インタビュー
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昨年の「TOEFL®メールマガジン」10周年100号記念アンケートで、「英語を使う企業へのインタビュー」のご要望をいただき、企業における「グローバル人材育成のための英語への取組」や「英語力の重要性」、「英語の利用状況」についてのインタビューをお届けします。
今回は、パーク ハイアット 東京の人事部 松村さんにお話を伺いました。
将来、グローバルスタンダードな舞台で活躍したい方必見です。

パーク ハイアット 東京
人事部 トレーニングマネージャー
松村 晋祐さん
貴社について及び業務内容についてお聞かせください。
- 松村さん:
- 弊社はシカゴに本社を持つハイアットホテルズコーポレーション傘下のホテルです。現在ハイアットは約45カ国で488軒(2012年3月31日現在)のホテルを運営しており、日本国内では私ども「パーク ハイアット」の他、「グランド ハイアット」、「ハイアット リージェンシー」の3つのブランドを展開しています。ブランドごとにそれぞれ異なる特徴があり、例えばグランド ハイアットは、客室はもちろんレストランや宴会場も数多く備え、大きな会議やコンベンションを受け入れることができます。逆にパーク ハイアットは客室数をあえて少なくすることで一人一人のお客様によりパーソナルなサービスを提供しております。新宿パークタワーは52階建ての超高層ビルですが、ホテル部分は39階から52階までで、客室数は177室です。
業務における英語の使用頻度はどの程度でしょうか。
- 松村さん:
- ご想像のとおり、当ホテルのお客様の半数以上は海外の方で、特に欧米からのお客様が多いのが特徴です。英語の使用頻度は部署によって異なりますが、例えばお客様に接する宿泊やレストラン部門などのスタッフは英語を毎日使います。それに対して経理部や資材部、人事部などのバック部門は国内の企業の方とのやり取りが多いので日常的に英語を使用する機会は少ないかもしれません。ただ、シカゴの本社や香港にあるヘッドオフィスとのコミュニケーションや会議などは全て英語ですし、総支配人以下、ホテルのマネジメントスタッフの国籍も様々ですので全般的に英語の使用頻度は高いと言えます。
キャリアパスにおける英語の重要性についてお聞かせください。
- 松村さん:
- 採用の段階ではTOEFLテストやTOEICテストなどのスコア基準は設けておりませんので、英語だけが合否の判断材料になることはありません。ただし、入社してからは英語が必ず必要になります。職位が上がっていくほど、本社やヘッドオフィス、マネジメントスタッフとのコミュニケーションも密接になりますので、キャリアパスにおける英語の重要性は非常に高いと言えるでしょう。また、当社では社内のポジションに空きが出た場合は社内公募を行います。その際、英語の能力が不可欠な職種については、応募条件の中にTOEICテストなどのスコア基準を設けることがございます。
- 編集部:
- スタッフの方が東京から他のハイアットに移ることはあるのでしょうか。
- 松村さん:
- 海外のハイアットホテルにトランスファーするスタッフもおりますし、数日間~1週間程度の研修やワークショップに参加することもございます。また、新しく開業するホテルのサポートメンバーとして数ヶ月派遣されるスタッフもおります。期間もパターンも様々ですが、やはり海外に出る機会は多いですね。また、国内外のハイアットホテルからパーク ハイアット 東京に転職するスタッフも数多くおります。
- 編集部:
- なるほど、そういった意味では頻繁に人の交流が行われているんですね。そうなると、職種にもよると思いますが、英語がいつ何時必要になるかわかりませんね。
- 松村さん:
- はい、社内でのコミュニケーションという点でも英語は非常に重要です。
社員教育について、特に英語教育への取り組みをお聞かせください。
- 松村さん:
- 英語教育については専任の外国人講師が週5日常駐しております。彼と各部署の研修担当者が毎月ミーティングを行い、「どういった種類の英語のスキルが必要なのか」というニーズをこちらで吸い上げ、それに合わせてカリキュラムを組んでおります。部署によって必要とされる英語のニーズが違いますので、マンツーマンのプライベートレッスンからクラスルームスタイルの講義、グループレッスンまで様々なトレーニングを用意しています。その内容も日常会話、ミーティングで自分の意見を発言する時に必要な英語力、エッセイライティング、苦情処理など部署のニーズに合わせて毎日英語のトレーニングを実施しております。スタッフの日々の業務で必要なことですので吸収力が非常に高いです。
- 編集部:
- それは、任意参加ですか。それとも部署によっては参加必須なのでしょうか。
- 松村さん:
- 各部署の研修担当者やマネージャーから「是非、このスタッフを参加させて欲しい」という要望がある場合もありますし、本人が直接申し出るケースもあり様々です。また、オンラインの研修システムも導入しており、個々のペースに合わせて必要なトレーニングを英語で受けられる仕組みも整っております。入社時点で基準を設けていない分、入社後のフォローを万全にして、職位や勤続年数に関係なくずっとスキルアップできる環境を作っています。

貴社の採用制度(特に新卒採用)についてお聞かせください。
- 松村さん:
- 新卒採用は専門学校と大学に分けて行っております。専門学校は学校を通じて、大学は求人サイトを通して応募を受付けております。中途採用に関してはポジションの空き状況によって通年で募集しております。基本的に中途採用はハイアット全体のキャリアサイトを通じて行っており、職種やホテル名で検索していただくと、今世界中のハイアットホテルで募集している職種の一覧を確認できます。このサイトを通じて世界各地から毎日のように履歴書が届きます。
- 応募される方にはまず「情熱」を求めます。ハイアットのグローバルミッションに“We Provide Authentic Hospitality” (真のホスピタリティを提供する)というものがありますが、真のホスピタリティを提供するには情熱が欠かせません。知識やスキル、技術だけでは到底成し得ないことなのです。「誰かを喜ばせたい」という情熱があるのかということが私どもにとってまず、第一の条件です。
- 2つ目は「柔軟性」です。ホテルには世界各国からお客様がいらっしゃいます。今日のお客様にとってベストなことが、必ずしも明日のお客様にはベストであるとは限りません。同じお客様でも時と場合によって対応が異なりますので、スタンダードやマニュアルだけでは対応が難しくなります。ですから、状況にあわせていかに柔軟に対応できるかということがポイントになります。
- 3つ目は「チームワーク」です。ホテルでは1人でできる仕事はひとつもありません。能力の高いスタッフがいてもチームワークがなければお客様を満足させられません。例えばラウンジで提供している1杯のコーヒー。オーダーを取るスタッフやコーヒーをお客様にサービスするスタッフがいるのは当たり前ですが、その裏にはコーヒーを淹れるスタッフがおり、カップを洗浄するスタッフやコーヒーマシンをメンテナンスする者もおります。さらに、コーヒー豆を仕入れる部門のスタッフもいるわけです。たった1杯のコーヒーを提供するだけでも多くのスタッフが関わっていて、全員がチームワークを発揮してはじめてお客様に美味しいコーヒーを飲んでいただけるんです。こんなエピソードもあります。私どもには会員制のフィットネスクラブがあるのですが、あるメンバーの方がお誕生日に来館されたとき、フィットネスクラブだけではなく、ベルのスタッフやレストランのレセプショニストからも「お誕生日おめでとうございます」と言われ、大変驚かれたということがありました。これも特に秘密があるわけではなく、「お客様を喜ばせたい」という気持ちで連係プレーをしたことで、結果としてお客様に喜んでいただけたのだと思います。チームワークがなければできないことだと思います。この仕事ではチームワークはとても重要ですね。
- 編集部:
- やはりお客様の対応ということになりますと、半数以上が外国人ということで、お客様それぞれのバックグラウンドや文化など多種多様に異なる方を相手にするということに対しての難しさもあるのではないでしょうか。
- 松村さん:
- そうですね、非常に難しいです。お客様のバックグランドや文化によって求められるサービスが異なりますし、同じお客様でもその日の体調やご気分によって対応が変わります。お客様をよく観察して、いかに柔軟に対応できるかということが非常に重要だと思います。
最近の学生をみて感じることはございますか。
- 松村さん:
- インターネットなどで様々な情報に接する機会も多いためか、情報を収集することに長けており、ホテルに関しても知識が豊富だと感じます。ただ、その知識をもとに自分で考えることには慣れていないように見えます。また、面接では、「ワインの開け方が上手です」、「笑顔で対応できます」とおっしゃる方もいらっしゃいますが、専門的な技術や知識以上に教養をしっかり身に付けていただきたいですね。一見するとホテルでの仕事には関係ないように思えますが、教養をしっかり身に付けている方とそうでない方ではお客様への対応の幅が変わってきます。

現在の大学での英語教育について感じることがあればお聞かせください。
- 松村さん:
- 大学の存在意義というのは、将来日本を背負ってグローバルに活躍していく人材を育てるために有効な教育機関であることだと思います。それを成し得るためには、やはり専門分野だけではなく、同時に教養力も養うべきではないかと思っています。例えば、原子力は平和にも利用できるし、兵器にもなりますよね。原子工学の知識はあっても、それをどう利用するかという判断力を身に付けていくことが重要だと思います。英語教育に関しても、英語そのものを勉強することはとても大切ですが、英語でディスカッションやディベートをしながら、問題を発見したり、解決したりすることにもっと力を入れると面白いのではないかと思います。語学はあくまでコミュニケーションツールの一つですから、英語を勉強することが目的ではなく、英語を使って何をするかということを掘り下げていただくことが大学の英語教育ではないかと思います。
- 編集部:
- 私も海外に行く機会があったのですが、日本で英語を勉強するよりも、実際海外に飛び込んで行ってコミュニケーションをとりながら、文化の違いや歴史を体得していくのはとても価値のあることで大事なことだと思いました。
- 松村さん:
- そうですね。語学だけを学ぶというよりは価値観の違いやその違いをどうやって受け入れていくのか、そういったことが勉強になりますよね。海外で行われる研修やワークショップでは、中国や韓国、インドなど英語が母国語ではない方も多く出席していますが、彼らは文法や発音が少しおかしかったりしても、とにかく自分の意見をはっきり言います。日本人はそういう場所だと、ついつい文法は合っているかな?発音は正しいかな?と気になり、議論に入っていけないことがあります。でも、黙っていたら参加していないことと同じになるので、そこはとても勉強になりますね。ひょっとしたら彼らより我々の方が、英語を長く勉強しているかもしれないのに、使わないから身に付かないんですよね。私もカナダに語学留学していた時、先生から”Use it or you lose it”とずっと言われていました。使うことはとても大事なことだと思います。
秋入学を検討する大学がでてきましたが、そのことについてはどう思われますか。
- 松村さん:
- あくまで個人的な意見ですが、大学がイニシアティブをとって、政府や企業を巻き込んで一つの大きな議論になっていくということは大いに賛成です。欧米の大学と入学時期を合わせることで、交換留学がしやすくなり、国際交流が盛んになることは良いことですが、単に入学時期をずらすだけでは意味がないと思います。これを機会に日本の大学教育そのものを見直すきっかけになるといいですね。入社時期とのずれを指摘する声もありますが、弊社の場合は海外の大学を卒業したスタッフも多く、そのような方に関しては入社時期を分けるなどすでに個別に対応させていただいております。
最後にTOEFLメールマガジンの読者にメッセージをお願いします。
- 松村さん:
- 10年前と比べて日本の状況がだいぶ変わり、今後は少子高齢化が進んで労働人口がどんどん減少し、国内市場は縮小していきます。実際にアジアに行くとものすごいエネルギーを感じますし、労働力という点においては、日本はアジアと勝負できないかと思います。このような状況下で日本人はどうするのかというと、海外に出るしか選択肢がないんですよね。そうすることが良いとか悪いとかではなく、そうせざるを得ない状況になってきています。今後、社会に出て活躍するということは、世界に出ていくということです。それが今、企業がグローバルな人材を求める要因なのだと思います。グローバルな環境で活躍するということは、当然異なる価値観や文化を背景に持つ人たちと働くということです。時には衝突したり、説得したりすることもあるかと思いますが、そこで必要なことはコミュニケーション力です。英語は、今ビジネスの現場で使われているコミュニケーションツールですから、TOEFLテストの勉強をされている方には是非、英語力を磨いてコミュニケーション力を培い、グローバルな環境で活躍していただきたいと思います。

以上
インタビュー:2012年4月24日
国際教育交換協議会(CIEE)日本代表部
管理部 景山傑
企業プロフィール
パーク ハイアット 東京
パーク ハイアット 東京は、1994年7月に開業したハイアット ホテルズ コーポレーション直営のホテルです。
ハイアット ホテルズ傘下の7つのブランドの中で「パーク ハイアット」ブランドは、パーソナルできめ細やかなサービスを提供する上質なホテルとされ、現在、世界各国に29軒(2012年5月31日現在)を展開しています。
パーク ハイアット 東京は、東京都庁に並ぶ高層ビル「新宿パークタワー」の39階から最上階の52階までを占め、177の客室を有しています。スタンダードルームでも55㎡の広さを誇る客室や個性豊かな館内のレストラン&バーからは、眼下に広がる東京の素晴らしい眺望を堪能いただけます。都会的でありながらやさしさの漂うインテリアとアートに満ちたラグジュアリー空間で、安らぎと静けさに包まれたプライベートな滞在をお楽しみください。

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