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e-Language in Action〜次世代メディアとプロジェクト発信型英語教育〜
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第8回
マンチェスター大学と慶應義塾大学SFC、千葉商科大学政策情報学部を繋いだLanguage Exchange-その(2)

立命館大学教授/慶應義塾大学名誉教授 鈴木佑治先生
鈴木佑治(すずき・ゆうじ)
慶應義塾大学環境情報学部教授
兼 同大学大学院 政策・メディア研究科委員
マンチェスター大学 日本語課主任講師 Yukiko Shaw
Yukiko Shaw
マンチェスター大学 日本語課主任講師

 Yukiko Shaw先生はマンチェスター大学にて日本語を教えています。前回述べたとおり、私の研究室の山中君がケンブリッジ大学のヨーロッパ日本語学会で発表した折、英国Little Lever Schoolと岐阜市立梅林中学校との交流活動に関心を持たれ、山中君が帰国するや山中君と共同で、マンチェスター大学の日本語の授業と千葉商科大学政策情報学部の英語の授業を結びました。前回は山中君が日本側から報告しましたが、今回はShaw先生に英国側から報告していただきます。
 英語のe-learningというと高い機器を購入し、次にソフトウエアを手に入れても、結局遠隔地から作文添削をしたり発音の矯正みたいなことをしているのでは意味がありません。それでは普通の作文教室や発音の授業の延長で人を雇って教えてもらうほうが安くあがりかつ人間的です。遠隔地を結び今まではそれぞれの教室に閉ざされてきた活動を広げ、意見を交換する「場」の創生は楽ではありません。高い機器を買って埃を被ったままという光景はよく目にします。まずそれぞれの場で知的生産が行われ、それがオンラインで結ばれ広がっていくのでなければ意味がありません。機器があればそれを使うのもよし、なければ今までどおりの方法で交流するのもよしです。どちらにしても必要なのは創意工夫と熱意です。Shaw 先生とマンチェスター大学の学生達にそうしたものを感じました。Shaw先生の報告にもあるように、ジョナサン・バント先生をはじめ多くの方々が支援してくださるのもそうした熱意に動かされたからでしょう。

Yukiko Shaw氏の報告
 マンチェスター大学の日本語学習者はいまなお年々増加しています。第二言語を学習する際にその学ぶ言語の国に学習者が滞在していない場合、動機の種類はいろいろですが、動機を強く持続するのはなかなかむずかしい課題のひとつです。目標言語習得への動機を維持し、また高めるために、日本人の学生といっしょに話し、意見交換をすることを常に促進してきました。マンチェスターの日本人学生と話す機会を与えたり、インターネットを利用してバーチャル留学、3D-VLEプログラム等を促進してきたりしました。
 山中さんとは、ケンブリッジ大学で行われたヨーロッパ日本語教師会での彼の発表を通して知り合いました。日本への帰国後に、マンチェスター大学の学生と山中さんの在籍されている慶應義塾大学とテレビ会議で交流できないかと考えました。幸いにして、山中さんの先生でいらっしゃる鈴木先生にも快諾していただき、また、私のヘッドであるジョナサン・バントのサポートも得て、テレビ会議を始めることになりました。インターネットのリアルタイムを使用して英国マンチェスター大学の学生と日本の千葉商科大学・慶應義塾大学の学生間で2002年9月から2003年6月にテレビ会議を実施しました。
 日英の学習者がコンピュータのモニターに映った双方の画像を見ながら、距離的時間的制約を超えて同時に決められたトピックについて発表、質疑応答、意見交換を体験します。双方の語学力のみならず真のコミュニケーション能力をも養成できるすばらしいチャンスだと思いました。
 私の学生は、生物学4年生の2名の学生です。彼女らは、2年間英国にて日本語の基礎を学び(約300時間)、3年目に日本の大学に留学し、生物学の研究とともに日本語を習得し、4年目に英国にて日本語を続けている学生です。それに対し日本サイドの学生は、6年から8年の英語既習者で短期の留学経験者を含んでいました。
 セッションは2002年11月と12月に英国冬時間 午前10時から11時までの1時間を日本の学生と4回すると設定しました。4回ともリアルタイム1時間を日本語で30分、英語で30分と設定しました。あらかじめテーマを決め、リサーチを行い、エッセイを書いて、適確な語彙の使用と共にトピックについての理解を深め自分の意見をまとめておくように学習者に指示しました。初期段階では、無駄な時間を避ける為に相手サイドとあらかじめエッセイ交換をしておきました。初期話し合いにおいて双方同じテーマで発表しようとしましたが、各大学のコース目的が違うためテーマ決めに時間がかかりました。
 実際のセッションでは、英国サイドでは1回目と2回目までのVCはカメラ付き各コンピュータに学生1人ずつがヘッドホーンを使用して参加しました。テスト段階で、映像について1台のモニターに画像が映らないなど小さい問題がありましたが、すぐに解決しました。音質についてはボリュームをあわせる程度で特に問題がありませんでした。鈴木先生の親切なご厚意により、マイク内蔵ポリカムカメラを4回目のVCから貸していただきました。1台のコンピュータモニターの画像を見ながら、モニターの上に設置された1台のマイク内蔵ポリカムカメラより1、2メートル離れて参加者全員が自由にすわり、話しながらVCを実施できるようになりました。映像、音質も画期的な向上を示し、状況が変わり、コンピュータ所持台数に関係なくセッションに何人でも参加可能となりました。個人用マイクを使用しないため、自然な通話が可能になりました。また、お互いに不可解な語彙を含んだ質問をされたとき、学生間で助け合うのが、容易になりました。全体的にリラックスした状況のもとに通話が行われました。双方の学生はするべきことが設定されているので、教師としてテクニカルな問題点や会話中のとぎれ、いきづまりを援助し、時間的な点に気を配る程度におさめ、コミュニケーションのながれは学生同士に任せました。

 VC終了後の調査アンケートで、学習者は次のように述べています。

【学生の意見】
緊張していたが発表は大丈夫だった。
日本サイドの質問は簡単だった。
VCは、非常に楽しい。
会話と発音練習にとてもよい。
質問の意味はよくわかるが、答えるのが難しい時があった。
はじめ、とてもはずかしかった。
満足できる返答ができなかった。
日本サイドは、質問がわからなくて返答にとても困っていた。
1回目のVCで、映像があまりよくなかった。
2回目なので、自信がでてきた。もっと長くしたかったが、終了時間がすぐに来た。
コミュニケーションにとてもいいと思った。
もっと続けたいと思った。
最後のVCはヘッドホーンも使わないで自由にリラックスして話した。
私達のほうが多分よく返答できたように思った。

このビデオコンファレンスを通して、日英大学の学期の違い、時間的な制約、コースの違い等、いろいろな難解な面をもちましたが、学習者は思っていたより自分たちがよく答えられたので、自信がもて発話能力、コミュニケーション能力を促進できたと思います。また、もっと続けたいと希望しているので、チャットやテレビ会議等、いろいろな形式のコミュニケーションを考え、工夫して続けていきたいと思います。


英国と日本で同時会議をしようとするとどうしても時間が合いません。現在、オックスフォードの大学院とも交流を始めていますが、リアルタイムで行うのは大変です。オンデマンドで意見を交換し中間発表と最終発表をビデオカンファランスで行うことを考えています。要は、遠隔地の人たちと共同でプロジェクトをすることが大切です。その為のテクノロジーであり、基本的には人と人が会い一緒に何かをすることが大切です。慶應義塾大学はケンブリッジに慶應ハウスがあるので、いつかこの連載で紹介する人々がそこで一堂に会して意見を交換したいとの夢があります。本連載につきましてのご意見、ご感想はこちらまでお寄せ下さい。
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