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  特設インタビューNHK「英語でしゃべらナイト」プロデューサー

NHK総合テレビで放送中の人気番組、「英語でしゃべらナイト」。皆さんのお気に入りの番組なのではないでしょうか。TOEFLメールマガジンは第25号で同番組チーフプロデューサーの丸山俊一さんに興味深いお話を頂きましたが、おかげさまで「特設インタビュー」とした特集は大変好評でした。放送開始4年目を迎え、放送時間帯もより多くの視聴者を意識した枠に変わる番組の大きな節目に、再び丸山さんにお話を伺いました。


丸山 俊一(まるやま しゅんいち)氏
NHK番組制作局 チーフ・プロデューサー
1962年長野県松本市生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。
甲府放送局、衛星放送局、番組制作局教養番組部ディレクターなどを経て「英語でしゃべらナイト」チーフ・プロデューサー。
ディレクターとして、「特集 エルミタージュ美術館」「新春美術特集 モネと日本人の物語」「新装ルーヴル美術館・まるごと大中継」「美の祭典・ヴェネツィアビエンナーレLIVE」「これぞ西洋名画100選・一億人の夢の美術館」「新日曜美術館」など美術番組を多数制作。
その他に、NHKスペシャル「英語が会社にやってきた〜ビジネスマンたちの試練〜」
土曜特集「世界を駆ける日本料理」など。

■ 前回は番組開始から1年を経たばかりの2004年春のインタビューで、番組誕生のきっかけや番組作成についてのお話を伺いました。その後2年間の反響はいかがでしたか?
 お蔭様で毎週の番組になって、丸3年になりました。夜11時台の番組のため、もともと30代・40代の女性視聴者をひとまず念頭においてスタートしたのですが、結果的にはターゲット層以外の方々からも多くの反響をいただきました。単に英語だけでなく、世代を越えて楽しんでいただけるエンターテイメントという形で、こんなに多くの方々に支持されることになるとは思わず(笑)、本当に感謝しています。昨年ニ度実施した公開収録の際には、お母さんと娘さん、親子でお越しいただいているケースも多く見受けられました。ややもすると番組ごとに層が固まってしまいがちな公開収録が多い中で、「英語でしゃべらナイト」は最も幅広い世代の方々に集まっていただける番組のようです。

■ 今後の番組構成についてはどのようにお考えでしょうか?

「英語でしゃべらナイト」  4月から曜日が変わり、金曜日の夜11時からとなります。時間も15分早まります。「英語でしゃべらナイト」の頭文字をとって"ESN on Friday 23"という気分で、一部のポスターなどはコピー化しました。ちょうど70年代ブームでもありますから、金曜日の夜は"Friday Night Fever"でいきたいですね(笑)。
 現在ご好評いただいている、釈由美子さん、パトリック・ハーランさん、松本和也アナウンサーのパーソナリティーがお迎えするゲストとのトークやセレブへのインタビューは、今後も番組の柱としていくことに変わりありません。ただし、4年目になりますのでレギュラー陣もいつまでも初心者レベルでいるわけにはいかないと自覚しています。インタビューひとつをとっても、紋切り型の質問ではなく、もっと異文化コミュニケーションに比重をおき、その方でないとお聞きできないようなお話をしっかり引き出したり、中級者なりの話の進め方へステップアップしてほしいです。これでいよいよ松本アナウンサーも逃げられなくなると思いますよ(笑)。レギュラー陣の次の成長段階をお見せしたいですね。


■ 新しい企画は考えていらっしゃいますか?
 はい。今年は新しい柱を2つ考えています。1つは、3月13日放送回から既にその始動編をお送りしていますが、「史上最強!?の英語プロジェクト」と呼んでいます。今までたとえば工藤夕貴さんなど英語の専門家以外のゲストの方にご登場いただく中で、それぞれの創意工夫や勉強法も伺ってきました。これを1回で終わらせてしまうのではなく、皆さんの様々な叡智を総合化させ、史上最強!?の英語学習法を模索していく予定です。
 また、今までのゲストの中には茂木健一郎さんのような脳科学者の方もいらっしゃいました。今後も、言語学、社会学、心理学、また認知科学などの分野でご活躍の方々にもアプローチしていただき、最新のアカデミズムの成果も取り入れながら開発をしていく予定です。
このようなコーナーを積み上げていき、秋にはその集大成として特集「英語でしゃべらナイトプレゼンツ−英語教育改革!?(仮)」という企画も予定しています。
 ちなみに、このたび行われる文部科学省主催の「『英語が使える日本人』の育成のためのフォーラム2006」では、松本和也が「『英語でしゃべらナイト』いけなくなった私」というタイトルで講演する予定です(編集部注:3月17日(金)に大好評のうちに終了しています)。英語教育という観点でも文部科学省の方々にもこの番組は注目していただいているようです。もちろん、我々の番組もひとつの試み、これだけでよいわけでは決してありませんが、様々な方々の知恵を出し合っていただける場として機能すればうれしく思います。「英語でしゃべらナイト」のやり方がいいと、あれはダメと、なんにせよ答えを固定化させてしまうのではなく、開かれたテレビとしてとらえていただき、我々も様々な試みを提言していきます。

---日本の英語教育に提言するという点では、間接的ではありますがTOEFLテストも同じです。このたびより実際のコミュニケーション能力を測定するテストに変わることで、読む・聞く・話す・書くの4技能を駆使して自分を表現する英語能力を身につける一助になれば嬉しいですね。 その新企画は、視聴者の方々には少し難しくありませんか?

 そんなことはありません。「史上最強!?の英語プロジェクト」では、様々な英語への夢を持っていらっしゃる方々、それぞれの視点で楽しんでいただけると思います。ひとくちに「英語がペラペラになりたい」ということばに置き換えられてしまいますが、人にはそれぞれの夢、それぞれの個性があります。フライトアテンダントになりたい方、IT企業の社長で海外と交渉しなければならないビジネスマンの方、また団塊の世代で老後はオーストラリアで過ごそうかという方もいらっしゃいます。それぞれの性格、置かれている状況、英語を学ぶ動機も異なれば、学習法も異なって当然です。そうした状況を踏まえた上で、楽しく、効率的な勉強法を考えよう、というコーナーです。
 ひとまず、息子さんと一緒にやりなおし英語に挑戦したいとおっしゃる、作家の室井佑月さんが定期的に参加してくださる予定です。室井さんの学習を半年間トレースしていくことで、「知的好奇心を持つ大人がやりなおそうというときの英語学習」の方法が見えてくることを期待しています。
 そしてさらには、視聴者のみなさん、それぞれのニーズにあった英語の学び方を考えてもらえるのではないかと思います。視聴者の方にこのコーナーを通して、ヒントをつかんでいただいたり、「私の英語学習のスタンスはこれでいいんだ」と確認していただければ嬉しいですね。

---番組がより身近になり、視聴者の方が自分の目線で考えられるのはとてもいいですね。 もう1つの新しい柱はどのようなものになるのでしょうか?

 2つ目の柱は「ロンドン・オン・ライン」です。今年度はロンドンに取材拠点を設けてヨーロッパ圏からリポートしていきます。今ロンドンは日本ブームであり、我々の番組でも折に触れて日本のポップカルチャーの海外で人気ぶりを紹介してきましたが、取材、制作の過程で、海外で日本文化が一般の方々にも浸透し、日本に対する見方が変わってきていることを実感しました。そのため、MARIさんという名古屋生まれでイギリス育ち、お父様がイギリス人、お母様が日本人の方がリポーターとなって、ロンドンの最新の流行などをネットで、映像で伝えてくれます。日本文化の受け止められ方、ロンドンにおける日本ブームの紹介はもちろん、常に視点の交換をしていきたいです。それが我々の番組の異文化コミュニケーションにつながります。ロンドンから日本に上陸してくるものもありますしね。いずれにせよ、これも完結した「リポート」というより「今の空気」を伝えたいと考えるコーナーです。
 また、1月に放映された「YOKOSO! TOKYO」もクロスカルチャーという点で大変ご好評をいただいたので、この方向性でも展開を考えていきたいですね。外国の方々の目線で見ると同じ日本であってもまったく新鮮に見えてきます。そういう視点をこの番組は失いたくないですね。
 その延長上とも言うべきでしょうか、次のフェーズでは番組そのものが様々な方々とコラボレートしていく、番組自体が異文化コミュニケーションする発想になっていくことを目指しています。英語を通してまた海外を通して日本のことがわかるのと同じように、我々テレビ番組を作る側でも英語と日本語を行ったり来たりする中で、視聴者の方々に両者の違いも含めて、できる限りダイレクトに伝えていきます。

■ 異文化コミュニケーションを実体験している番組を見て、視聴者もそのフラグメント(断片)から発想し、そこから広げていくというのは、双方向の新しい伝達方法ですね。
 テレビというメディアを、一つの「開かれた窓」、「開かれた場」と考えると、我々が無理に小さな物語にまとめてしまうのではなく、観てくださった方々がそれをきっかけに考え、そこから得たヒントで人生を豊かなものにしていっていただければ嬉しく思います。常に「つなげていく」「開いていく」・・・そうしたセンスが、これからの時代に合っていると思います。マスメディアとして決められていることはもちろん守りながら、時代のニーズにあった実験をできるだけ取り入れて、この番組の中でテレビ番組のあり方を問い直していければなお嬉しいですね。NHK教養エンターテイメントが民放と違って何ゆえに存在するかを考えることにもつながっていくのではないでしょうか。

■ 昨今コンピュータの普及によりテレビとインターネットのあり方も問われていますが、この番組は将来的にどのように進んでいくのでしょうか?
 現在テレビとインターネットを融合する試みとしてホームページ上での世界共通英語実力テストを行っていますが(ひとまず4月14日で終了、また新たな企画を検討、制作中です)単にテストを行うだけでなく、参加してくださった方々には、コンテンツと番組で見た内容とがうまくリンクする企画を行ってみようとしています。英語に意識の高い方はインターネットを使用することが多いので、ホームページを見た方がテレビを見て楽しんだり、その逆であったりなど、これからの時代のテレビとインターネットのあり方を模索中です。
 テレビ番組を制作している以上、映像として何か新しい方法論に発展させていければと考えています。いずれにしても映像を通して日本人がどうやって英語と触れ合っていけばいいかを、できるだけ楽しい形で考える機会を提供していきたいですね。

■ 今後もバラエティが基本路線であることは変わらないのでしょうか?
「英語でしゃべらナイト」 番組のパーソナリティーもスタッフたちも皆私を含めて、堅くやろうと思ってもそうはなりようがないので(笑)、今の雰囲気は継続されるでしょう。この番組ではある種のユーモア、遊びの部分を忘れないようにしたいのです。英語に触れている場合も、好きな映画の俳優のセリフを覚えたりするのは苦にならないのに、「英語の勉強だ」と思った瞬間につまらなくなりますよね。つまり目的にたどり着く、そのプロセスを楽しむことが必要なのです。実は番組制作にあたり、素直に今の時代でおもしろいものはなんだろうと考え、できる限り詰め込んでいこうとした結果がこういう形になったのです。テレビ創世記のバラエティもこのような空気があったのではと夢想しますし、そんな空気を感じていただけたら嬉しく思います。その精神をたまたま国際化と言われる時代に取り入れた結果が、「英語でしゃべらナイト」というかたちをとった、と考えると面白いですよね。正に自然に呼吸して時代の空気を吸うことで番組が生まれる、という・・・。その意味では確かにバラエティタッチではありますが常にジャンルわけを拒むものでありたいとも思っています。

■ 最後に視聴者の皆さんにメッセージをお願いします。
 出演者間で「進化する番組」という言葉が自然に出てきています。時代のオフサイドラインが非常に激しく動く時代ですので、今後も時代の空気感をとらえて、番組の中にぶつけていくつもりです。様々なゲスト、様々な事象が時代の空気を番組に運んできてくれるわけです。それを逃さず、素直にレスポンスしていくことで番組が出来上がっていく・・・ようでありたいですね(笑)。
 それぞれの国にそれぞれの文化があり、「わかる」「わからない」で言ったら「わからない」ことの方が多いかもしれませんが、そこで妙に無理をして都合のいい解釈をしてわかった気になるのではなく、あえて言えば「わからない」ことに耐えて「わからない」ことを楽しんでしまうことこそ大事なのではないでしょうか。コミュニケーションに絶対の正解はないので、こちらでもあえて白黒をつけません。実はグレーゾーンの中にこそ多様な考え方や視点が潜んでいるのかもしれないのです。もどかしい思いをされるかもしれませんが、その時はユーモアをもって世の中の多様性を受け止めてください。
 ディレクター達も皆、共通するコンセプトをベースにしつつも、それぞれのテーマ、問題意識で多様な演出、試みに挑戦しようとしています。これからも視聴者の皆さんといっしょに楽しい番組づくりをしていきたいと思っています。ご意見をお待ちしています。この番組を一つの新しい試みとしてとらえていただき、いっしょに参加し、走っていただければ非常に嬉しいです。

■ ありがとうございました。

(インタビュー:2006年3月6日 TOEFL事業部 部長 高田 幸詩朗)

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