TOEFL Mail Magazine Vol.64
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生涯英語のすすめ For Lifelong English


様々な世代の人々が様々な場で、生涯を通して何らかの形で英語にかかわって仕事をしています。英語は人それぞれ、その場その場で違います。このシリーズでは、英語を使って活躍する方にお話を聞き、その人の生活にどう英語が根付いているかを皆さんにご紹介し、英語の魅力、生涯にわたる楽しさをお伝えしていきます。英語はこんなに楽しいもの、英語は一生つきあえるもの。ぜひ英語を好きになってください。
[For Lifelong English|生涯学習としての英語]バックナンバーはこちら>>

第7回
プロのオーケストラ打楽器奏者に聞く! その4
〜マレーシアで活躍するプロのパーカッショニストに聞く 音楽、多言語文化、英語のつながり〜

鈴木佑治先生

鈴木 佑治
慶應義塾大学環境情報学部教授  兼 
同大学大学院 政策・メディア研究科委員


今回のインタビュー

菊池清見さん菊池清見さん

マレーシアフィルハーモニー管弦楽団 Malaysian Philharmonic Orchestra(MPO) assistant principal timpani/percussion 副首席ティンパニ・打楽器 
現在首席打楽器代理

 マレーシアで唯一のプロのオーケストラ、マレーシアフィルハーモニー管弦楽団 Malaysian Philharmonic Orchestraで打楽器奏者であり主席代理としてもご活躍されている菊池清見さんのインタビューをお届けしています。
高校時代に交換留学生として米国に留学したのがきっかけで、マレーシアにてフロリダ州立大学の音楽科に進学し、その後かの有名な名門ジュリアード音楽院の大学院に進学し修士号をとるやプロとして活躍されています。その前向きなエネルギー溢れる人生に、英語はどのように関わっていたのでしょうか。音楽の才能を見い出され、英語を身につけ、そして多言語・多文化の環境を実に楽しんでいらっしゃる菊池さんのこれまでの経歴の中に、英語が上達するカギも隠されているような気がしてきました。

最終回となる今回は、マレーシアでの音楽普及活動や、英語と音楽との意外なつながりについてお話を伺いました。
★ ”その1”を読む ★  ★ ”その2”を読む ★  ★ ”その3”を読む ★

マレーシアにクラシックを普及する
鈴木 音楽の環境として、マレーシアはいかがですか。アジア的なレパートリーがあるとか。

菊池

それはあまりないです。ただ、オーケストラの醍醐味を知ってほしいということからできたオーケストラなので、一度もクラシック音楽を聴いたことがない人に喜んでもらうには、どういうふうに紹介したらよいだろうか、と工夫はします。入り込みやすいように中国の音楽を最初の曲に入れてみたりとか。
鈴木 どうやらマレーシアはニューカマーに優しい文化のようですね。クラシックというと日本では分かっている人だけが行く、という少し近寄りがたい雰囲気がある。僕もアメリカにいるとき野外音楽でクラシックを聴いて楽しかった思い出があります。こんなんだったらもっと聴きに行こうと思いました。
菊池 日本ではちょっと高くていい服着ていかなくちゃ、という感じですが、クラシックはもっと気軽に楽しんでいただけるものなのですよ。
鈴木 日本は英語も同じようにとっつきにくくしてしまっている。お話を伺っていると、マレーシアでは文化が混在しているところを活かして、異文化である西洋音楽に入りやすくしているようですね。菊池さんにとっての音楽は、僕の場合は英語です。僕は日本の英語教育を変えようと思っている。英語はもっと楽しいはず。実際使う場で好きなことでやればいいじゃない。だから僕は、いろんなことができる人が英語を教えたらいいと思うんですよ。今ようやくそういう英語空間になってきている。菊池さんは音楽全体について、日本はどうしていったらいいと思いますか?クラシック音楽はドイツあたりでも聴く人が少なくなってきているでしょう。
菊池 危機ですね。クラシック音楽全体として世界中で観客も減っているし、CDを買ってくれる人も減っているわけですから、先生がおっしゃったようにもっと気軽に来やすいホールにして、もう一回聴いてみたいという曲を選んで、と積極的な努力を私たちが続けていかなければいけないです。私は一昨年から音楽教室で4、5歳の子に教え始めました。しかし最初の両親の説明会で、「どういうディプロマ(認定書)がもらえますか」と聞かれてしまいました。子どもたちには、資格や試験ではなく、「あ、音楽って楽しいんだ」と気づいてもらえればいいと思っているのですが。みんなが音楽家にならなくても、おとなになって「ちょっとコンサートでも行ってみようかな」「ああ、あの頃の音楽教室は楽しかったな」なんて思ってくれれば、私のレッスンはそれでいいと思っています。
鈴木 人生にとって音を楽しむ、音楽を楽しむということは、人間の成長過程において非常に重要なことですね。残念なのは、日本の教育のなかで、音楽がちょっと軽視され始めていることです。これは将来経済的にも社会的にもいいとは思えない。音楽教育を変えないといけない。音楽は、人間を育てる重要な要素のひとつですから。
菊池 日本もアメリカも、中学・高校ではスポーツに力を入れていて、音楽は軽視されているような気がして。音楽家が変えていかないといけないですね。
鈴木 そう、そうですよ。ただ、フットボールのようなメジャーなスポーツが見事なぐらい商業主義に乗っちゃったのに比べて、音楽はどうだろう。音楽は医療なんかに役に立つ面があるようですが。
菊池 音楽のある人生って豊かだと思います。だからちょっと学校のときにやったりして音楽好きになると、その後ずっと豊かになれる。だから私は、音楽家になりたいという人を教えるより、子どもたちに音楽体験をいろいろさせてあげたいのです。そういうのは、まだマレーシアは発達していないので、それで始めました。子どもたちはかわいいですよ。
鈴木 僕は、日本の小学校の英語教育も、楽しい空間として英語を考えるといいと思っているんです。英語じゃなくたって他の言葉でもいいんです。楽しい空間が大切。言葉、体の動き、音楽の三つは、小学生にとって情緒性を豊かにする大切な要素でしょう。
菊池 音楽をやっていると耳がよくなるから、言葉の学習にも直結すると思います。

音楽教育と英語教育は隣り合わせ
鈴木 実は僕は最近ジャズのレッスンを受け始めました。それで初めてわかったことがある。アフリカ系アメリカ人の4ビートは、まさに英語学習に必要な要素だったのです。音声、音韻学ではこれを無視している、何で音楽っていう要素を入れなかったんだろう、と目からウロコでした。あるスタイルの英語はこの4ビートのリズムがベースになっている可能性があります。ジャズ的トークというか、それはフォーマルな英語とは違うリズムがベースになっている。僕の先生は日本人で、別に普通の英会話がすごくうまい人ではない。ところがジャズを英語で歌うと、すばらしい発音なのです。4ビートに乗るんですね、僕は到底4ビートに乗って歌えない。俳句で言えば字余りにみたいになってしまうのです。その先生によると英語が話せる人はよくそうなると言っていました。これはクラシックも同じだと思うんですよ。それにハッと気がつきました。

菊池

すごいです。大発見ですね。
鈴木 だから、小学生からやらないと大変だ、と思います。実は既にラップを使った英語の発音の方法論があるんです。ラップのリズムに乗れればラップの英語も分かりやすいはずです。
菊池 私にとって英語を学ぶことは、英語への扉を開けて、そのなかの異文化を経験することでした。音楽の仲間も増えたし、行動の幅も広がりました。マレーシアに行って、想像もしなかった人たちとコミュニケーションできるのも英語のお陰です。英語は、私の人生をすごく楽しく豊かなものにしてくれました。
鈴木 アメリカ人はとても寛容で、「英語は別に自分たちの持ち物じゃない、みんな参加してください、あなたが何を言いたいのか教えてください」という姿勢ですよね。だから発信しないと。
菊池 そうですね。日本語はどうやって言うか、"HOW"をすごく気にしてしまいますが、英語だと何を言うか、"WHAT"に集中できる。日本語みたいに複雑ではなくてすごくシンプルな言葉です。私自身、英語を話すことによって、自分のことをクリアに説明できるという発見がありました。
鈴木 おそらく英語が背景としている文化が、菊池さんを非常に活動的な人にしたんじゃないかな。だから才能を見出してくれる人が出てきたし、それに対して菊池さんも発信型になり、肯定的に対応した。打楽器奏者として、ますますの活躍を期待しています。

鈴木の一口コメント
菊池さんは、音楽の有能なプロでありながら、私のような素人の話をよくフォローして下さいました。打楽器が専門ですから、リズムについては色々な考えがあると思いますが、時間が無くて聞くことができず心残りです。幼児は、音によく反応します。特にリズムに敏感で、跳んだりはねたりします。幼少時に、色々な音楽や言葉に触れて、音やリズムに慣れ親しむことが大切です。4、5歳の子供たちに教えていたことがあるとのこと、音楽と言葉を一体化した面白い方法論があるかもしれません。これについてもう少し詳しく聞きたかったのですが、あっという間に時間が経ってしまい、聞くことができませんでした。しかし、菊池さんの話から、音を楽しむとは何か、すなわち、音楽とは何か、その原義に触れることができたと思います。今後のご活躍を切にお祈りいたします。

 

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