このコーナーでは、今号からの新しい企画として、俳人 灯声こと中村忠男さんに、世界で最も短い詩の形といわれる「俳句」について、日本語・英語のバイリンガルで俳句の魅力・楽しさを解説いただきます。
中村さんは、日航財団の常務理事として勤められるかたわら、世界に発信する文化として日本語・英語両方での俳句作りに取り組まれています。毎月の中村さんの季節感あふれる一句と、季語や句への思いがどう英語になっていくのかを是非お楽しみいただくとともに、英語俳句にも挑戦してみてください。
灯声(中村 忠男氏)プロフィール
財団法人日航財団 常務理事
1950年生。東京大学法学部卒
1972年日本航空入
2007年より現職
ジョージタウン大学大学院国際関係修士(1978年)
俳誌「春月」同人
Fragrant plum blossoms on campus-
the boy turns back with a full smile
on the exam results day
(解説)
一緒に歩いている人が梅の香りに気付いて笑顔で振向いた、この句はそんなふうにも読めます。作者の意図は、梅の香りのするところで何か理由があって振向いたということなのですが(それで「や」という切れ字を使っています)。誰がなぜ笑顔で振向いたのか言っていませんが、この季節、何が思い浮かぶでしょうか。俳句は長さが限られているため、焦点を絞り言葉を削ります。ですから経験や感覚の違いで人によって解釈が異なります。それで俳句は作者と読者の共同作業といわれます。さすがに英訳ではそのままだと意味が通じないので、やむを得ず言葉を加えています。ただそれだけ説明的になってしまい余韻が減ります。翻訳の難しいところです。