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〜次世代メディアとプロジェクト発信型英語教育〜

第9回
カタカナ英語を使える英語に変えて英語の語彙表現をする幼児教材「Switch On」
(テキスト2004年、オンライン教材2005年、                   
           鈴木佑治、長谷部葉子、山中司著、鈴木佑治研究室発行)

立命館大学教授/慶應義塾大学名誉教授 鈴木佑治先生
鈴木佑治(すずき・ゆうじ)
慶應義塾大学環境情報学部教授
兼 同大学大学院 政策・メディア研究科委員
長谷部葉子(はせべ・ようこ)
慶應義塾大学環境情報学部 訪問講師、鈴木研究室

 鈴木研究室では、生涯を通じて行う発信型の英語学習環境を考えています。それには当然幼児・小学生も入ります。現在、小学校の英語教育の導入について賛否両論の議論が展開されています。学校教育に導入するかどうかはさておき、現在10歳以下の子供たちが一生のうちで英語を使う機会もなく生涯を閉じることは考えられません。英語が世界を席巻するであろうことにも賛否があるでしょうが、現実はそちらの方向に進んでいます。その一つの表れとしてカタカナ英語のような現象は日本に限らず世界中に広まっており、例えば、スペイン語にも日本語のカタカナ英語に呼応する語彙が英語から借入れされその数は毎年増えていると聞きます。鈴木研究室では、5,6歳までの幼児用の本などからカタカナ英語を拾い、集まった約300から400の英語の語彙を英語圏の5,6歳の子供たちが覚えるとされている基本語彙と比べたところ、ほぼ全部が重なっていることが分かりました。ということは、それらのカタカナ英語を英語の発音に戻してあげればそのまま使えることを発見したのです。そこでSwitch-Onという学習ソフトウエアを開発し、子供たちが遊びながら簡単に学べるように工夫しました。これらの基本語彙を学び運動したり劇や歌を作ったりできれば面白いプロジェクトが出来上がります。今回は幼児・小学生の英語学習にも携わってきた長谷部さんがこのソフトウエアの開発について報告します。

長谷部さんの報告

長谷部さん 鈴木佑治研究室では、2004年度、2005年度の2年にわたって、研究会で取り組んできたカタカナ英語の教材開発をより具体的な電子メディアに実現しました。今回はこのカタカナ英語の教材について簡単にご紹介します。この教材では、2004年にカタカナ英語教材、生まれてから6歳くらいまでに聞き覚えているカタカナ英語300語をカード形式でテキストにまとめました。これには、副教材としてカルタ遊びができるカードが別にあります。これが第一段階の教材です。そして2005年度には、それをそっくりそのまま、キャラクターと楽しく学ぶオンラインでの音声と画像教材『Switch On』と、副教材としてのゲーム『MOJIWA』も完成しました。

英語の音声と画像教材『Switch On』 英語の副教材としてのゲーム『MOJIWA』

 次の段階として、今取り組み始めているのが、これらのオンライン教材を実際に配信し、さらにコミュニケーションの場を提供する「オンラインコミュニティ」の構築と実装です。教室内の紙メディアでの教材(テキスト、カード)+オンライン教材・ゲーム(音声・画像)+オンラインコミュニティ(遠隔と対面の両方で構成)、この大きな3要素がそろえば、自然に英語に親しんでいく環境が生まれてくるのではないでしょうか。実はこの先小学校低学年、高学年、中学校、高校、大学と対象年齢別のカタカナ英語のリストがもう既に次に控えています。
【上の画像:(左)『Switch On』、(右)『MOJIWA』】

 なぜ、カタカナ英語なのか。そこには色々な捕らえ方があるとおもいますが、ここでは、こんな考え方をしてはいかがでしょう。成長期の子供をみているとその年齢毎の共通の興味・遊びに深く根ざした語彙があります。同じ言葉を知っていると分かっただけで、まるで「開けごま」のように仲間としての遊びの扉が開かれます。カタカナはそのような役割を持った存在ではないでしょうか。カタカナは、英語との接点を持ちながら日本語であり、英語側からみれば、何となく日本語との接点を持っている英語である、というとても不思議な共通領域におかれた存在です。そこで、その共通領域の共通の部分で「わからない」という心理的距離をなくして、でも「少しちがう」ところを相手の立場になって覚えているうちに、お友達をつくる魔法の言葉になっているかもしれない。そんな「頭で考える以前」の経験を通して、英語、日本語を覚えてしまおう、そして言葉をお友達から教えてもらおう、交換しよう、「ね、ほらできた!分かってくれたよ!」それが言語を習得する大きな喜びで、これこそが言語習得の醍醐味ではないでしょうか。そしてこの教材を通して、普段日本語で知り合っている先生やお友達と、または、ご家族と自然に英語でも遊ぶようになれば、英語でのコミュニケーション環境がその場に一番あった無理のない形で構築されていくのではないでしょうか。

 今海外の小学校・中学校では、日本語教育が盛んになってきています。そこで、この教材を元に、日本の子供たちは、カタカナ語から英語を、海外の子供たちは、英語からカタカナ語を双方向から覚えて、それが子供同士のお友達をつくるための交流授業(発信型プロジェクト)に発展していくことをめざしています。ですから、今回のこの教材は対象が6歳までに知っているカタカナ英語ですが、初めて英語、日本語をはじめる皆さんが、年齢に関係なく、学校の同級生と、お友達、兄弟姉妹、ご家族と一緒に英語環境を生活の一部に取り入れて、リラックスして一緒に楽しんで覚えてしまうことを前提にしています。つまり、この教材とお友達になる相手がいれば、英語の先生はつきそっていなくても大丈夫です。Switchを切り替えて単語を絵や色やカルタとしてゲーム感覚で覚えてしまう教材です。こどもは英語担当のタヌキや日本語担当のキツネのキャラクターと一緒に、絵と音を、そして次に音と絵を、最後に絵と文字と音、そしてカルタ遊び、という段階的な構成の中でカタカナ英語(またはカタカナ日本語)を覚えていきます。英語の教材キャラクターにタヌキとキツネが出てくるのは、タヌキは英語を勉強し、キツネは日本語を勉強し、最後にはお互いに、キツネとタヌキが混ざった動物になっている、つまりここで言語交流によるお互いの影響をあらわしています。そんなことは何もしらずに、子供たちは、タヌキにほめられたり、挨拶をされたり、適度なリズムの音楽に乗って、1度に15個のことばを、繰り返し覚えていきます。単語を一緒に覚えていくタヌキや、キツネが途中で少しずつ変装し、レベルが進むごとにタヌキとキツネがお互いに似てくるという不思議な現象等、教材のあちこちに隠されている色々なメッセージを拾いながら、英語でのコミュニケーションが出来るようになります。この効果は、幼稚園の子供たち、小学校の低学年の子供たちに遊んでもらって実証済みです。実は、今知っているカタカナだけで、同年代の他の言葉を話すお友達と、遊べるようになる、仲良くなれる、そこから、「英語でたくさんあそんじゃおう!」(Switch On 前書きより)で、発信型英語プロジェクトのはじまり、はじまり。そして特にこの教材をプロジェクターで壁に大画面で映し出すと環境ごとすっぽりと英語にはまり込んだようになり、さらに言語習得には効果的でした。では、どのように英語の先生がその場にいない状態で、教室内とオンライン環境とで連携をとり、効果的な英語教育を行うのか、そしてその具体的なカリキュラムとは、に関してはまた回を改めて、実際に英語教育を始めてカリキュラムに導入する幼稚園の実践報告を現場の声をふんだんに取り入れてさせていただきます。


この教材は現在、広島城北学園幼稚園(二見文子園長)にて導入実験をさせていただいております。この2月に長谷部さんが同幼稚園を訪れて最初の模擬授業をしたところ、園児がとても喜んで反応していたようです。予想ですが、来年1年園児たちは楽しくゲームをしながら300語を覚え、それからは覚えた英語を使って劇をしたり歌を作ったりスポーツをしたりするでしょう。それぞれは立派なプロジェクトでありメッセージの発信に繋がります。その様子は次号にて報告できるとおもいます。本連載につきましてのご意見、ご感想はこちらまでお寄せ下さい。
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