そうなんです。よう外国人の方が来はるので、英語しゃべれませんから”This is Nanzenji”, “This temple is too old.”, ”Heian shrine is too old.”とか、片言の英語で説明していました。京都は坂が多いし、また乗りたがる人は、なぜかごっつい人が多いんですよ。
“Hello, hello, isn’t eye doctor here? Isn’t eye doctor here?”
“Oh, yes, oh, yes, what can I do for you?”
“Yes, I have something wrong with my eyes! I cannot read a newspaper!”
“Oh, that is too bad. O.K., just a moment, Doctor! Doctor! We have a patient. Patient is here!”
・・・と、こんな感じでやっていくんです。
鈴木:
それ自分で考えたんですか?
林家:
いいえ、もともと「犬の目」という古典落語があって、それを英訳したものです。
鈴木:
なるほど。それでやっと教員の免許が取れたのですね。
林家:
はい。5年かかったのですが卒業証書も無事手にして、やっと親に出しました。
鈴木:
けじめはつけたのですね、ちゃんと。
● 染太さんの小噺 その1 ●
林家:ほんま、英語で色んな失敗ありますよ。この間カナダへ行った時は、バンクーバー空港で税関を通る時に、”What is your business ? What is your occupation?”て商売を聞かれたときに、落語家って何て言えばいいのか困るんですよ。とりあえずコメディアンだろうと”I am comedian”て言ったら、発音悪くて通じなくて、”You are CANADIAN?”て言われましたよ。”No,No,No,No,No, COMEDIAN.” 鈴木: 林家:前も飛行機乗った時に、”coffee or tea?”て聞かれて、僕はブラックが好きなんで、”Excuse me, I am AMERICAN.”って言っちゃったんですよ。そしたら、ものすごう笑われて。どう見ても日本人やのにって。 鈴木:
鈴木の一口コメント
英語で「落語」をすることは大変なチャレンジです。まず、「落語」ということばじたいをうまく表現できる英語のことばがありません。英語圏のcomedyとは大分違いますからrakugoということばをそのまま英語に投入するしかないでしょう。相撲文化が理解されてsumoということばが英語になりましたが、「落語」が理解されたらrakugoという語が英語に定着するでしょう。外国の税関で “I am a rakugo comedian.”と言えばすぐ分かってもらえるようにさせたいものです。染太さんはそこに挑戦しています。彼の持ち前の明るさと行動力をもってすれば多くの落語ファンが海外にもできるでしょう。かくいう私も少年時代からの落語ファンであり、アメリカン・コメディーのファンです。染太さんの人力車の話は、1970年代のスーパー・コメデイアン、Bill Cosbyの”Driving in San Francisco”を髣髴させてくれました。