常に英語に触れることが、英語上達への近道だと言われています。ある時、毎日携帯電話やパソコンに短い英文メールが送られてくる、無料のメールマガジンがあるといううわさを耳にし、さっそく調べてみました。それは、
浜島書店の『Catch a Wave』という、カラー写真付き英字新聞の中の企画でした。名古屋女子大学のダグラス・ジャレル先生が、日々感じる興味深いことについて、短い英文を書いて送信しているメールマガジン、その名も『じゃれマガ』。
メールアドレスを登録するだけで毎日英語に触れることのできる方法として、画期的なこの『じゃれマガ』について、先生にお話を伺いました。みなさんも『じゃれマガ』を活用して、楽しく英語力UPを目指してみませんか?
Douglas S. Jarrell (ダグラス・ジャレル)先生
1953年 アメリカ ノースカロライナ州生まれ
名古屋女子大学文学部国際言語表現学科教授
主な研究内容:
・CALL(Computer-Assisted Language Learning, コンピュータを利用した言語学習)
・異文化コミュニケーション
など
2005年10月よりじゃれマガ執筆中。
---『Catch a Wave』との出会いについてお聞かせください。
ある学会で、浜島書店の『Catch a Wave』という新聞を見たときに、学生にとてもよい読み物だと思いました。普段学生と接していて、我々教員の課す読み物は米国や英国の文化に基づいていて、その文化に共通点のない学生には読むのは大変だと気づいていました。『Catch a Wave』は日本のニュースなので、親しみやすい内容です。さらにカラーで短い記事があり、日本語訳もあって見やすい。今は授業に使っていますし、自習室にも置いています。『Catch a Wave』がなければ『じゃれマガ』も始まっていなかった。何と言っても名古屋発ですからね。
---『じゃれマガ』はどのようにして始まったのですか。
はじめは浜島書店に『Catch a Wave』のためのブログを書かないかと勧められ、しばらくブログを週3回ぐらい書いていました。ちょうどその頃、授業での携帯電話の活用法についてさまざまな研究がされており、興味を持っていました。例えば朝昼晩3回に分けて語彙や例文の意味を書いて携帯電話に送信するクラスと、紙ベースで同様のことを行うクラスとを比較すると、携帯電話で情報を受け取っているクラスの学生の方がはるかにスコアが伸びていたし、モチベーションが高いとの結果が出たそうです。それを聞いて、ブログではなく携帯電話に流せるようにして欲しいと依頼しました。そうして2005年10月、『じゃれマガ』がスタートしたのです。 読む習慣をつけるために毎日配信して英語に触れさせたいと思うようになり、現在のスタイルになりました。
一番安心するのは、みんな違う意見を持っている時ですね。学生それぞれ自分の意見や趣味を持っています。「一番難しいもの」は共通点があるだろうとは思うのですが、みな同じものが好きだったら面白くないですから。 それと同時に、フィードバックの書き方も見ています。”I liked the story about…because the words weren’t very difficult and I didn’t know that…”という書き方ができるようになると、とても嬉しいですね。また内容だけでなく、私の書き方を真似て、自分で正しい英文を書けるようにすることも1つのトレーニングです。この授業を通してコミュニケーションにおいて必要な語彙力、表現力を身につけて欲しいと願っています。
我々教員は時々大きな勘違いをして、一回教えたら学生はできるようになると思い込んでしまうことがよくあります(笑)。それは私も含め、教員の危険なところでしょうか。毎回同じようなアクティビティーを行った方が、かえって学生の満足感が得られますし、完成度が高くなるのです。繰り返すことで、それが身につくんですね。
多くの先生からどのように『じゃれマガ』を授業に活かせるかと質問を寄せられていて、私も正直まだよく分からないのですが、今のところはこのような使い方が一番適しています。何が面白かったかを書いてくる方が学生にとっても面白いですしね。
最近になってようやく書きやすくはなりましたが、最初の2、3ヵ月ぐらいは大変でした。一番苦労するのは、文章の長さを85語(450字以内)に収めることです。どこの携帯電話でも500字以内ならたいてい受信できるので、そう設定しているのですが、文章を短くするのも大変だし、接続語をどうやって使うのかも考えどころです。たとえば、「I drink my tea.」「I put a cup on the table.」「I stood up.」「I left the room.」「I said hello to a friend and I went outside.」を接続語を使用しないで話すととても不自然です。”Even though、Although、But、However、When、While、…”といった、学生が使える単語をなるべく使い、学生が知らないようなものは使わないように努めています。 少し長く書いて、そこから減らすこともあります。例えば”Back to baseball…”、”Do you know…?”というような表現で雰囲気を作ろうとすると、今度は言葉が多過ぎて収まらないので、まず文章削減の犠牲になるのはこういう飾りなのです。簡単に読めるように、あまり難しい言い回しをしない方がいいのですが、時々自分の文章が味気なくも思えます。
もう一つの悩みは、話の題材です。知り合いも読んでいますので、下手なことは書けません(笑)。実生活をどこまで『じゃれマガ』に書くべきか、悩みますね。多少それがないと面白味がないですが、かと言って毎日のように私生活について書くと、今度はドラマになってしまいます。ドラマのように面白くなればいいのですが、つまらないドラマになるかもしれませんから(笑)。また、学生の中に野球が嫌いな人がいるかもしれないのに立て続けに野球について書くのもよくありませんし、私自身が興味のある環境問題について書き続けても、これもまた嫌な人もいるわけです。
せっかく無料の媒体なので、どなたにでもどんどん読んでもらえれば嬉しいです。今後は『Catch a Wave』に音声も載せようと考えています。現在の週6日配信を週5日にして、その中で良かったと思う1つを選んで英語だけのPodcastとしてWEBに載せようかと。そうすると、リスニング教材としても使えます。始まった以上は、続きますし、どんどん発展させていきたいですね。