TOEFL Mail Magazine Vol.52
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第16回
慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスと英国オックスフォード大学・ケンブリッジ大学のOnline Language Exchange
鈴木佑治
鈴木 佑治
慶應義塾大学環境情報学部教授  兼 同大学大学院 政策・メディア研究科委員

岡部めぐみ 
(英国オックスフォード大学大学院応用言語学科修士課程)




 今回は、英国オックスフォード大学と慶應義塾大学SFCのLanguage and Culture Exchange の模様を紹介いたします。オックスフォード大学側担当者の岡部めぐみさんは、SFCの卒業生であったことから計画はトントン拍子に進みました。オンライン・ジョイント授業の意義や効果について熟知しており、SFCとオックスフォード大で培われた「問題発見・解決」の精神に基づき、問題を恐れず挑戦する姿勢は高く評価します。慶應SFC側の担当者である山中司君と相談し、一つ一つの問題を綿密に分析し解決しながら事をつつがなく進めました。岡部さんがオックスフォード大およびケンブリッジ大の学部・大学院生を、山中君が慶應SFCの学部・大学院生を募集したところ、両校とも相当数の希望者が集まりました。オックスフォードとケンブリッジの学生は日本語で、慶應SFCの学生は英語で、先端医療から文化、言語、社会などについてかなり突っ込んだ意見交換が行われました。 以下、岡部さんのオックスフォード側から報告してもらいます。慶應SFC側からの報告は、別の機会に山中君より報告いたします。

岡部めぐみさんの報告

岡部さん ここでは2006年5月〜6月の4週間に渡り、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスと英国オックスフォード大学・ケンブリッジ大学の間で行われたOnline Language Exchangeについて報告します。


活動のはじまり

  この活動は鈴木先生との一通のEメールから始まりました。私は慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスを97年に卒業し、外資系企業に8年ほど勤務した後、2005年10月より英国オックスフォード大学教育学部応用言語学科にて修士留学をしていました。修士論文の題材を検討していた際に、鈴木先生の研究会で千葉商科大学と英国マンチェスター大学の間でOnline Language Exchangeを行ったということを知り、この活動がいかに語学学習に効果があるかを調べてみたいと思い立ちました。外国語教育も最近はコミュニケーション重視とされてきましたが、実際にその外国語をコミュニケーションのツールとしてネイティブと使う機会が不足していると感じていました。私は、言語はもともとインターラクティブに作り上げて行くものだと考えており、相手があって初めて生きた言語習得ができるのではと思っております。そこで、このOnlineを活用したLanguage Exchangeは、ネイティブ・スピーカーと外国語を実践的に活用する良い機会を与えると思ったわけです。修士論文の一環として慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスと英国オックスフォード大学・ケンブリッジ大学のOnline Language Exchangeを行いたいという旨を鈴木先生にEメールしたところ、すぐに快諾のお返事をいただき、当時研究会で修士課程に在籍していた山中さんをご紹介いただき、2005年10月よりパイロットテストを含めあらゆる側面に置いて協力をしていただきました。


活動内容

  このOnline Language Exchangeは課外時間に学生の自主参加をもとに行われました。日本側からは10名、英国側からは8名が参加しました。実際の参加希望者は更に多かったのですが、日本と英国の時差や、学期のスケジュールが異なることなどの理由で全員が参加することはできませんでしたが、予想以上の参加希望者が集まり、かなりの高い反響がありました。Language Exchangeのセッションはインターネットを介したビデオ会議システムを利用し、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスと英国オックスフォード大学・ケンブリッジ大学をつないで行いました。一回のセッションは45分間で20分を英語、20分を日本語と区切り、それぞれの言語で会話を一対一で行い、最後の数分間を利用して互いに相手の学習言語に対するフィードバックを行いました。このセッションの形式に対して、「一方的に教えられるのではなく、対等な立場に立つことによって、コミュニケーションが活発に取れたように思う」と参加者はコメントしています。「対等な立場」に立ち、外国語で会話をするという境遇を共有し、そしてお互い助け合うことによって、初対面で、何千キロも離れたところにいる相手であっても、45分間で参加者同士の距離がずっと縮まるように感じました。セッション後のフィードバックはとても有益であるというコメントでした(「英語の発音をほめてもらって自信がつきました」、「文法や単語などの細かい部分を相手に指摘してもらえたので、その点に関して上達しそうです」など)。基本的にセッションの会話内容は通常の会話と同じように決まった形式は設定されていなかったのですが、事前に相手に尋ねたいと思う質問を考えてくること、自分で選んだトピックについて簡単に発表できるよう準備してくることを推奨しました。


活動結果

 参加者の語学レベルによって、このLanguage Exchangeから得たものは異なったように思います。日本で英語を学び、一対一で継続して20分も会話をしたことが無かったという学生は、「文法であったり、時制であったり、冠詞であったり、こういったことは英語において確かに重要である。しかしそれを意識するあまり英語が怖くなるのでは本末転倒である。華美流麗な英語を話す必要はない。身振り手振りも時に交えながら、意思を伝えようという強い気持ちをもつ。これが一番重要であり、これさえ出来れば基本的な英会話は出来る、と気付いた」、「完璧な英語をしゃべる自信がなくても、通じることがわかった」とコミュニケーションを図ろうとする意思の重要性を認識したことに対してコメントしています。更には、「相手の顔の表情、ジェスチャーを見ながら話せること。教材や大学の授業のように“受け身”で覚える英語ではなくリアルタイムの意見交換を通じてスピーキング、リスニングを鍛えることができた」、「英語の授業に比べて、質問にしろ議論にしろ、肩の力を抜いて自然な形で出来る。英会話においてこのことは非常に重要なことであり、その意味で有意義だと思った」、「現地の人と話すことによって、自分が経験していなかったことなどについて議論をすることができた。向こうの人の価値観と自分の価値観の比較をすることができた」、「このプログラムがなかったら、恐らく一生知り合えなかった人と友達になれた」、「現地の学生の方とメール交換をする仲になれた」、などが良かったとコメントしています。

活動は4週間と短い期間でしたが、外国語学習の言語面においても効果は見受けられました。セッションに4回参加した4名の日本人学生に対して行った、セッション参加前と後のオーラル・インタビューのデータを比較した結果、測定した流暢さ(fluency)、正確さ(grammatical accuracy)複雑さ(lexical and syntactic complexity)において全て統計的有意な結果となりました。

このOnline Language Exchangeのメリットとして、外国語を使ってコミュニケーションを図るということに対する自信、自分の抱える課題の明確化、他国の学生との交流の機会、そして更には言語面における効果が挙げられます。また、学生の主体性を重んじた活動としても非常に有意義な内容となりました。

Online Language Exchangeのようす Online Language Exchangeのようす
【Online Language Exchangeのようす】



 この活動以外に、岡部さんの所属するオックスフォード大学の応用言語学科の研究室の教授、研究員、大学院生の皆さんと、私と私の研究室の教員、研究員、大学院生とで外国語教育に関する研究について意見を交換するオンライン・セッションも持ちました。お互いがどのようなことを考え研究しているかを知ることが出来るとてもよい機会でした。岡部さんと山中君は、大学院の研究論文の一環としてLanguage and Culture Exchangeを企画しております。お互いの指導教員も意見交換を密に行えば、このような活動が指導教員にとっての研究の一端となるはずです。岡部さんは博士課程に進むことになっていると聞いていますが、山中君も博士課程に在籍しており、2人のコラボレーションはこれからも続くでしょう。学部生の活動が、大学院生の研究活動として行われ、それに指導教員が絡めば、マルチ・ラテラルな研究プロジェクトに発展するはずです。

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