この質問は平成14年、指定1年目の文部科学省実地調査の際に我々に投げかけられたものである。この質問は、事前に尋ねられることがわかっていたので、答えられるよう入念に準備をしておいた。準備した答えは、文部科学省の方を喜ばせようと学習指導要領を参考にして作成し、目標に書いてある言葉をちりばめた一分の隙もない代物であると確信していた。
しかしながら、相手が喜ぶどころか次のような言葉が返ってきた。「それは、日本全国の英語教育の課題ではないですか?私たちがお伺いしているのは、岡山城東高校の課題は何かということなのです。岡山城東高校の英語教育を3年間受けるとどのようなことが英語でできるようになるのか?たとえば、卒業時に英字新聞を読んで、その概要を述べることができるであるとか、トピックを与えられるとすぐにそれについてのスピーチをすることができるであるといった岡山城東高校における具体的な達成目標を設定することが、現在の課題ではないですか?」
我々はこの指摘に返す言葉がなかった。応接室で対面したまましばし沈黙が続いた。この実地調査は以後の研究開発をしっかりと方向付けることとなった。その後、シラバスの研究開発は次の点に注意しながら進められた。
1.
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卒業時達成目標(長期目標)の設定 |
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卒業時達成目標に向けての各科目年間目標(短期目標)の設定 |
3.
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短期目標実現のための学習内容・学習活動の設定 |
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評価方法の明確化 |
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授業の進度や家庭学習で必要となる要件の明確化 |
長期・短期目標を達成するための学習活動を設定するにあたり、学習指導要領における各科目の「内容のまとまり」ごとに学習活動をまとめていくことにしたのであるが、「内容のまとまり」は、「英語T」と「オーラル・コミュニケーションT」については、国立教育施策研究所教育課程研究センター作成資料(平成14年度教育課程研究指定校調査研究資料)を参考にした。その他の科目の「内容のまとまり」については、本校独自に設定したが、この作業には予想外の時間と労力を要した。
遅々として進まぬその作業を目の当たりにした運営指導委員から「この作業に多くの時間と労力を費やすべきではなく、長期・短期目標達成のための学習活動の設定、すなわち発信型コミュニケーション能力の伸長に寄与する活動の設定を早急に行うべきである」との助言がなされ、「学習活動の設定」、及び「それぞれの学習活動の目標」、さらに各学習活動を通して、観点別評価を行うための評価規準の作成に着手した。
この段階を経てシラバスの研究開発は「外国語科 学習活動と評価規準」という形で結実した。学習活動をベースとし、その活動ごとに目標があり、観点別に評価規準が策定され、それぞれの活動の目標は科目の目標、さらに卒業時達成目標へと向かう。このシラバスは、後に教員が共通のフォーマットによって作成することとなる具体的な評価規準を明示した学習指導案の作成や
、ITC(Intensive Training Camp:英語宿泊研修) を生徒が学習活動の有機的な統合を実体験する場として位置付けることにおいて、非常に大きな役割を果たした。
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