TOEFL Mail Magazine Vol.47
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e-Language in Action〜次世代メディアとプロジェクト発信型英語教育〜

第11回
広島県広島市広島城北学園中学校・高等学校での発信型英語教育の試み

慶應義塾大学環境情報学部教授  兼 同大学大学院 政策・メディア研究科委員 鈴木佑治先生
鈴木 佑治
慶應義塾大学環境情報学部教授  兼 同大学大学院 政策・メディア研究科委員

森河興三 広島城北学園教諭
山中 司 慶應義塾大学 鈴木佑治研究室、 政策・メディア研究科博士課程、
北陸大学非常勤講師


広島城北学園には、幼稚園と中学校と高等学校があります。前回は広島城北幼稚園での画期的な英語e-learning活動を紹介しました。今回は広島城北学園中等学校・高等学校(田辺範和校長)の生徒さんの活動を紹介させていただきます。2004年の12月に広島城北学園の理事長の谷口玲爾先生、専務理事の金子邦彦氏や教頭の武田和行先生をはじめ数名の先生方が私の研究室を訪ねてきてくださいました。世界に目を向けた教育を推進する為に、私の研究室で行っているプロジェクト発信型の英語e-learningプログラムを是非導入したいというお話を伺いました。以来、2005年度にSCLE(Space of Culture and Language Exchange)プロジェクトを立ち上げ、本日の報告者である広島城北学園教諭の森河興三先生を中心に企画を立てて参りました。まず、ビデオ・カンファランスを通して鈴木研究室とつなげ、何名かの有志の生徒さんたちに発表をしてもらい、私たちがコメントをしながら外国の中等学校や高等学校の生徒とLanguage Culture Exchangeをすべく準備を整えて参りました。やがて前回報告したClassical High Schoolとの交流も始まり、今年度は相当画期的な成果が生まれるものと期待しております。この立ち上げ期の活動について、森河先生と鈴木研究室の担当者の1人である山中君に報告してもらいます。

森河興三氏の報告

森河興三氏 最初に本校はグローバル化に対応できる生徒を育成する目標をもち、その模索をし始めました。その折、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)鈴木先生から「発信型の英語」についてのお話をうかがうことができました。それを私たちは単に英語や英会話の学習ではなくまず体験に基づいたコンテンツを持つことから始まり、それを日本のみならず世界へ伝えたい自分がいるというそのことを中心とし、コミュニケーションの手段である英語に対する必要性を認識し、それによって能力が向上するという流れととらえ魅力を感じました。そしてその実現を目指し昨年度よりSCLE(Space of Culture and Language Exchange)プロジェクトとして活動を始めました。ビデオ会議システム、ホームページ等今話題のコミュニケーションテクノロジーを十分生かすためインターネットやサーバー等のインフラの整備をしたうえで生徒を集め、好きなスポーツや音楽のことについてリサーチし英語に直し受信者としてのSFC鈴木先生の研究室に向け発表し、鈴木先生よりアドバイスをいただきました。参加した生徒は次第に面白みを覚え、回を重ねるごとに内容の濃いものへと移ってきていますし、プレゼンテーションの能力の向上も見られます。

広島城北学園 授業の様子
広島城北学園 授業の様子
広島城北学園 授業の様子
広島城北学園 授業の様子 広島城北学園 授業の様子

本校は海外の交流校としてオーストラリアYarra Valley Grammar School、イギリスHighcliffe Comprehensive School、アメリカExeter High Schoolがあり、非常にやりやすい状況なのですが、相手校に設備がないことや時差そして何よりもこちらがやろうとしていることへの理解が得られるかなど悩んでいました。その折、鈴木先生を通してClassical High Schoolを紹介していただきビデオレターを用いての交流をしました。相手の生徒たちも非常に興味を持っており、展望が開けてきたように思えます。やはり気楽なところから糸口を見つけていくほうがいいようです。
今年度からはいろいろな学年から参加人数を増やし、交流校やClassical High Schoolとのビデオ会議システムによる交流を活性化させていこうと考えています。時差などの制約は、ホームページやストリーミングによる配信などで対応してゆきたいと考えています。


山中 司君の報告

山中 司氏私共の研究室が行っている"e-Language in Action"は、その活動の範囲を大学の英語教育にとどめるものでは全くありません。e-spaceは物理的な距離や障害をなくし、全世界どこからでも、どんな立場からでも、堂々と発信できる「場」であり、その可能性はとても大きなものだと思います。
 今回ご紹介する広島城北学園は、中高一貫の高校で、それぞれの生徒の皆さんが本当にすばらしい発信を試みています。限られたスペースの、しかも文章でお伝えすることは大変難しいのですが、プロジェクトに参加した生徒の皆さんが、毎回の私達研究室への発表を行う毎に、みるみる成長していったのが非常に印象的でした。
 具体的に2005年度に行ったことは、およそ月1回の慶應SFC、鈴木研究室とのテレビ会議をコアの活動として、その他広島城北学園での文化祭や、交換留学生との交流などを通し、発信すること、とりわけ英語で発信することの意義を、先生方、生徒の皆さんが確実に実感していたように思いました。
 私の個人的な経験を言わせていただくと、私も高校はまさに広島城北高校のような地方の進学校でした。確かに毎日の英語の授業は小テストに終われ、大量の文章を読み、多くの単語や熟語を暗記し、実力テストの度に、分厚い文法書をひたすら勉強していたことを思い出します。それらの知識は相当なものですが、それだけではやはり、「発信」という点からは不十分だったように思います。自分のこれまでの相当の英語の知識を最大限に活用し、自分のメッセージを発信する側
に回った広島城北学園の生徒の皆さんは、まさに水を得た魚の如く、縦横無尽にこれまでの「詰め込んできた」知識を吐き出し、それらを全く無駄にせず、堂々と発信していたように思います。これは鈴木先生の理念である、高校の授業をスキルワークショップと見立て、プロジェクトを中心にその相互の有機性を具現した一つの理想的な形だと思います。
 森河先生も書かれている通り、まだまだこれから、広島城北学園と慶應SFC、鈴木研究室を結んだプロジェクトは大きく発展していきます。私達自身、広島城北学園とプロジェクトを共にできたことから、本当に多くのことを学ぶことができました。


谷口理事長および田辺校長との話の中で、広島城北学園の将来の目標の一つが、外国のトップ大学に卒業生を進学させることであるとの意向を何度か伺いました。広島城北学園の生徒さんたちは非常に優秀で、その気になればその目標はあまり遠くない将来実現できると思います。アメリカのthe most competitiveというランクに位置するトップ50大学(Baron社統計)では、SAT(英語と数学の共通試験)のスコアのみならず、創造的な活動についてのstatementが合格の重要な意味を持ちます。そのためには課外活動を中心に自分の意見をキチンとまとめて発表する能力が必要不可欠です。活動をまとめたWebページを見てもらうことは効果的な方法の一つです。その意味からもSCLE(Space of Culture and Language Exchange) は着実なステップです。本連載につきましてのご意見、ご感想はこちらまでお寄せ下さい。

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