達セミに学ぶ 英語学習のヒント
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英語教師による英語教師のための情報シェアの場「達人セミナー」通称「達セミ」をご存知ですか。毎週のように自発的かつボランティアで全国各地にて開催され、それぞれの授業方法を公開しシェアしています。基本的には中学・高校の教師の方々が中心ですが、その授業には英語を楽しく学ぶヒントがたくさん隠されています。その中から毎号1名の先生にレポートしていただきます。
今回のヒントはこれ:
- 通訳学習法で英語力アップ:
「通訳技法」は優れた「英語学習教材」だ!!」

名桜大学
与那覇 恵子先生
若かりし大学時代にアメリカに1年近く留学したが、東京からの学生と日本語でのおしゃべりを楽しんでばかりで英語力向上には今一つの成果であった。そんな私が「何年留学したのですか?」との嬉しい質問をいただくようになったのは、趣味で勉強を始めた通訳の学習法に寄るところが大きい。日頃から学生には「英語力、日本語力両方の向上に通訳学習法が一番」とアピールしている。現在担当している「通訳」のクラスでは、通訳技法を導入しながらの逐次、同時の通訳練習を通して英語力、日本語力の向上を目指しており、外国人留学生10名、日本人学生10名がお互い助け合いながら楽しく学んでいる。
![[通訳技法]授業の様子](img/learning-info-01/002.jpg)
通訳技法による練習そのものが英語力向上に繋がるという意味では、通訳技法そのものが優れた英語学習教材と言える。その目的、効果を説明する。
- ①
- クイック・リスポンス・・聞いた単語や語句をすぐに訳出。即時訳出と語彙力増強が目的。数字や英単語の即時変換をゲーム感覚で学生は楽しんでいる。
- ②
- シャドーイング・・スピーチを影(シャドウ)のように追いかけて再現する。目的はプロソディの向上や英語の自然な発声速度の獲得などで、リスニング力とスピーキング力の両方の向上に有効。
- ③
- リプロダクション・・フレーズや文が終了してから再現する。短期記憶力の向上と共に、構文理解を促進するというメリットがある。シャドーイングに比べ、再現する時間的ラグがあるため記憶力が衰える年長者ほど難しい練習であり、又、構文理解を伴うため英語力が低い学生ほど難しい。
- ④
- サイト・トランスレーション・・意味の塊ごと前倒しで訳す。トップダウン処理のため読みの速度や理解が向上。理論上、経験上からも、訳していく意味の塊の間隔が広いほどその人の英語力は高いと言える。
- ⑤
- 区切り聞き・・音声が意味の塊でポーズをつけられており、ポーズ内で目標言語に訳す。長文でないため、英語力の低い学生やリテンション(記憶保持能力)の衰えがちな年配者に有効。
- ⑥
- メモ取り・・ポイントを抜き出す点で、要約力の向上をまず挙げたい。記録したメモをもとに文章を再構築しなければならず、表現力の向上も考えられる。練習はそのままリスニングの練習でもある。
- ⑦
- サマライゼーション・・時間制限などで要約通訳が必要な時に力を発揮する。「要約力」はあらゆる場面で大切だ。
バラエティに富む通訳技法、その紹介のための教材もバラエティに富み、授業では各技法ごとに教材を変えて使っている。以下に私の愛用する教材を紹介したい。
- ①
- はじめてのウィスパリング同時通訳(南雲堂)
・・クイック・リスポンス(単語や数字)、区切り聞き
- ②
- 実践ゼミ ウィスパリング同時通訳(南雲堂)
・・クイック・リスポンス(単語や数字)、区切り聞き
- ③
- グローバル時代の通訳(三友社)
・・ラギング、メモ取り
- ④
- 英語リスニングの基礎トレ(講談社インターナショナル)
・・シャドーイング、サマライゼーション
- ⑤
- 通訳の技術(研究社)
・・メモ取り、サマライゼーション
- ⑥
- 英語リプロダクション・トレーニング(DHC)
・・リプロダクション
- ⑦
- CNN English Express(朝日出版)
・・サイト・トランスレーション
- ⑧
- 中学英語で通訳ができる(ジャパン・タイムズ)
・・逐次通訳、同時通訳
上記のお勧め教材で通訳技法を利用した英語学習法がいかに英語力向上に繋がるかをぜひ実体験して確かめていただきたい。
与那覇先生によるTOEFLメールマガジン83号「学習力」は「教授力」、優れた「学習教材」は優れた「教材」だ!!」のご寄稿文についてはこちら

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