TOEFL メールマガジン

留学経験者インタビュー

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留学経験者に留学のきっかけ、その国、その学校を選んだ理由、何を得てどう活かしているかなど実体験をインタビュー。今回は、アイルランドのダブリン県立大学に社会人留学した佐藤朗子さんにEメールでお話を伺いました。

佐藤 朗子さん 佐藤 朗子さん
大学卒業後、司法関係の事務所に就職
アイルランドの語学学校へ6ケ月留学
その後、ダブリン県立大学ツーリズムマーケティング学科へ社会人留学
2008年卒業 Enterprise Ireland就職
アイルランド人の夫、娘の3人家族、アイルランド在住
(写真:卒業式の日に娘とともに)

なぜ留学し、なぜアイルランド、その大学・その学部を選びましたか

大学卒業後に司法関係の事務所に6、7年ほど勤めていましたが、仕事上で英語を使うことは一切ありませんでしたし、ほとんど英語もしゃべれませんでした。しかし、語学として英語に興味があり、仕事をしながら語学学校に1週間に1度通っていました。そのうち雑誌等の留学経験談や、その語学学校の薦めもあって英語圏の国で6ヶ月の語学留学を決意しました。日本でアイルランド人の英語の先生に出会ったのも留学先を決めるのに大きな影響を与えました。まず語学学校でアイルランドに滞在していたので、現地の大学の情報が断然多く手に入り、社会人入学に必要だった推薦ももらいやすく、アイルランドの大学に進学することに決めました。大学入学の狙いは、新たな知識を得たいということと、ネイティブに混ざっての英語の勉強にありました。学問としてのツーリズムに興味があったので、その学科を抱えている大学の中から、ダブリン県立大学を選びました。大学を決めるにあたり、現地の人の意見や評判が参考になりました。

日本ではなぜ語学学校に週に1回通っていたのでしょうか

仕事の関係で数年住んでいた地方で、仕事以外の知り合いが少なかったため、人との交流を目的に近所のとてもカジュアルな英語教室に通いはじめ、初めて外国人の方々と接する機会を得ました。好きな時に教室に通うという方法だったのですが、なかなか時間を作ることができませんでした。数年後、地元の関西に戻ったときに大手の英語教室に週に1度強制的に時間を作って、決められた時間に通い始めました。仕事の都合で欠席が続くこともありましたが、勉強時間を作るという効果はありました。

その時出会ったアイルランド人の先生からはどんなお話を聞いて留学先に選びましたか

初めは、アイルランドの国の知識がほとんど無く、すべての話が新鮮でした。国がとても小さいことや、歴史的背景、文化、羊や牛の数のほうが人口より多いこと、(今は移民も多く、人口はどんどん増えています。)とにかく一面緑、夏も暑くない、外国人がとても少ない(今はとても多いです)、アイルランド内で日本人は見たことがない、などなど、ありとあらゆる話を聞きました。最初に留学を決めたときは大学進学は考えておらず、1年未満の語学留学で初めての海外ということで、頭の片隅には、勉強プラス長期の旅行といった感覚が捨て切れませんでした。そこで、行ったことの無い国を選ぼうという冒険心が勝ってアイルランドに決めました。

アイルランド人の話す英語は、アメリカ人の話す英語とかなり違うとも聞いて興味がわきましたが、同時に不安があったのも確かです。実際、アイルランドの英語は日本でよく耳にする英語と違います。最初は、知っているはずの単語でさえ聞き取れず、かなり戸惑いました。今は外国人が本当に多く、アイルランド人の英語より、外国なまりの英語がより多く飛び交っていますが、今のグローバルな時代、色々な英語が混ざり合って当たり前ですから、色々な英語に触れることも必要だと思っています。

半年の語学留学から、大学留学を決意したきっかけは何ですか

語学学校だけでは学びきれない英語があると実感したからです。ネイティブに混ざる必要があると思いました。仕事を通してでも英語に触れられますが、大学に身をおいて日々勉強となると、英語で読む文章の量も、聞く量も比べ物にならないくらい大量です。まさしく英語漬けの生活です。学士だと在学期間も長いですし、その分費用もかかりますから、決断するのにかなり迷いましたが、ツーリズムの修士に出願するにはその分野の基礎知識が乏しくてかなわず、再び学士のコースに出願しました。また、夜間コースは、Visaの関係上不可能で、昼間のFullTimeコースに行くことにしました。

TOEFLテストは利用しましたか

語学学校に通いTOEFLテスト用の特別のクラスを受け、テスト対策はしましたが、最終的には受けず、代わりに他の検定試験の結果を提出しました。私の場合は社会人入学ということもあって、英語力だけでなく、インタビューやエッセイなどもかなり重視されたため、例外的に受け入れられたのだと思います。

専攻のツーリズムは現職に活かされていますか

ツーリズムマーケティングのコースでは、もちろん一般的なマーケティングをツーリズム分野に絡ませて学んでいくのですが、マーケティングの一般的な知識をしっかりと身につけることができました。ビジネスコースではなく、ツーリズムマーケティングを選んだ理由は、アイルランドの代表的産業の一つであるツーリズムを学ぶことがこの国の成り立ちを知るいいチャンスになると思ったこと、そして、ツーリズムという分野を学問的に学ぶことに興味を持ったからです。

現職は、セクターを問わずアイルランドの様々な中小企業の海外進出をサポートするのが主な仕事で、日本での業務経験があることはもちろんのこと、在学中の証券会社勤務や、ホテル業界でのインターンシップ、大学で学んだ知識等の様々な分野の経験と知識が今の仕事で活かされていると思います。一つの分野でより深く経験を積んで専門知識があるのもとても大事なことだと思いますし、そういう意味で、一つのフィールドに留まっていない自分のやり方を疑問視したこともありましたが、探せばそれなりにその人に合った仕事があるものなんだと思いました。業種は問わず仕事を通して色々な能力が鍛えられていくと思います。アイルランドでは、転職は自分のキャリアアップとしてよくあることなので、転職しながらより自分に見合った仕事を探し続けるのはよくあることです。

学業以外での留学中のエピソードをお聞かせください

勉強をしにきたものの、息抜きは大切です。小さな国なので、大掛かりな旅行の日程をたてずとも気楽に一泊旅行であちらこちらに出かけられるのが魅力です。たくさんの一泊旅行を繰り返して、アイルランド内をたくさん旅行しました。アイルランドは大自然と隣接した小さな国で、少し車を走らせれば、あたりの景色は一面緑になります。その中に、カラフルなドアの小さな家が見えてきて、パブや教会があって、という具合に、あちこちに点在している小さなかわいい街をゆっくり通り抜けて、また緑のなかに吸い込まれていく、といったドライブルートは日本では味わえず、魅了されます。

(写真:Donegalの景色)

また、一度日本に帰ったらなかなかアイルランドには戻って来られないという思いから、学生生活の休みは長いものの、特に帰国計画は立てず夏休みのほとんどを仕事に当てました。勉強に忙しくてバイトができない時期が必ずあるので、夏休みの仕事は、そういったアルバイトができない時期のために蓄える、といった感じです。アイルランドの物価もうなぎのぼりで、アルバイトのために勉強ができないという状況を極力避けるため、いざという時の蓄えは必須でした。

語学学校内での英語と、一般のアイルランド人が大多数の大学内で飛び交う英語があまりにも違い、最初のうちはかなり戸惑いました。戸惑ったのはお互い様で、日本人の話す英語にも慣れていなかったクラスメートも最初は戸惑ったようでしたが、お互いすぐに慣れ、本当に色々と助けてもらいました。テスト最終日は日本食レストランとパブに行くのが恒例になるなど、異文化を生活に持ち込みお互いに良い刺激になっていたと思います。

お子様を連れての留学だったのでしょうか

在学中に妊娠がわかったので、1年産休を取り、次年度にまた大学に戻りました。たいした問題も無く、すんなりと受け入れてもらえました。多くの大学が職員や学生対象に一般より安い料金で託児所を提供していて便利です。子育てをしながらの勉強でしたが、周りも理解を示してくれ、皆に支えられ助けられながら無事卒業することができました。入学時に子供がいたとしても、子供の有無は、入学の選考には影響しないと思います。

語学学校時代の6カ月はどのような滞在方法でしたか

語学学校時代はホームステイでした。ホストファミリーとうまくいかなかったという留学生の話もよく聞きましたが、私はホストファミリーにとても良くしてもらい、感謝しています。私の滞在中に、2、3週間のショートステイの学生も代わる代わる色々な国から来ましたが、一般的に、自国の文化から抜け出せなかった人や、滞在費を払っているからと、多くのサービスを求めるような学生たちはホストファミリーと少し衝突していたように思います。ホームステイ業とは別にメインの仕事を持って日々の生活を送っている人たちと一緒に生活するので、お金を払っているお客さん感覚ではなく、家族の一員になったつもりで接すると、得られる経験にも深みが出てくると思います。私は、ありがたいことに、ホームステイだからこそのたくさんの貴重な経験をすることができました。小さな男の子二人と両親の4人家族でしたが、頻繁にお友達や親戚等が訪ねて来て賑やかでした。ホストファミリーの子供たちの学校行事に一緒に参加させてもらったり、日本とは全く違うクリスマスも経験できましたし、私の作った日本食(風)も、日本食が珍しく好評で、ご近所さんまでお裾分けしていたほどです。語学学校在学中は、学校ではレベルが様々な外国人のBroken Englishが飛び交う中、ホストファミリーは貴重なネイティブの話相手で、英語の勉強の面でも大変お世話になりました。ホストファミリーと一緒に生活しなければ、当時はアイルランド人の子供たちと接する機会もありませんでした。 小さかった男の子たちがすっかり大きくなった今も連絡を取り合っています。

(写真:語学学校時代にお世話になったホストファミリーと彼らのお友達)

大学入学後はどのような滞在方法でしたか

大学入学後は、ホストファミリーの家を出て、一軒の家を数人でシェアーしました。赤の他人と一つ屋根の下で住むことに、最初は少し戸惑いもありましたが、アイルランドではよくあることなので、経験してみることにしました。ホストファミリーを出たのは、そのころにはすでに友達もそこそこいて、家に呼んでパーティー等をしたかったのですが、子供のいるホストファミリーだとなかなかそういうわけにもいかず、もう少し自由な生活スタイルを求めていたからです。外国人との家のシェアーに戸惑う人たちもいましたが、広告を見て何軒かあたっているうちに、気の合いそうな良い人たちに出会い、一緒に住むことになりました。在学中、通勤、通学の関係で2軒ほど家を変えましたが、私が社会人学生だったこともあって、年齢のより近い社会人とのHouse Shareしかしていません。

一人暮らしも考えましたが、まず家賃が高すぎたのと、やはり外国生活で困ることが度々あったので、アイルランド人と一緒に住むことでとても助かりましたし、一人暮らしより楽しさも倍増です。

私ばかりが家の掃除・・・といった不満もありましたが、小さな不満に代わる楽しさや心強さはそれ以上です。良い経験になりました。

卒業後の就職はどのようにしましたか

卒業後、Enterprise Ireland という準政府の機関で仕事が見つかり、今はアイルランドの中小企業の日本への輸出をサポートする仕事に携わっています。将来的にも、今までの経験を生かしていきたいので、日本とアイルランドの双方に関わる仕事をしていけたらと思っています。

日本に帰国しての就職ではなくアイルランドで就職を決意された経緯をお聞かせください

私の場合は、卒業時にはすでにこちらで家族があり、アイルランド人の主人の仕事の都合もあり、卒業と同時に帰国というプランはなく、必然的にアイルランドでの就職活動となりました。日本だったとすると、大学のキャリアサービスが提供できる情報外のエリアとなってしまい、独自で就職活動することになりますが、アイルランド内での就職だと、大学のキャリアサービスや知り合いを通して様々な情報が入ってくるので便利でした。ただ、EU圏外の国の人たちが仕事に必要なWorking Visaを出してくれる会社を探すのは、正直なところ、とても難しいことです。私の所属している機関では、日本人の私をはじめ、数名の外国人がいますが、その国のネイティブが必要とされているポジションなので、Working Visaの発行は問題ありませんでした。(ちなみに私は配偶者と子供がいるのでVisaの種類は別です。)

留学したことによってどのような影響を受けましたか

年齢に関わらず、社会人になっても継続的に色々な勉強をしている人にたくさん会いました。また、社会人が勉強していく機会があちらこちらにたくさんあるので、自分の年齢を気にすることなく、また周りもそれを気にすることなく、のびのびと勉強できました。生涯を通して勉強し続けるという姿勢が学べたのは良かったと思います。また、様々な国の人たちと交流ができたことで、ぐっと視野が広がり、色々なことに対する適応能力が広がったと思います。

これから留学を考えている読者へのメッセージ

私自身の経験からして、社会人で長期留学をする機会を見極めるのはなかなか難しいと思いますが、留学を通して得るものはたくさんあります。自分への将来への投資だと思って一歩を踏み出してみてください。日本に興味のある外国の方たちの中には、何かに対して断片的ではあってもとても詳しい知識を持っている方がいたりして、驚かされました。日本人なのにというより、日本にいた日本人だからこそ気にならなかった事、あえて知ろうとしなかったというのは意外にあることです。留学は留学先の色々な知識を得ると同時に、日本の情報を発信するという異文化交流の意味も含まれていると思うので、頭の引き出しの少なくとも一つは日本の知識で埋めておいてはいかがでしょうか?

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