今回は久しぶりにメルボルン大学の関口幸代先生の日本語クラスと慶應義塾大学SFCの長谷部担当の英語クラスの交流授業について報告します。前回は2004年4月〜2005年7月までの1年半、3学期間の交流授業の経過報告でした。今回は2005年9月〜2006年1月までの秋学期の交流授業の報告です。前回と同様、メルボルン大学とSFCで、教育・お見合い・映画・音楽・Korean
Wave・剣道等の興味別グループに分かれてのグループワークを通しての交流授業でした。今回はSFCの長谷部が概要を報告し、来月号でメルボルン大学の関口先生に先生独自の切り口から今回の交流を振り返った報告をしていただきます。
結論からいうと、今回の交流授業は今までとくらべ学生間のコミュニケーションがより深まった成功例といえるでしょう。その成功の要因を以下のようにまとめてみました。
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全学期13回の授業のうち、12回で交流授業ができた。交流回数が増え、当然、学生間の親密度も増した。 |
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明確な目標設定をすることにより協働意識が生まれ作業も進んだ。上記で述べたテーマごとにグループに分かれて3Dを使い、それぞれが独自のコミュニティー空間〔部屋〕を創った。最優秀の制作を選出しベストルーム賞を与えた。 |
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授業内ではビデオ会議・チャット、授業外ではメッセンジャー等を導入し、交流ツールを増やして日常的で自由な交流ができる環境を構築した。 |
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双方の学期が時期的に違うのでそのギャップを補うために交流授業を2部構成にした。メルボルンの学生は、前半に正規授業の履修者が参加し、後半にボランティアの学生が参加した。内容も、前半がテーマに関する話し合いを中心に、後半はその内容を深めつつ実際にコミュニティー空間作りに専念し、前半後半の内容を明確にして分業化することにより協働して目標を達成できた。 |
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3D空間でチャットができるコミュニケーション部屋を作った。各部屋作りには、学生以外にFacilitatorという架空の担当者が存在し、このキャラクターを通して学生は頻繁にコミュニケーションをはかりお互いの合意形成を達成することが出来た。 |
今回の交流授業が両校の参加者に達成感をもたらしたもう一つの特筆すべき要因は、メルボルン大学とSFCの作業分担の割合がどちらにも偏ることなく均等であったことです。これにより仲間意識が高揚し、その結果、交流授業終了後の2月には関口先生をはじめメルボルン大学の学生がSFCを、3月にはSFCの学生がメルボルン大学の学生を訪れ、face-to-faceでお互いの大学生活を体験し交流を密にしました。オンラインの交流に始まり、最後には、お互いに訪問しあうコミュニケーションの実の「場」の創生に成功しました。
交流授業における英語と日本語の配分は、メルボルン大学の学生が日本語を学習中であり、SFCの学生は英語を学習中であることから、全てチーム内の合意で行われました。かくして、それぞれの状況で自由に言語を選択してコミュニケーションができる空間ができ上がりました。英語と日本語との配分のバランスは自然にとれて、どちらの言語にも偏ることがない交流を体験できたようです。作業目標を明確に設定することにより協働作業の態勢が生まれ、その流れの中で的確な言語選択が行われることを実感したようです。
オンラインによる遠隔授業にとどまらず、face-to-faceの交流が双方の学生内部から自発的に生じ一生持続できれば、多くの時間と労力をかけて遠隔の交流授業を実践する意義を見出すことが出来ます。お互いの言語と文化の違いを実体験し理解することが最終目的ですが、その為にはプロジェクトの内容が核になることは言うまでもありません。
こうした交流授業は制度的にも技術的にも不安定で、時間のみならず精神的かつ身体的に相当の労力を費やします。この春学期も含めて2年間継続してまいりましたが、毎回履修者は異なるものの、新たな展開が起きモチベーションも高まります。担当者である私たちが逆に励まされるのです。この連載の読者の皆様から、クラス単位、学校単位で、意欲的に取り組もう、という声が上がることを心待ちにしています。
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