ホーム
>
TOEFL®メールマガジン
>
第66号
>
ユーザー・レポート 教室からの声
■
今号目次
■
教室からの声
■
達セミに学べ
■
SELHi校の試行錯誤
■
HASSHIN!耳より情報
■
TOEFL® iBT対策のヒント
■
公式サイト お宝発掘隊
■
For Lifelong English
■
TOEFLテストトップページ
■
TOEFLテスト教材ショップ
■
TOEFL ITP テスト
■
Criterion
現在、諸外国の大学院においては国境を越えた教育の提供や、知識基盤社会化を見据えた改革が急速に進展しており、日本の大学院教育に対しても国際的通用性が問われようとしています。このような状況の中で、近年日本の大学院においても、国際的に通用する魅力ある大学院教育への改革が行われていますが、今回は筑波大学大学院生命環境科学研究科白岩教授に同研究科での取組みについてのお話を伺いました。
白岩 善博先生 プロフィール
1951年生。
現在、筑波大学大学院生命環境科学研究科 情報生物科学専攻 教授、情報生物科学専攻長および生物科学系長を兼務。
大学院共通科目準備委員長として、「人間力の養成」を掲げ「大学院共通科目」の立ち上げを主導。
新潟大学理学部、東京教育大学大学院理学研究科修士課程、東京大学大学院理学系研究科博士課程(理学博士取得)、東京大学応用微生物研究所研究生、日本学術振興会奨励研究員、新潟大学理学部生物学科助手、同助教授、筑波大学生物科学系教授を経て現職。この間、アレキサンダー・フォン・フンボルト財団研究員、文部省海外学術派遣研究員、日米科学技術協力事業派遣研究員、ミシガン州立大学客員研究員等としてドイツおよびUSA滞在を経験。
専門は植物代謝生理学。単細胞藻類および大型藻類の生理生化学的研究分野において、現在、微細藻類の光合成CO
2
固定・炭素代謝および環境応答、バイオミネラリゼーション、微量元素セレンの生理機能に関する研究に力を入れている。特に、CO
2
感知機構と海洋単細胞石灰藻(円石藻)によるCO
2
固定および炭酸カルシウム結晶構造体の形成機構について強い関心を持っている。
マリンバイオテクノロジー学会、日本植物生理学会、日本藻類学会、日本植物学会、米国植物生理学会等に所属。2006年にMarine Biotechnology (Springer) Editorial Board-Recognition Awardを受賞。
---
まず白岩先生が所属される生命環境科学研究科についてご説明いただけますでしょうか。
生命環境科学研究科は、地球と生命と環境に関わる生命環境科学の基礎、応用、そして文理融合型の学際分野まで、多様な分野で活躍できる研究者と高度職業人の養成を目的に設置され、地球と生命に関する広範な問題の解決に向けた研究を行っています。
地球温暖化、環境汚染、生物多様性の減少による多くの動植物の絶滅の危機、人口問題、食糧問題、水資源問題の深刻化、資源の枯渇など、非常に幅の広い分野の研究と教育を行っています。
私が所属する博士前期課程の生物科学専攻は3領域から成ります。多様性生物科学領域は生物進化の道筋の解明を目指す系統分類学や個体、集団、群集レベルに見られる現象の理解を目指す生態学などの分野、細胞生物科学領域は細胞内情報伝達ネットワークの解析から細胞間相互作用に基づく個体レベルでの生命現象の解明を目指す細胞学、発生学、生理学、遺伝学などの分野、そして分子生物科学領域は遺伝情報や分子間相互作用に基づく、分子レベルの普遍的な生命現象を研究対象にする分子生物学、遺伝情報学、代謝生理学などの分野を含みます。さらに、博士後期課程の情報生物科学専攻は、バクテリアから高等動植物にいたる様々な生物の生命活動について、遺伝子操作を含む最新の技術を最大限に活用しながら、分子間相互作用に基づく細胞内情報伝達のネットワークの解析や細胞間の相互作用に基づく個体レベルでの生命現象の基本原理の解明を網羅する、非常に幅の広い研究分野についての教育・研究活動を主要な目標としています。本専攻の学生指導の基本方針は、「国際的な競争を意識した最高水準の教育を実現する」ことです。そのため、独創性に富む研究で学会をリードし国際的にも通用する研究者や、高い問題解決能力を持った高度専門職業人を育成するための教育カリキュラムや教育体制の充実を行っています。尚、博士前期課程の多様性生物科学専攻の教員が主体となって、博士後期課程の構造生物科学専攻を構成しています。英語教育や基礎教育については、これら生物系3専攻(生物科学専攻、情報生物科学専攻、構造生物科学専攻)が協力してカリキュラムを運営しています。
--- 近年、大学院における英語力の重要性について良く耳にする機会がありますが、生命環境科学研究科ではいかがでしょうか。
生命科学の研究は国際性と英語力を抜きにはできません。最先端の生命科学の文献のほぼ全てが英語によって書かれており、それらを理解することができなければ基本的な研究情報のサーベイすら行うことができません。さらに、諸外国の優れた研究機関や研究者との交流、メールのやり取りもすべて英語で行っています。これは教員も大学院生も同じです。近年アジアの研究者や大学院生の英語力の向上には目を見張るものがあり、日本人学生達がもっともっと英語力を鍛えなければ、世界の潮流に置いて行かれる情勢となっています。また国際会議の公用語も英語です。研究発表はもちろん、その後の質疑応答も全て英語によって行われるため、英語でのプレゼンテーション能力に加えて、英語による高いコミュニケーション能力も要求されます。したがって、優れた研究成果をあげていても十分な英語力を持っていなければ、国際学会では正当な評価を得ることができません。日本人でもネイティヴと同等の英語力を備えた研究者もいますが、未だ十分な英語力が無い場合も多く、この点で損をしている日本人研究者、学生も多いと思います。そのため、私は学生の英語力の向上は必須であると考えています。ちなみに生命環境科学研究科においては、構造生物科学専攻と情報生物科学専攻の博士論文は英語のみに限定されており、それに加えて国際的な評価の高い科学ジャーナルへの掲載が博士論文提出の要件となっています。
--- 現在のTOEFL®テストITPのご利用についてお聞かせいただけますでしょうか。
現在、生命環境科学研究科の中の生物系3専攻(前期:生物科学専攻、後期:情報生物科学専攻、構造生物科学専攻)を対象にして、TOEFLテストITPを実施しています。テストの実施目的は大学院生の英語力向上、国際コミュニケーション能力の向上、研究ツールとしての英語力の向上などです。なお、生物系3専攻では平成16年度より、「英語教育」と「科学ジャーナリズム・サイエンスコミュニケーション講座」を基軸とした新たな大学院講義のカリキュラムを開始しており、その中でTOEFL講座も開講しています。また、科学ジャーナリズム・サイエンスコミュニケーション講座では、科学雑誌編集長やNHK解説委員を経験した科学メディエーターなど社会の第一線で実績のある方々にも講師を依頼し、学生に科学の知識を正しくかつ的確に他者や社会へと伝えることができる能力を身に付けさせています。なお、これらの講義は、受講する学生も多くまた授業評価も高いことから、十分成功しているカリキュラムと言えると思います。
--- 利用するテストとして、TOEFL®テストITPを選ばれた理由は何でしょうか。
現在の英語教育の目的は、英語論文の的確かつ迅速な理解、国際学会での研究発表や、論文執筆に役立つ英語力の養成です。科学の分野においては主に学術的な内容を扱うため、テストの内容・取り扱う課題などにおいてTOEFLテストが適していると考えています。また、修士もしくは博士の学位取得後留学を希望する学生もおりますので、その点も考慮してTOEFLテストを選択しました。
--- 今後の英語教育の取組みについてお聞かせいただけますでしょうか。
今までの一連の取組みによって、学生の英語力は確実に向上しています。学生が英語による会話に対して躊躇することが無くなってきており、積極的に英語でのコミュニケーションを行うようになっています。英語力の向上を実現するためには学生を動機付けることが重要だと考えています。私自身も国際学会など海外で英語を使う機会では苦労をしましたが、そのような実際の経験を通じて必要な英語力を身に付けてきたと思います。現在、国際的な学会への参加を奨励しており、国際学会へ参加する学生に対して経済的な援助を一部に与えています。そのことによって、国際学会に参加する学生も増えてきました。今後も国際学会発表や短期、長期の海外留学の支援を行うことで、学生が自ら進んで武者修行に出かけ、自己を磨くことができる体制を作り上げたいと考えています。
また、生物系3専攻では、大学院生の国際性、英語力およびコミュニケーション能力の涵養のために、アジア―オセアニア生物系大学院生ネットワーク(AsOBiNet)を2年前から立ち上げ、清華大学(中国)、カセサート大学(タイ)、ニューサウスウエルズ大学(UNSW)やモナッシュ大学(オーストラリア)との大学院生交流を実施しています。そのきっかけはユネスコアジア文化センターの大学生交流プログラムに採択していただいたことでしたが、その活動をさらに大学資金なども含めて継続し、学生のモチベーション向上に大きな成果を上げています。このような外向きの企画とTOEFL講座やTOEFL ITP試験による内向きの教育企画の両面を充実させることによって大学院生を鍛え上げていく計画です。大学院入学試験の外国語試験もTOEFLテストを含めた英語試験のスコア提出を要求することに代えています。その趣旨は、決して独自試験作成の労を減じることではなく、良いスコアを提出するために何回でもTOEFLテストなどを受験することによってそれが実質的なトレーニングとなり、それによって英語力が向上することを期待することにあります。
--- ありがとうございました。
バックナンバーを読む
トップへ戻る
上記は掲載時の情報です。予めご了承ください。 最新情報は関連のウェブページよりご確認ください。
© CIEE, 2008 All Rights Reserved.