは中国オフィスのスタッフと日本オフィスのスタッフによる混成チームを組成します。具体的には、クライアントと接点を持つ日本オフィスのコンサルタントが1~2名、現地に中国オフィスのコンサルタントが3~4名という編成になります。コンサルタントは全世界に約5,600名在籍しており、複数のオフィスが連携して業務を行う際には英語が共通言語として使用されています。また、日本企業の国内プロジェクトであっても、海外での先進事例等の情報収集やリサーチに、英語を使う場面が多々あります。
キャリアパスにおける英語の重要性についてお聞かせください。
- 服部さん:
- BCGでは昇級や昇格の基準として、英語のレベル設定等は設けていないのが現状です。しかし、コンサルタントが採用から入社までの間に、また入社後も英語をブラッシュアップできるよう、継続的にサポートしています。
社員教育について、特に英語教育への取り組みをお聞かせください。(英語研修)
- 服部さん:
- 通信教育や語学学校で学ぶ際のサポートがあります。また、語学教師を会社に招いて、社内で英会話レッスンを受講することができます。
貴社の採用制度(特に新卒採用)についてお聞かせください。
- 服部さん:
- 新卒の場合は、大学・大学院在学中に「ジョブプログラム」にご応募いただき、その参加者から採用を決めるプロセスとなっています。
- 編集部:
- 入社後、どのようにキャリアを積んでいかれるのでしょうか。
- 服部さん:
- ビジネス経験が無い方はアソシエイトとして入社し、コンサルタント、プロジェクト・リーダー、プリンシパル、そして、パートナーの順にキャリアを積んでいきます。コンサルタントとして成長するためのキャリアパスは、グローバルで共通です。東京でも、ボストンでも、ロンドンであっても基本的に同じです。また、採用活動はそれぞれのオフィスで行っていますが、各ポジションで期待される役割も全世界共通です。
- サッカーで言うところの、レンタル移籍制度もあります。パフォーマンスの高いコンサルタントに対して、入社数年後に海外オフィスでの就業機会(約1年間)を提供し、スタッフのグローバルでの循環を促しています(アンバサダー制度、アソシエイト・アブロード制度)。また、海外オフィスで長期間働きたい場合は、現地オフィスにて活躍できるかどうかを見極めた上で、完全移籍(トランスファー)も可能です。その他、約3カ月間の派遣プログラム(ディプロマット・プログラム)もあり、海外オフィスと積極的に人材交流を行っています。
- 編集部:
- なるほど。そういったかたちで人の流れがあって、組織としても活性化してらっしゃいますね。
- 服部さん:
ええ。そういった意味では、ベースの仕事の進め方やキャリア制度が完全に世界共通なので、グローバルな人材交流を進めやすい環境なのだと思います。
貴社で働くことの魅力は何でしょうか。
- 服部さん:
- 1点目はグローバルな環境です。日本人学生の就職先の中で、BCGほどグローバルな環境で仕事ができる会社は少ないと思います。BCGには「本社」と「現地法人」のような関係性がありません。社名にあるように、BCGはボストンに最初にオフィスが設立されたのですが、「本社」がそこにあるのではなく、75カ所ある世界各地のオフィスが全て並列です。BCGは、「インターナショナル」ではなく「グローバル」な組織であり、国を跨ぐスタッフの移動も含めて、今後日本に求められるグローバル人材が育つプラットホームが整っています。
- 2点目は仕事の醍醐味です。BCGの仕事はいわば、企業のドクターです。例えば、内科医が患者の症状を聞き、「病名」を推察し、いくつかの質問や検査を経て「診断」や「治療」を行うように、我々も企業の課題を一緒に見つけ、解決していくことを仕事としています。クライアントの深い悩みを一緒に解決していくことは、非常に難しくチャレンジも大きいですが、その分大きなやりがいを感じています。難題に挑むことで世の中に価値を見つけたい、自分自身を成長させたいと思うスタッフが多いので、そういう方にとってはこれ以上面白い仕事(会社)はないと思います。
- 3点目として、BCGが人材に投資をする会社であることが挙げられます。もちろん「人」をベースにビジネスをされている会社は数多く存在しますが、我々の場合は「問題解決の手法があります」、「問題解決のエキスパートがいます」といった、いずれもかたちにならないものばかりで、人やチームが価値の大半を決めるため、コンサルタントの採用や人の育成に並々ならぬ時間とエネルギーを費やしています。実際、人事部門のスタッフだけでなく、コンサルタント全員が時間を費やして採用活動や育成に関わっています。私自身もMBA採用のリーダーとして、年間の施策検討から入社までのフォローに至る様々な活動に取り組んでいます。
- 編集部:
- 外資系企業は、人の育成や教育といったことは「自己投資」的なイメージがあります。貴社のお話を聞いて、イメージが一掃されました。
- 服部さん:
そうですね。欧米企業の中でも、弊社を含む経営コンサルティング業界は、人材への投資をより積極的に行っていると思います。それは、経営コンサルティングが「これを売る」というカチっと決まったものが無いビジネスであるが故に、「無形なもの」、「毎回かたちが違うもの」を、チーム一丸となってクライアントに提供していく、という業務の特性に起因しているのだと思います。
採用にあたり、学生に期待することは何でしょうか。
- 服部さん:
- 最も大切なのは、「志」だと思います。仕事を通じて達成したいことは何か、達成するために覚悟をもってやっていけるのか、が問われます。また、今後は、グローバルマインドも非常に重要だと考えています。英語力以上に、グローバルマインドを持っているか、グローバルな舞台で活躍したいとの強い想いがあるか、がより重要だと思います。それから、クライアントの喜ぶ顔が見たい、クライアントをサポートしたい、という考え方を持てるかどうか。逆に言えば、自分自身が表舞台に立ちたい方にはあまり向かないかもしれません。
現在の大学での英語教育について感じることがあればお聞かせください。
- 服部さん:
- あくまで私見ですが、英語力を高めるにはモチベーションを植え付けることが大事だと思います。効果的な英語教育を学生に提供することと、「なぜ英語を頑張った方がいいのか」、「英語を磨くと、どうプラスに広がるのか」を伝えることの2つが、英語教育の両輪ではないかと思います。そのことに社会に出る前に気付くことが出来れば、英語教育の効果が上がるのではないでしょうか。
秋入学を検討する大学がでてきましたが、そのことについてはどう思われますか。
- 服部さん:
- 秋入学によって、大学時代に海外での経験を積む機会を提供出来ますし、先ほどお話したモチベーションを植え付ける意味でもプラスになることではないかと思います。クオリティの高い外国人留学生との切磋琢磨から「気付き」を得ること、海外での経験を通じて、英語の必要性をより強く感じることにより、プラスになるのではないでしょうか。
最後にTOEFLメールマガジンの読者にメッセージをお願いします。
- 服部さん:
今、日本のプレゼンスが下がってきているように感じます。これをどう高めていくのかが、今後我々がチャレンジし続けていくべきテーマだと思っています。プレゼンスを高めるやり方は様々ありますが、日本人が海外でより一層活躍すること、海外で経験を積んだ日本人が国内を盛り上げること、の両方があると思います。今これだけグローバル化している世の中では、日本国内だけでやっていくことが難しくなってきています。よって、どちらのかたちでプレゼンスを示すにせよ、グローバルな視点や経験は「あるといい」ではなくて、「ないと無理」という状況になっています。それを理解された上で、英語や海外での経験にチャレンジすることは大変良いことだと思います。ハードルは人によってさまざまあるかと思いますが、そのハードルを乗り越えて、想いを達成していただきたいです。その先には明るく前向きな未来が開けています。そういったマインドセットの方は弊社にも非常に向いていると思いますので、卒業後のキャリアを考えたいという方は、ぜひBCGの門を叩いてください。
以上
インタビュー:2012年3月8日
国際教育交換協議会(CIEE)日本代表部
管理部 景山傑
企業プロフィール
ボストン コンサルティング グループ(BCG)
グローバルに活動している経営コンサルティングファーム。政府・民間企業・非営利団体など、さまざまな業種・マーケットにおいて、カスタムメードのアプローチ、企業・市場に対する深い洞察、クライアントとの緊密な協働により、クライアントが持続的競争優位を築き、組織能力を高め、継続的に優れた業績をあげられるよう支援を行っている。1963年米国ボストンに創設、1966年に世界第2の拠点として東京に、2003年には名古屋に中部・関西オフィスを設立。現在、世界42カ国に75拠点を展開している。

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