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e-Language in Action 〜次世代メディアとプロジェクト発信型英語教育〜
第7回:
マンチェスター大学と慶應義塾大学SFC、千葉商科大学政策情報学部を繋いだLanguage Exchange -その(1)
慶應義塾大学環境情報学部教授 兼 慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科委員 鈴木佑治先生

鈴木 佑治
慶應義塾大学環境情報学部教授 兼 慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科委員

 
報告
山中 司氏
山中 司(やまなか・つかさ)
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科修士課程2年
 
山中 司君についてはTOEFLメールマガジン5月号で紹介しましたのでここでは省略します。5月号で山中君は、岐阜県岐阜市立梅林中学校と英国Little Lever Schoolの交流について、現在岐阜県羽島市立竹鼻中学校で教鞭をとる教諭上手留美子先生(元梅林中学校教諭)と報告しました。山中君はその活動に関してケンブリッジ大学の日本語教師会で実践報告をしました。今回紹介するマンチェスター大学日本語科のYukiko Shaw先生とはそこで会いました。帰国した山中君は、千葉商科大学政策情報学部で私が担当する1年生および2年生の英語プロジェクトのクラスと、マンチェスター大学のShaw先生の日本語クラスとを結びLanguage & Culture Exchangeをしたいと申し出てまいりました。最初はマンチェスター大学にビデオ・カンファランスをする機器が整っておらずSFCのポリコムを貸与しました。一方、千葉商科大学にも機器が揃っておらず、千葉商科大学の学生さんは遠路はるばる2時間かけてSFCまで来て、夜の8時から10時まで月何回かのペースで行いました。千葉商科大学からは、私が担当する英語プロジェクトから2名の学生が参加し、プロジェクト成果を発表しました。1年生の時の2人の英語力はあまりたいしたことはありませんでしたが、2年生になってビデオ・カンファランスをするようになると、モチベーションが高まりそれに連動して急速に伸びました。今回は山中君に慶應義塾大学SFC側から報告してもらい、次回はShaw先生にマンチェスター大学側から報告していただきます。

山中 司 君の報告

 私達は2002年度合計して4回にわたって、英国マンチェスター大学と慶應義塾大学SFC、千葉商科大学政策情報学部とのジョイント授業を、テレビ会議システムを介して実施しました。第1回目は2002年10月11日、第2回目はその約1ヶ月後の2002年11月25日に実施され、その後のテレビ会議も日本側は夜の8時から、英国側は朝の11時から約1時間にわたって行いました(時差が英国冬時間で9時間あることを考慮し、最も双方にとって都合が合わせられる時間帯ということで上記のような時間設定となりました)。マンチェスター大学からは、Anna BowenさんとRebecca Chickさん、千葉商科大学からは鈴木佑治先生の英語プロジェクトを履修していた佐藤友理さんと菅野愛さんが参加し、プロジェクト成果をベースにトピックとしてスポーツについて発表しました。それに対してマンチェスター大学のAnnaさんとRebeccaさんは日本についての地理・歴史的観点から考察し発表しました。
 第1回目に行われたテレビ会議では、お互いに簡単な自己紹介をし、前半30分を日本語、後半30分を英語で進めました。予めお互いに交換しておいたスピーチ概要を基に、Annaさんが北海道について日本語でプレゼンテーションを行いました。彼女が発表を終えると、佐藤さんと菅野さんが、日本語でコメントを述べ質問をしました。「また日本に遊びに行きたいですか?」、「マンチェスターと北海道とどちらが好きですか?」等の質問をすると、Annaさんは少し考えながら笑顔で楽しそうに答えていました。Annaさんが日本に留学していた時の話をすると、留学経験のない佐藤さんと菅野さんは興味深々聞き入っていました。Annaさんは日本で長期滞在した経験があり、ふつうに日本語で応答するので、英語でコミュニケーションすることに慣れていない佐藤さんや菅野さんにとってよい刺激となったようです。Annaさんに続きRebeccaさんが北海道について発表しました。Rebeccaさんは、Annaさん程日本語が得意ではないものの、最後までしっかりとした口調で臆することなく堂々と発表しました。少々時間がかかりながらもプレゼンテーションを終え、佐藤さんと菅野さんはゆっくりと分かり易い日本語で質問をしました。「北海道に行ったことがありますか?」「北海道で好きな食べ物は何ですか?」等の質問に、Rebeccaさんは、時折Annaさんに助けて貰いながら、諦めることなく一生懸命たどたどしい日本語で答えていました。

ジョイント授業の様子

【写真:マンチェスター大学と慶應SFC、千葉商科間Language Exchange Projectの当時の交流用Webサイト】

 後半30分になると、言語が日本語から英語に切り替わりました。佐藤さんは雑誌の切り抜き等、視覚的な資料を見せながら分かりやすくサッカーのワールドカップについて発表しました。日本でのベッカム・フィーバーに触れると、Annaさん達も笑顔で頷きながら聞いていました。発表を終えると、佐藤さんは、AnnaさんとRebeccaさんから"Japan did very well in the World Cup. Were you surprised at this?" "Do you like David Beckham?"等のコメントや質問を受けました。佐藤さんは、コーディネーターの私から英語のヒントを貰いながら、懸命に英語で答えようとしていました。菅野さんは、バスケットボールについて、同じくビジュアル資料を駆使して発表しました。Rebeccaさんから、"Would you like to go to America to watch basketball?"や"How long is one basketball game?"等と、バスケットボールの選手として活躍したことのある菅野さんの経験に結びつけながら、ゆっくりと分かりやすく話し掛けていました。特にRebeccaさんは、回答に苦労している菅野さんの気持ちを十分察することができたからでしょう。時には質問を言い換えて分かりやすくしてくれたり、話し方もいろいろ工夫してくれました。事前に申し合わせたことではないのにAnnaさんとRebeccaさんがこのような細かい配慮をしてくれたことに驚くとともに感心しました。お互いの言語がお互いにとっていかに難しいかが理解できたからでしょう。

ジョイント授業の様子

【写真:マンチェスター大学と慶應SFC、千葉商科間Language Exchange の実際の様子
マンチェスター大学の学生と先生方 〔上〕
マンチェスター大学のAnnaさんとRebeccaさんと千葉商科大学政策情報学部の佐藤さんと菅野さん〔下〕】

 実際のコミュニケーション空間で母語話者を相手に話してみるという生きた体験は、海外経験のない佐藤さんと菅野さんにとって大変有意義であったようです。AnnaさんとRebeccaさんに比べて、明らかに母語話者と会話する場数を踏んでいない佐藤さんと菅野さんは、自分の意図を伝えることは言うに及ばず、相手が言っていることを理解することにも困難を感じている時もあったようです。AnnaさんとRebeccaさんと自分たちとの差を目の当たりにして、相当落胆するのではないかと思っていた私たちの心配をよそに、以下のようなコメントが2人から私たちに寄せられました。このような形で佐藤さんと菅野さんが母語話者を相手にリアルな「場」でコミュニケーションしたいという気持ちに目覚めたことは、私達にとっても大変な励みとなりました。

第1回テレビ会議終了後の佐藤さん、菅野さんの感想

 余白の関係でこの企画に協力してくれた多くの方々の紹介を割愛しましたが、特に慶應義塾大学大学院政策メディア研究科博士課程の谷内 正裕君が、テクノロジーサポートをしてくれたことを付記します。次回はYukiko Show先生にマンチェスター側から報告していただきます。
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