今年の夏休みは、私にとって一生忘れることができない夏休みになりました。おそらく、私の勤めている都立戸山高等学校の1年生にとっても同じでしょう。
皆さんは、アメリカ・カーネギーメロン大学のランディ・パウシュ先生はご存知でしょうか。
バーチャル・リアリティの権威で「Alice」と呼ばれる学習システムを開発し、これからのさらなる活躍が期待されていた若き教授です。弱冠46歳の彼が、すい臓癌のため余命3〜6ヶ月と告知されたのは昨年8月。そして9月に行われたカーネギーメロン大学でのThe Last Lecture (最終講義)が話題を呼び、アメリカではYouTubeに600万余りのアクセスが殺到したといわれます。
最後の講義と仮定して行われたこの講義シリーズの中でも、ランディ先生の講義は、文字通り「最後の」授業となってしまいました。講義の内容は、「Really Achieving Your Childhood Dreams(子供のころからの夢を本当に実現するために)」といって、彼が子供のころに夢見たことをどのように実現してきたかを、ユーモアを織り交ぜて会場を埋め尽くした聴衆に語っています。その授業には、無限とも言えるほどの家族愛、特に子供たちに対する愛情があふれています。日本の子供たちにはもちろん、大人にもぜひ見て、聞いてもらいたい映像です。
私は、日本語の著書についている字幕付DVDを、2回の授業に分けて生徒たちに見せました。ユーモアのある語り口と映像に、生徒も飽きずに見入っていました。1分間に1度ぐらいは笑いが聞こえるので、なぜ聴衆が笑っているのかを考えるのも、ひとつの楽しみになるでしょう。
高校1年生を対象としたので、ところどころ画面を止めては、「今なんと言っていたか?」「この言葉の意味は○○だ」など解説を加えました。生徒たちは、約80分間の生きた英語に触れることができました。その後、210ページほどのペーパーバックである The Last Lecture を、夏休みの課題図書として課しました。その際、「ランディ先生にとって最後の夏となるだろうから、しっかり読み込んできてほしい」というメッセージを、生徒たちに熱く語りました。また、映像をもう一度見たい人には、YouTube上で見ることも可能だということも紹介しました。
夏休みに入ってすぐの7月25日(米国時間)、ランディ先生は愛する家族に看取られながら、天国に旅立っていきました。とっても残念無念です。しかし、宣告された期間よりも、半年以上も長生きしたのは、まさに家族のために生きたという証しを我々に見せてくれたのです。
今回の件でよくわかったことは、映像を見た後なら、やや難しめのペーパーバックでもスラスラ読めるということです。大好きな映画のDVDを借りてきて、最初は字幕付きで見て、その後にノベライゼーション(映画をもとに、書き下ろした書籍)のペーパーバックを、ときどき電子辞書を活用しながら読み進めるというのが、英語「楽」習のおすすめコースです! 訳本もそばに置くことを勧めます。きっと1か月に1冊ぐらいはいけると思います! 友人とDVDとペーパーバックを、毎月、交換すれば、お安く、しかも2倍楽しむことができますよ。Here we go!
◆ランディ・パウシュ先生HP(英語版)
◆ランディ・パウシュ先生HP(日本語版)
◆You Tube「ランディ・パウシュ 最後の授業」
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