今回は、メルボルン大学日本語クラス(関口担当)と慶応大学SFCスキル英語クラス(長谷部葉子さん担当)の2005年の後期のジョイント・プロジェクト授業を紹介いたします。
参加学生は、3ヶ月間、Web上の3Dヴァーチャル・リアリティを利用して交流協働しながらコミュニティー空間を完成させました。交流授業にインターネットを使う利点は、情報交換はもちろんのこと、プロジェクトを通して協働することにより達成感を味わい、かつ相互理解を深めることのできる環境を築くことです。target言語のコミュニティーに参加し積極的な発信をすることで学習効果が促進されることは今更言うまでもありません。通常のクラス・ルーム活動だけではそのような環境を作り出すことは至難の業です。そこで、私たちは交流授業に3Dを導入しそのようなコミュニティーを作り出せないかと考えました。
詳細は割愛しますが、使用した3D環境を簡単に説明します。写真1のように、参加者はアバターに変身して3Dの部屋に入ります。メルボルン大とSFCの学生は、幾つかの混合グループに分かれ、まず、写真2のようなあらかじめ用意された部屋を全グループに与えます。各グループは話し合ってテーマを決め、そのテーマにそって部屋の改装作業を進めます。週ごとに話し合い、考えをまとめ、それをもとに部屋の模様を変えて行きます。どのような話し合いがされてきたのか、その結果は3Dの部屋(空間)に捨象されビジュアル化されます。学生は自分たちが住む3Dコミュニティーを訪れ、チームメンバーに会い、どのように改装するかを話し合いそれを実行していきます。この作業が毎週繰り返されます。
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<写真1:ポップカルチャーのグループの完成した部屋> <写真2:開始の部屋> |
交流のチャットのログの記録やフィード・バックを見ると、3Dバーチャル空間での活動であるにもかかわらず、あたかも現実のコミュニティーを形成しているかのように、部屋の改装に無心に取り組んでいる様が一目瞭然です。各グループのメンバーそれぞれに特有な好みや考えが現れ、家具の形ひとつをとってもグループ内でしばしば意見が対立し、交渉や説得を駆使して最終的になんとか合意にたどりつく様子が見られます。話し合いが進まず悩んでいたグループもありましたが、交流するうちに活発な議論が交わされるようになりました。言語と非言語をうまく組み合わせてコミュニケーションをしながら、合意形成に至るコツを学んだのではないでしょうか。グループ内での役割分担も生まれ、現実社会に近いコミュニティーが形成されていったのではないかと思います。
自発的にメッセンジャーやメールを使い、授業時間外にも交流をするグループも多数あり、学期が終わった後も活発な交流は続きました。3D環境の中で協働作業をすることにより、それぞれの考えを結集してグループの居場所が見る見るうちに出来上がっていきました。結果、メルボルン大生とSFC生から成る混成グループのメンバー内に強い仲間意識が生まれ、それが積極参加を促す原動力になったと思われます。
今回の3Dプロジェクトの完成に至るまでには、長期の準備を必要としましたが、クラスにいながら、それぞれのtarget言語を使い活動することにより学習できる環境を構築できたものと考えます。これからも適切なタスクと最適なテクノロジーを組み合わせてproductiveな学習ができる環境を開発して行きたいと思っています。
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