NHK総合テレビの人気番組「英語でしゃべらナイト」。TOEFLメールマガジンではこれまで3回にわたり、番組プロデューサーの丸山俊一氏にお話を伺ってきました。今年3月に惜しまれつつも週1回の定期放映は終了しましたが、今後も新たな形で継続されていきます。この4月からの新番組制作の経緯や今後の展開など、丸山氏にその新しい動きについてインタビューしました。
丸山俊一氏
1962年松本市生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。甲府放送局、衛星放送局、制作局教養番組部ディレクター、文化福祉番組チーフ・プロデュサーなどを経て、現職。ディレクターとして、「特集エルミタージュ美術館」「新装ルーヴル美術館・まるごと大中継」など多くの美術番組を演出、構成。その他にNHKスペシャル「英語が会社にやってきた~ビジネスマンたちの試練~」など。その後、「英語でしゃべらナイト」「爆笑問題×東大・東大の教養」「爆笑問題のニッポンの教養」などをプロデュース。この4月からは、「ソクラテスの人事」なども担当。著書に「異化力!」(水高満との共著)など。
編集部:この3月で番組が終了しましたが、我々をはじめ残念に思っている方は多いのではないでしょうか。
丸山氏:実はここは強調したいのですが(笑)、確かに毎週の番組としてはひとまず終わりましたが、新しい展開で今後も3・4ヶ月に1回の特番という形で、エネルギーをためて、もう少し早い時間帯に皆さんにお届けしていく予定です。今までも公開収録を何回か実施していますが、一方的にスタジオで作っている番組ではなく、多くのお客さんを巻き込んで、1つのイベントを体験していただく形をベースに、多くのお客さんと一緒に英語や文化などを楽しむような双方向コミュニケーションを考えています。コミュニケーションということを追求した結果、視聴者の方々と一緒の空間を共有して成長していくスタイルの番組になろうとしています。
編集部:新たな展開ということですね。
丸山氏:はい。今、NHK自体も、公共放送ではなく、公共メディアという言い方を打ち出しています。実際に番組は放送だけでなく、様々な形でご覧いただけるようになっています。例えば、テレビだけではなくて、ワンセグ型の携帯で見る方や、特に僕らの番組ですと、ポッドキャスティング的な利用を希望される方もいらっしゃいます。「しゃべらナイト」もある種成熟した段階を迎えて、毎週の放送ではない、非放送系への展開も含めて色々な展開を考えていきたいと思っています。「主婦の友」社さんから出ている雑誌も続きますし、例えば、DVDなどで、名場面や総集編インタビューなどもいいかもしれませんね。「しゃべらナイト」はおかげさまで愛されて、非常に惜しんでくださる方が多いので、毎週でなくても何らかの形で今後も継続して違う演出で行きたいと思っています。
編集部:出演者の方々も淋しがっていらっしゃるのではないでしょうか?
丸山氏:ええ、先日打ち上げを盛大にやったのですけれど、やはり初期からのメンバーは特に感慨深く、最後は感動的な感じでした。卒業式みたいでしたね。でも矢嶋さんのように留年している人もいますので(笑)、やはりまだまだ番組は続けていかないと。押切さんは今後もご自身で勉強を続けていかれるでしょうし、また次にご登場されたときは、さらに上達したところをみせてくださると思います。青井君も…頑張るでしょう(笑)。
編集部:では新しい動きについて是非お聞かせください。NHK語学番組の今年のセールスポイントの1つとして「日本を英語で語りたい~コトバを学ぶことは文化を学ぶこと~」ということを上げていらっしゃいますね。
丸山氏:「しゃべらナイト」のスピンオフ番組として、1つには「Jブンガク」という5分のミニ番組が生まれました。「ケータイ世代が英語で読み解くポップな日本文学紹介」というキャッチフレーズを付けていますが、毎回5分で日本の文学作品の名作を一冊取り上げて、その一部を英語に訳し、海外の視点で日本文学をもう一回味わってみようという番組です。出演者は、東大教授、江戸文学が専門のロバート・キャンベルさん。「しゃべらナイト」で、「黒船シリーズ」と呼んでいた、日本を愛している外国の方ばかりが集まって日本文化について英語で語り合うという趣向のものがありましたが、その時も、非常に好評だった方です。そして依布サラサさん。作詞家でありシンガーでもあり、お父さんが井上陽水さんという、やはり面白いセンスをお持ちの国際化時代の日本の若者代表です。その二人の間で交わされる文学案内がちょっと変わった編成になっています。例えば一週目には、お二人に「学問のすゝめ」について語っていただき、翌週はキャンベルさんがこれを英語で一人語りで紹介するという構成です。
NHKというと古色蒼然とした雰囲気を想像されると思うのですが、今回は少しPOPな形でお見せすることになるでしょうね。キャンベルさんの場合のように、外国の方のほうが日本文化に精通しているというケースはもはや珍しくありませんが、ある種コスモポリタン的な視点で見たときに、日本文学とは何なのか?・・・日本人は独特な感性を持っているとよく言われますが、その表現の中に組み込まれている日本人の美意識のようなものを、あえてそれを英語に翻訳してみた時にどの様に表現されるのか、それともされないのか。そういうことがこのトークの中で見えてくると面白いなと思っています。「しゃべらナイト」ではパックンが「せつない」という表現は英語にはない、訳せないので状況を描写するしかない、と言っていましたが、まさに小説の中のそういった日本の情感のようなものを、どのように訳すのかということをきっかけにトークが展開されればいいなと思います。5分という短い時間なので小説の全貌が見えるわけではありませんが、ある一部分に関してのトークによって関心を持った方が実際にその本を読んでみたくなるというきっかけになれば、嬉しく思います。
こちらで見方を押し付けてしまうのではなくたまたま見てしまったがために、読んだり、考えたりするきっかけとなった、そういう番組作りを目指しています。ナレーションもクリス・ペプラーさんですのでこれも「しゃべらナイト」ファミリーですが、例によって、心地よい語りで番組に力を与えてくださっています。もちろん漫画やアニメも素晴らしいですけれど、それに付随して、その原点とも言うべき小説、評論、エッセイなどにも関心を持ってもらいたい。5分の積み重ねとは言え、それが10冊100冊となり、その英語バージョンは将来的に海外の放送局や国際放送で流してもらったりする。そんなかたちで、国際的な相互理解が進むことを願っています。
もうひとつ、「Jブンガク」が「語学番組」としては変化球だとしたら、真っ向ストレート勝負の、英語講座「コーパス100!で英会話」という10分間番組が新番組として始まります。これは、投野由紀夫先生で非常に人気だった「100語でスタート!英会話」というシリーズの続編、決定版とも言うべきもので、「100」という括りを、ポイントにしています。コーパス言語学という学問分野の裏づけを得て、使用頻度の高い表現を効率的に学べるプログラムです。欧米で実際に交わされている会話のデータベースを分析、リストアップして優先順位の高い基本的な動詞表現を徹底的にマスターすることに重点を置いています。
ほぼ100回の講座の中で日常会話の表現の85パーセントがカバー出来ると言われています。初心者の方や、運用能力に自信がない方にはうってつけです。 この10分という時間が視聴者のみなさんからも好評のようですね、ちょうどいいようです。本当に人間の集中力が続くのは、実は10分ぐらい、なのかもしれませんね。無理なく、忙しくて時間がないビジネスマンの方にも、焦点を絞った形で聞いていただければ嬉しいです。これは23時からの放送なので、ちょうど寝る前にほっと一息つく時に見ていただければと思っています。あ、でもその後も、Jブンガクや、様々な語学番組がありますのでまだまだ眠らないでいただいて(笑)。わずか10分ですが、ドラマ的なスキットやショートコントも入っていますので、楽しみながら学んでいただけるのではないかと思います。ミスターコーパス・投野由紀夫先生と福田萌さん、マシュー・まさる・バロンさんのトリオのコンビネーションも新鮮な風を生むことでしょう。
編集部:新番組を作っていく中で語学系の視聴者のニーズの変化などを感じることはあるのでしょうか。
丸山氏:そうですね。「しゃべらナイト」の初回特番が2001年、毎週放送の番組になったのは2003年です。足掛け約9年になりますから、この間の変化は肌で感じますね。実は、2000年に「しゃべらナイト」の前身とも言うべき番組がありまして。「英語が会社にやってきた」というNHKスペシャルです。日産とルノーが提携したことによって、日本人とフランス人が英語によるコミュニケーションで会議もしなければいけない、社内が英語化される、というので、あえて英語に焦点を絞って作った番組です。あの頃は海外から外国人の経営者がどんどんやってきて英語でしゃべらないと社内で生き残れないという切実感がありました。もちろん今は経済危機もあって、違った意味での切実感があるとは思いますが、「しゃべらナイト」的なものが普及したせいかどうか(笑)、番組の影響力が大きかったかどうかは分かりませんが、前よりは英語に対して強迫観念を持つ方が少なくなったのではないかと感じています。来日される外国人の方も実は日本語が好きで学びに来られる方も多く、日本人も英語を勉強しているわけですから、ちゃんぽんの会話だったり、場合によっては筆談をやってみるかとか、コミュニケーションという意味では、構えずに、前より自然になってきたように思いますね。その中でニーズとしては二極分化しているような気がします。仕事の上でも『優秀』な英語の使い手で、もっと高度で専門的に英語を求めている方と、それから、普通にコミュニケーションを楽しむレベルで英語に触れてみようという方と、両方のニーズがあるように見えます。
「しゃべらナイト」の新展開も、この1年はこの2つの方向に分けてテストしてみようという意図があります。1つは先ほどの専門性の高い方向性のもので、これはまだ予定ですが、秋口くらいに情報性を高めた「Tokyo News Remix」というタイトルで、英語で世界の情報を貪欲に収集している方々に向けた番組の開発です。もう1つはもっと素直に英語を楽しむ方向性で、肩のこらない気軽さで英語のコミュニケーションを楽しみ、味わう番組、公開収録なども織り交ぜて英語で触れ合うような番組です。この両方にトライしてみようと思っています。この9年の間に時代は確実に動いています。例えば原宿や青山など都内を歩いていると、英語だけでなく中国語あるいは韓国語、様々な言葉が聞こえてきます。そこで中国の方が道を聞くとき使うのは英語で、答える方も英語なんですね。さきほどの日産とルノーの場合と同様に、英語が母国語ではない者同士が、英語でコミュニケーションするような機会が増えてくる。つまり日本国内にいても、アジアなどから来る方々とコミュニケーションをはかるためには、ひとまず英語がツールになるので、そこからまた違った英語との接点がどんどん生まれてくるのではないだろうかと思うのです。それぞれがそれぞれの国の文化を背景に持ちながら、ぶつかり合い、出会いの中で新しいものが生まれてくるということがこれからどんどん増えてくるでしょうから、それを楽しむというのはとても大事だと思います。
例えば英語にちょっとその国の言葉が入っていたりすると、相手の方もその瞬間が嬉しいですし、表現自体を楽しむことが出来ますよね。私が仕事でフランスに行ったとき、例えばホテルなどでの会話のベースはどうしても英語になってしまいますが、何か一言だけでも会話の中にフランス語を入れるだけで、その瞬間ニヤリとやり取りを面白がってくれるということがあります。YesではなくD'accordと(笑)。あいづちひとつでも、母国語が混ざってくることで相手の方の表情もゆるみ、会話が楽しくなってくる。日産のゴーンさんを取材させていただいたときも、英語で話していても「Maruyama-san」とかさん付けで同僚を呼んでらっしゃいました。何気ない会話の瞬間ですけれど、その国の文化に敬意を払いつつ、より親しみも増します。そこに新しい表現が生まれてくる面白さというものもありますよね。
編集部:最近ではアカデミー賞受賞式やイスラエルでの村上春樹さんのスピーチなどがニュースで取り上げられ、日本人の英語というものを見る機会が多くあります。
丸山氏:そうですね。アカデミーでの本木雅弘さんの姿を見たら、メモを持ってでも、自分の言葉でそのスクリーンの中にある魅力をしっかり伝えたいという気持ちが伝わってきました。ああいうところにこそ、「しゃべらナイト」の精神があると思います。
丸山氏:英語の新しい部分で言うと、非常に大事なテーマとして、2011年に小学校英語が導入されます。それはきちんと考えていかなければならない課題です。それに向けても様々な議論がありますよね。日本語のベースが出来ていないうちに英語を教えることで日本語に悪影響を与えないかとご心配される向きもあります。また早期に取り組まなければ、アジア諸国に経済的にも負けてしまう、国益を損なう、という議論もあります。いかにして、日本語も英語もしっかりしたものとしていけるか、そうするための言語教育はどのような形にしていくべきか、単にプログラムという問題ではなく、日本人にとって英語をどうとらえるか、大げさに言えば、今後この国のかたちがどうあればよいのか、考える必要があります。そもそも、言語は何のために学ぶのかということにもつながると思いますが、言葉に付随している文化などもちゃんとふまえながら、どのように英語教育を捉えていくかは何年かけてもやるべきことだと思っています。もちろんNHKグループの中だけでは限界がありますので、大学や様々な研究機関と連携をとりながら、その問題について取り組んでいこうという動きを少しずつはじめています。教育という大きな問題は、それこそ最近ゆとり教育がたたかれていますが、5年10年単位で失敗すると大きく影響が出ますから、もし今度小学5年生がいい教わり方をしなかったためにその後10年くらいなかなかいい英語の使い手にならないということになると、それは国家的にも大変な損失です。どう付き合っていくのか、ということをきちんと議論をしながら、この機会に我々も番組を通して考えて行こうと思っています。番組にとどまらず、様々なところで利用していただけるいい教材が出来れば、ということも視野に入れています。
ただ教材、教育ものの面白いのは、逆説的なところがあって、人間が自主的に学ぶには、やはり自分から能動的に面白いと思ってやらないと身に付かないということです。小さな子どもがお母さんにやれと言われると、なんだか嫌になっちゃったという、そういうあまのじゃくなところがありますよね。それは、実はいくつになっても変わらないような気がします。そうなると、これを覚えるとためになるよ、役に立つよ、さぁ覚えなさいと言われると、真面目な人は別として、そうじゃない人はなかなか身に付かないのではないかと。それよりは、ほって置かれた時に、たまたま関心を持って自分から面白いなと思って手にするものは覚える。つまり、英語を目的とするよりも、むしろ英語を目的としていることを1回忘れるくらいの方が実は効果があるのではないか。それがたまたま楽しくて続けて行くという経験を重視すべきで、理想としては、英語の勉強法と言うよりは、楽しい経験を提供していて結果的に英語が残る、そんな風でありたい。「しゃべらナイト」も常にもそういうことを考えて、精神的な壁が壊れて、とにかく楽しんでもらえればという気持ちがベースにあります。子どもはよく言われるように吸収力がすごいですし、面白いことに耳に入ってきた音をそのまま口から出したり、繰り返したりする習性がある。だから、つい口ずさみたくなる、何度も繰り返したくなるっていうものがあれば、それは自然と身についてしまうと思いますし、そういう楽しい経験を共有していく手段としてテレビがあればと思います。
丸山氏:一方で確かにTOEFLテストなどのスコアを上げるためには、楽しむだけでなくがんばらなければいけない部分もあるでしょう。しかし実際に英語を使うコミュニケーションの場はテスト会場ではありません。むしろ間違うことによって愛嬌が生まれてそれでコミュニケーションがスムーズになることもあります。英語テストで高得点をとっても、それが本当のコミュニケーション能力とはイコールにならない、実際の仕事では違うとおっしゃる方が多い。これは何も英語に限ったことではないのかもしれませんけれど。
編集部:その点では、TOEFL iBTにもコミュニケーション能力を問う問題が入っています。例えばある人が言葉では明確に言っていないけれども、今どう思っているだろうかというようなニュアンスを汲み取ろうとする問題です。そういう部分は少なからず工夫はしているようです。
丸山氏:実はもうひとつ、それに近い問題意識でつくった番組があります。「ソクラテスの人事」という番組です。いま企業の入社試験が変わってきていて、ビジネス界では「地頭力(じあたまりょく)」という言葉が流行し、キーワードになっています。例えば「一日に新幹線の中で飲まれるコーヒーは何杯ですか」「今日本にゴルフボールはいくつありますか」「日本には電信柱が何本ありますか」という問題などなど・・・。これには絶対的な正解はないのですが、知識に頼るのではなく、いかに短時間で大まかな仮説を立ててある程度正解に近いであろう結論を出していくか、という対処力、その論理的思考力、発想力などを問おうとするものです。例えば先ほどの新幹線の問題だったら、新幹線に乗ったときに自分の車両で何杯くらい飲まれたかな、とおぼろげに思い出して、1日に新幹線は何本くらいあるかな、車両は何両かな、とそういったものを全部思い出して、与えられた数分間で大雑把に答えを導き出す。自分の経験値とそれを見立てで考えていく、そういうセンスが問われていて、今までのオーソドックスな試験や学力ではなかなか量れない力です。
このように先が見えない時代の中で新商品を開発するような人の発想というのは従来型の発想法ではないはずだというところから来ているのでしょう。番組では会社の人事担当の方何名かに採用側としてクイズを出題していただき、回答者には8人ほどタレントさんや大学の先生などに就職活動生気分でクイズに挑戦していただきました。もちろん皆さん就職活動も過ぎている立派な大人ですけれどもね(笑)。これは1度テスト版を昨年秋に放映したところおかげさまで好評で、この4月からレギュラー番組となりました。外資系企業などでこのような問題がとても増えていますから、TOEFLテストの受験者の方にも大いに関心のあることではないかと思います。
丸山氏:僕は「しゃべらナイト」も語学番組というよりは異文化コミュニケーション番組だと言っているのですが、何も海外の人と話すばかりではなくて、人が2人いればもう異文化コミュニケーションだと思うのですね。ゲストとして日産のゴーン社長をお招きした時、松本アナが「コミュニケーションの秘訣は何ですか?」と聞くと、「最終的には“Enjoy the Difference”に尽きる」とおっしゃったのが非常に印象的です。つまり人と人が出会えば、必ず重なる部分も違う部分もあるわけで、その時に違う部分を無理矢理自分の方に入れることも間違っていますし、逆に全部相手に入るのもおかしな話です。だから人と人が出会えば、重なる部分は共に楽しみ、違う部分は自分にはないものを持っていると敬意を払って認め、そのDifferenceを楽しむことだと思うのです。それができないと何をやっても辛くなってしまうのではないかと。やはりゴーンさん自身が色々な国々を行き来されてきた人生の中で、その都度Differenceを楽しまなかったらやっていけなかっただろうなと感じましたし、経験からくる重みも感じました。
今世の中の多くの方々がどうもシンプルな“Enjoy the Difference”ということを忘れがちで、違ったら気に入らないというふうになっているように思います。学生の方々を前にお話する機会も多いのですが、そこで会った学生たちも会社との関係性に悩んでいました。最初から過剰に自分探しをして、全部自分を受け入れてくれなければいけないと思いこんでいる。もっとその関係性を健全なところに持てばいいのではないかといろんな場面で思います。「KY(空気読めない)」という言葉ともつながっている気がしますけれど、過剰に期待せず、一緒でなければいけないという強迫観念を持ちすぎず、“Enjoy the Difference”を皆さんに思い出して欲しい。そういう姿勢で物事を考えられる人が増えてくれると嬉しい。友人関係でも恋愛関係でも親子関係でも、人は違えば違うほど面白いわけで、それをごく自然な距離感で当たり前として受け止める。そういう多様なコミュニケーションのあり方を、今後も「しゃべらナイト」や他の番組でも映像を通して伝えていければいいなと思っています。