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達セミに学ぶ 英語学習のヒント

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英語教師による英語教師のための情報シェアの場「達人セミナー」通称「達セミ」をご存知ですか。毎週のように自発的かつボランティアで全国各地にて開催され、それぞれの授業方法を公開しシェアしています。基本的には中学・高校の教師の方々が中心ですが、その授業には英語を楽しく学ぶヒントがたくさん隠されています。その中から毎号1名の先生にレポートしていただきます。

今回のヒントはこれ:

  • 英語落語で音読<楽>習

藤澤良行(ふじさわ よしゆき)先生
大阪樟蔭女子大学
藤澤良行(ふじさわ よしゆき)先生

まずは典型的小咄です。

A: Hey! That pigeon dropped something on your head.
(鳩が君のアタマに何か落としていったよ)
B: Oh, shit! 
(ふーん・・)
C: Exactly.
(そのとおり!)

「桂かい枝さんのホームページ」より)

落語は上下(かみしも)といって左右に首を振って語ることで人物を描き分ける芸事です。Aのセリフは右におよそ45度、次のBのセリフは左におよそ45度に(実際はもっと狭い場合もあります)首を振ってセリフを言うことになります。先に挙げた小咄の場合、体の動きと表情が必要になるのはBで、「え、なに?アタマ?」といぶかしがりながら、一度自分の頭を手で触ってみて、なにが落ちてきたのかを自分の目で確認してから “Oh, shit!”と発する必要があります。それに念を押す形で次のCのセリフを別の角度に首を振ってから言う。日本語の小咄だとBのセリフ「ふーん」で終わってしまう(返事の「ふーん」と鳩の「糞」のシャレ)のですが、英語ではCが “Exactly!”と念を押してオチを確認する方が笑いを取れるようです。ここで、単に同じ間合いでA→B→Cとしても面白みが出ないことはご想像の通りです。

最近英語を学習する上でリピーティングやシャドーイングなどの手法を用いた音読の大切さが強調されるようになりました。でもただ機械的に繰り返しているだけで今ひとつ何か乗り切れない方もいらっしゃるのではありませんか。

そこでお勧めなのが落語の手法を持ち込んだ英語音読です。つまり、ダイアローグ形式のスクリプトを読み上げ練習をする際に、落語のように上下をつけて、人物を描き分ける意識を持って音読練習をする、というのが今回の私からの提案です。この方式の良いところは、一人でできること。相手が必要ないので、いつでもどこでも自分のペースで練習できます。

英語落語の音読<楽>習に必要な素材といえば、いくつかの出版社から出ている落語の英訳本(ただし、多くはダイアローグだけのものではなく、読み物教材ですから注意が必要)で、オチがあって笑いが取れて楽しいのですが、ある意味スクリプトなら何でもOKとも言えます。いろんな配役になりきって、上下を振り分けた落語モードの音読練習に励んでみてください。もちろんTOEFL テストやTOEICテスト のモノローグやダイアローグでも有効です。

英語学習中の皆さんに試していただくのはもちろん、教育現場での検証はまだまだこれからなので、メルマガ読者の中の先生方にも授業でぜひお試し頂いて、その指導効果をお知らせいただければ幸いです。話自体の面白さ、楽しさと相まって、英語落語は学習方法としても特に中学生にお勧めです。グループ活動の総仕上げとして英語落語発表会を開いて、大勢の方に見てもらうこともぜひお考えください。盛り上がること請け合いです。

お後がよろしいようで・・・。

(*本稿を記すにあたり、本学の授業科目「英語実践研究:英語落語」をご担当の桂かい枝師、桂あさ吉師、北川千穂先生のご協力を賜りました。感謝申し上げます。)

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