TOEFL Mail Magazine Vol.63
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じゃれマガの魅力

常に英語に触れることが、英語上達への近道だと言われています。ある時、毎日携帯電話やパソコンに短い英文メールが送られてくる、無料のメールマガジンがあるといううわさを耳にし、さっそく調べてみました。それは、 浜島書店の『Catch a Wave』という、カラー写真付き英字新聞の中の企画でした。名古屋女子大学のダグラス・ジャレル先生が、日々感じる興味深いことについて、短い英文を書いて送信しているメールマガジン、その名も『じゃれマガ』。
メールアドレスを登録するだけで毎日英語に触れることのできる方法として、画期的なこの『じゃれマガ』について、先生にお話を伺いました。みなさんも『じゃれマガ』を活用して、楽しく英語力UPを目指してみませんか?


Douglas S. Jarrell  (ダグラス・ジャレル)先生

Douglas S. Jarrell  (ダグラス・ジャレル)先生1953年 アメリカ ノースカロライナ州生まれ
名古屋女子大学文学部国際言語表現学科教授

主な研究内容:
・CALL(Computer-Assisted Language Learning, コンピュータを利用した言語学習)
・異文化コミュニケーション
など
2005年10月よりじゃれマガ執筆中。



---『Catch a Wave』との出会いについてお聞かせください。
 ある学会で、浜島書店の『Catch a Wave』という新聞を見たときに、学生にとてもよい読み物だと思いました。普段学生と接していて、我々教員の課す読み物は米国や英国の文化に基づいていて、その文化に共通点のない学生には読むのは大変だと気づいていました。『Catch a Wave』は日本のニュースなので、親しみやすい内容です。さらにカラーで短い記事があり、日本語訳もあって見やすい。今は授業に使っていますし、自習室にも置いています。『Catch a Wave』がなければ『じゃれマガ』も始まっていなかった。何と言っても名古屋発ですからね。

---『じゃれマガ』はどのようにして始まったのですか。
Douglas S. Jarrell  (ダグラス・ジャレル)先生 はじめは浜島書店に『Catch a Wave』のためのブログを書かないかと勧められ、しばらくブログを週3回ぐらい書いていました。ちょうどその頃、授業での携帯電話の活用法についてさまざまな研究がされており、興味を持っていました。例えば朝昼晩3回に分けて語彙や例文の意味を書いて携帯電話に送信するクラスと、紙ベースで同様のことを行うクラスとを比較すると、携帯電話で情報を受け取っているクラスの学生の方がはるかにスコアが伸びていたし、モチベーションが高いとの結果が出たそうです。それを聞いて、ブログではなく携帯電話に流せるようにして欲しいと依頼しました。そうして2005年10月、『じゃれマガ』がスタートしたのです。 読む習慣をつけるために毎日配信して英語に触れさせたいと思うようになり、現在のスタイルになりました。

---じゃれマガは授業ではどのように活用されているのですか。
 以前までは『じゃれマガ』を強制的に読ませ、毎週のように理解度のチェックのために選択式のテストを作っていました。しかし選択式テストだと、勘でも当たってしまいますので、実際に学生が内容を理解しているかどうかが分かりませんでした。それで途中から、毎週6つの『じゃれマガ』の中で、「一番面白かった内容とその理由」、「一番難しかった内容とその理由」、「もう一つ好きだった内容とその理由」をメールで送るようにという方法に変えました。そうさせることによって初めて学生の理解度が分かります。
 そこで気づいたのは、実はよくわかっていない学生が多いことでした。たとえば「ある州ではタバコを吸うことは禁止されているが、噛みタバコは噛んでもいい、という法律に関し、ある議員が異議を唱えた」という話を『じゃれマガ』に流したら、多くの学生が「難しかった」と答えました。英語が難しかったのではなく、日本の文化になじみのない「噛みタバコ」自体を知らなかったのです。私が全然気づかないところで、学生は苦しんでいるんだと知り、つくづく文化は難しいと思いました。またあるときは、連続する内容を何日かに分けて送信したところ、話がつながっていると気づかず、指示語などが通じない学生が多く、毎回完結した話を流したほうがいいことも学びました。

---じゃれマガを通して学生と相互のコミュニケーションが取れるのはとてもいいですね。フィードバックも楽しみになりますね。
 一番安心するのは、みんな違う意見を持っている時ですね。学生それぞれ自分の意見や趣味を持っています。「一番難しいもの」は共通点があるだろうとは思うのですが、みな同じものが好きだったら面白くないですから。
Douglas S. Jarrell  (ダグラス・ジャレル)先生 それと同時に、フィードバックの書き方も見ています。”I liked the story about…because the words weren’t very difficult and I didn’t know that…”という書き方ができるようになると、とても嬉しいですね。また内容だけでなく、私の書き方を真似て、自分で正しい英文を書けるようにすることも1つのトレーニングです。この授業を通してコミュニケーションにおいて必要な語彙力、表現力を身につけて欲しいと願っています。
 我々教員は時々大きな勘違いをして、一回教えたら学生はできるようになると思い込んでしまうことがよくあります(笑)。それは私も含め、教員の危険なところでしょうか。毎回同じようなアクティビティーを行った方が、かえって学生の満足感が得られますし、完成度が高くなるのです。繰り返すことで、それが身につくんですね。
 多くの先生からどのように『じゃれマガ』を授業に活かせるかと質問を寄せられていて、私も正直まだよく分からないのですが、今のところはこのような使い方が一番適しています。何が面白かったかを書いてくる方が学生にとっても面白いですしね。

---TOEFLテストは「読む・聞く・話す・書く」の4技能を含めた実践的コミュニケーション能力を測るテストになりました。テスト自体も変化していく中で、多くの方々が勉強法について試行錯誤されていると思います。このように毎日英語に触れて、英語を楽しく勉強をしていけるのは、ストレスを感じず、とてもいい方法ですね。
 それが『じゃれマガ』の狙いです。学生に今一番欠けているのは読む力です。話すモチベーションは、たぶん多くの学生にあるのです。おそらく100人中80人以上が話せるようになりたいと言います。スラスラ読めるようになりたいと言う人はなかなかいない。しかししっかり読めないと、たとえばTOEFLテストの点数は上がらないのです。日常生活レベルでいいと思えばそれでいいのでしょうが、仕事にはならない。ましてや、ちょっと高いレベルを目指している学生に関しては、仕事や講義の場で出会う単語は面白くもなんともないはずです。たとえば先ほど私が出席していた教授会でも、そこで読むものは決して楽しい単語ばかりではありません。ですから何らかの形で面白いものでまずは読む癖をつけないといけない。『じゃれマガ』から始めて徐々に難しい文章を読む力をつけさせるのが目的です。
 話す力に関しては、本学でも工夫しています。Conversation Salonをつくり、学生が自分の好きな時間に予約をとって、毎日来る3人程度の英語のConversation Partnerと15分ぐらい話します。話す内容は自由です。私は英語は別に米国のものでも、英国のものでもない、国際語として考えています。日本人が仕事に就くと、話す相手は50%以上はアジア人であり、欧米人ではないでしょう。欧米人でも、英米国人とは限らない。ですからConversation Partnerには基本的に英語を母国語としない人を採用しています。それはなかなかうまくいっているようです。またこのフロアは非常勤の先生を含めてイングリッシュフロアになっているので、ここで人に出会うと英語で話します。実習室にもDVDやCD、NHKの教材などを置いて、誰でも使えるようにしています。
 コミュニケーションを中心に教えようとすると、だらけることがあります。正確性が欠けてくるわけですね。言語には正確性も必要であり、それはたとえばTOEFLテストなどの試験に求められてきます。私が日本語検定試験1級を受けたときも、漢字や単語を勉強している際に、今までどれだけ怠けて辞書で調べなかったかがよく分かりました。まず簡単なコミュニケーションからスタートして、そこから正確性を学ぶことが重要です。

---じゃれマガを書いている上で大変なことは何ですか。
 最近になってようやく書きやすくはなりましたが、最初の2、3ヵ月ぐらいは大変でした。一番苦労するのは、文章の長さを85語(450字以内)に収めることです。どこの携帯電話でも500字以内ならたいてい受信できるので、そう設定しているのですが、文章を短くするのも大変だし、接続語をどうやって使うのかも考えどころです。たとえば、「I drink my tea.」「I put a cup on the table.」「I stood up.」「I left the room.」「I said hello to a friend and I went outside.」を接続語を使用しないで話すととても不自然です。”Even though、Although、But、However、When、While、…”といった、学生が使える単語をなるべく使い、学生が知らないようなものは使わないように努めています。
Douglas S. Jarrell  (ダグラス・ジャレル)先生 少し長く書いて、そこから減らすこともあります。例えば”Back to baseball…”、”Do you know…?”というような表現で雰囲気を作ろうとすると、今度は言葉が多過ぎて収まらないので、まず文章削減の犠牲になるのはこういう飾りなのです。簡単に読めるように、あまり難しい言い回しをしない方がいいのですが、時々自分の文章が味気なくも思えます。
 もう一つの悩みは、話の題材です。知り合いも読んでいますので、下手なことは書けません(笑)。実生活をどこまで『じゃれマガ』に書くべきか、悩みますね。多少それがないと面白味がないですが、かと言って毎日のように私生活について書くと、今度はドラマになってしまいます。ドラマのように面白くなればいいのですが、つまらないドラマになるかもしれませんから(笑)。また、学生の中に野球が嫌いな人がいるかもしれないのに立て続けに野球について書くのもよくありませんし、私自身が興味のある環境問題について書き続けても、これもまた嫌な人もいるわけです。

---いつも読みやすい量にまとまっていて、楽しく読ませていただいていましたが、その裏に多くのご苦労があったのですね。毎日欠かさず配信するのは大変なことだと思うのですが、いつ文章を書いているのですか。
 昔は毎朝書いていたのですが、米国へ行ったりするので、時差の関係上不可能になって、それからは1ヶ月前でもいつでも予約配信できるようにしてもらいました。ですから、外国へ行く場合は、まず最初の1週間ぐらいは事前にまとめて書いておき、予約をしています。そうしないといつコンピュータが使えるか分からないですから。まとめて書くときは、タイムリーな話題は書けないので、一般的な内容になります。通常は前日や早朝にYahooのニュースなどを見たりして、ネタを探して書きます。時々「何のためにここまでしなければいけないのか」と考える時もあるのですが、これは私の日本語の訓練、勉強でもあると思っています。『じゃれマガ』で英文に時折日本語訳を付けるのは、とても勉強になります。例えば、日本語で動詞を使う場合は必ずしも英語で動詞を使うわけではありません。私も日々学んでいるのです。

---私も含め、今や全国各地に先生のファンがいらっしゃいますね。
 ひとつ驚いたエピソードがあります。ある日「今日は米国でちょうど昼夜の長さがほぼ同じ日(日本での春分/秋分)です」と書いて配信をしたら、その後読者からメールが来たのですが、この人は富士山の上の観察所にいらっしゃる方で、Douglas S. Jarrell  (ダグラス・ジャレル)先生「それは日本時間の今日であり、米国時間ですと明日ですよ。」と訂正してくださったのです。いやぁ、感動しました。富士山の上で私のメルマガを読んでいる人もいるんだなって。
 読者とのコミュニケーションの場である掲示板は、私はほぼ毎日チェックしているのですが、あまり活用されていないようですね。日本人は恥ずかしがり屋で、自分の書いたものが載ってしまうのに抵抗があるのかもしれません。でも実名で書く必要はないので、ぜひ感想をお聞かせいただきたいです。

---最後に、じゃれマガの今後に期待することをお聞かせください。
 せっかく無料の媒体なので、どなたにでもどんどん読んでもらえれば嬉しいです。今後は『Catch a Wave』に音声も載せようと考えています。現在の週6日配信を週5日にして、その中で良かったと思う1つを選んで英語だけのPodcastとしてWEBに載せようかと。そうすると、リスニング教材としても使えます。始まった以上は、続きますし、どんどん発展させていきたいですね。

---ありがとうございました。
(インタビュー: 2007年10月19日 TOEFL事業部 稲吉 美和子)

じゃれマガ
『じゃれマガ』のご登録は『Catch a Wave』のホームページで簡単にできます。
2006年末までの100点を収録した本もあります。

☆こぼれ話☆
日本語がとても堪能なジャレル先生に、来日の経緯と日本語習得時のエピソードを伺いました。

---ジャレル先生は、いつ日本にいらしたのですか?
1975年に初めて日本に来ました。大学を卒業して、米国で日本の英会話学校の仕事を見つけました。「東京には働く場所はないが、名古屋ならある」と言われ、即答で”Yes”と答えました。その後初めて地図を開いて、「名古屋ってどこだろう?」と(笑)。ニューヨークに住んでいたので、大都会よりももっとこじんまりしたところが希望で、東京以外ならどこでも良かったのです。住み始めると居心地がよくて、それからずっと名古屋です。名古屋は東京、大阪と比べて人が少ない。且つ、海も近いし山も近い。京都も近いですしね。あの頃はまだ日本に来る外国人は少なく、当時は栄の町を歩いていると珍しがられてよくじろじろ見られていましたよ(笑)。

---日本語は簡単に習得できましたか。
 
大学4年生のときから日本語を習い始めたのですが、とても大変でした。こんなに難しいものだとは思いませんでした。英語では読み書きの勉強はおそらく小学校1年生で終わりますが、日本語(漢字)は中学校修了時までかかります。それだけでも難しさが分かるでしょう。私は日本語が世界一難しい言語だと思っています。日本語の難しいところは、送り仮名を書く単語と書かない単語があることです。私にとってそのルールは理屈に合いません(笑)。
  また一つの漢字に対してたくさんの読み方を覚えなければならないのも大変です。ひとつ恥をかいたことがあります。来日したばかりの時に友達と飲みに行って、習ったばかりの漢字を見て「セイビールください」と言ったら、「生(ナマ)ビールのことですか?」と言われてしまいました(笑)。私は「生」の読み方を「セイ」とだけ覚えていたのです。実は「生」という漢字は10種類ほどの読み方があるんですよね。やはり日本語は難しい。

そう言って、インタビューの最後に流暢な日本語で名古屋の名所を私たちに教えてくださったジャレル先生は、もう日本人そのものでした。

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