留学経験者に留学のきっかけ、その国、その学校を選んだ理由、何を得てどう活かしているかなど実体験をインタビュー。今回は、アメリカのワシントンDCにあるThe American Universityに留学中の大藪 裕さんに寄稿していただきました。
大藪 裕さん
今月号から3回に渡ってメールマガジンに連載させて頂く事になりました大藪裕です。これから留学を検討されている方、TOEFLテスト受験を志されている方などに少しでも参考になる留学経験談が提供できればと思っています。頑張って書こうと思いますので、どうぞよろしくお願いします!
大藪 裕さん留学経験談 その1「高校卒業前からアメリカ留学へ」
初めてお会いする方に、「なぜ高校卒業して、すぐ留学したの?」とか、「日本の大学に行こうと思わなかったの?」いう質問をよく頂きます。留学した理由を一言で言えば、「日本を外からの視点で眺めてみたかった。」ということです。自分がこの理由に行き当たるまでにはいくつかの経緯がありました。第一のきっかけとは医学部受験を諦めたことでした。高校1年生の頃は漠然と将来は医者になるという目標を掲げていたのですが、自分は数学が大の苦手。もっと肝が据わっていたのなら嫌でも勉強するのでしょうが、予備校に通うのがどんどん嫌になり、投げやりになっていました。そんな頃、もう一つ自分がやりたいと思っていたこと「留学」に心が揺れ始めたのです。
そのきっかけとなったのが、父の仕事の関係で小学6年生から中学1年生までの一年間、ジョージア州・アトランタに滞在した経験でした。アトランタでの生活の楽しさが忘れられず、「いつかは自分もアメリカで生活してみたい!」と思うようになっていました。現地ではアメリカサイズの大きな家に住み、通っていた日系インターナショナルスクールでは様々なバックグラウンドを持った友達と遊びました。アメリカに着いてまず感じたことは、みんながフレンドリー。近所の人達は会えばいつでも手を振って「ハーイ。」と挨拶してくれるし、見知らぬ人でも目が合えば微笑み返してくれる。そんなことがとっても新鮮に感じたのです。また、学校の友達も一人ひとり違うバックグラウンドを持っているので、みんな違って当たり前。人の目を気にせずに何でもできる。そんなアメリカの懐の深さを感じた一年間でした。
【Juniata Collegeキャンパス】
そんな一年間を過ごし帰国した後、将来は世界を飛び回ってみたい、特にアメリカにまた行きたいという思いが強くなっていきました。そんな時、高校の倫理と公民の授業がきっかけで国際関係学を学んでみたいと考えるようになりました。倫理では政治哲学の考え方を、公民では政治経済の仕組みを先生方が噛み砕いて教えて下さったのですが、そのフレームワークが当時の自分の中でもやもやとしていた日本とアメリカの相違性、また二国間の関係を上手く説明してくれたのです。思想が違えばそこから生まれる文化も違う、そして違う文化を持つ国同士がいかにして関係を気付くのか、それは政治と経済であるということに気付かされたのです。そしてその分野をもっと学んで、将来は日本と国際社会が建設的な関係を築くことに貢献できるような仕事に就きたいと思うようになり、それをひっくるめて学べるのが国際関係学だと考えたのです。
その国際関係学をどこで学ぶのか? 初めは日本の大学に進学してアメリカに交換留学や語学留学という形で行けたらいいなと考えていました。そんな考えを持って高校の進路指導室に相談に行ったのですが、それが大きな転機となりました。進路指導の先生に相談したところ、「そんなにアメリカに行きたいなら、アメリカの大学に行ったらどう? 国際関係学なら向こうの大学の方がずっと進んでいる分野だよ。」と想像もしていなかったアドバイスを頂いたのです。今考えれば、興味の無い教科は全然勉強しない自分を見て、「こいつは、このまま普通に進学させてもダメだ。」と思われてのアドバイスだったのかとも思いますが、結果としてそれがきっかけとなって留学を選びました。
進路指導室などから留学斡旋業者のパンフレットをもらい色々調べてみたのですが、業者に頼まなくても自分でできるのではないかと思い、自分で大学選びから出願までをやってみることにしました。College Boardというアメリカの大学教育委員会の大学一覧などの関連書籍やインターネットを使って、各大学の学部編成、人気学科や入学難易度などを自分なりに分析し、行きたい大学を絞り込みました。そこで気が付いたことは、自分が行きたい大学はワシントン、NY、ボストン、LAなど大都市の総合大学であることでした。しかし、これらの大学の入学難易度は比較的高く(TOEFLテストで600点以上の得点、留学生にもSAT受験の義務付けなど)、当初の自分のレベルでは入学が相当難しいことが分かったのです。当時、私のTOEFLテストの点数は480点程、とても人気のある大学に入れる点数ではありませんでした。そこで、英語力が十分でなくても英語の授業を受けることを条件に入学を許可してもらえる大学を探し、その中から国際関係学を学べるペンシルヴァニア州の大学に進学しました。
高校3年の2学期には進学先が決まり、高校のクラスメイト達が大学受験のため授業がなくなる高校3年の3学期からペンシルヴァニア州に渡り大学での授業を受け、高校の卒業式に1週間だけ、日本に一時帰国したのです。しかし、そこで生活をしてゆくうちに、自分が思い描いた留学生活と現実との差に気付き、語学力が不十分なまま留学をスタートしてしまった甘さを悔い始めました。まず、当時通っていた大学はかなり田舎にあり、実際の国際関係とは無縁と言える場所でした。また、生活と学業に刺激を感じず、あまり楽しむこともできないでいました。 そのような悩みを抱えていた時期に、ワシントンDCに行く機会がありました。ワシントンの大学はどんなところなのだろうと思い足を運んでみると、都会的でなんとも魅力的に感じたのです。悩みを抱えながら憧れの眼差しで見たワシントンは今の私が見るそれとは随分違うところもありますが、とにかく輝いて見えました。そして、ここで学生生活をしたい!!と思ったのです。色々考えた結果、一度当時の大学を辞めて日本に帰国、TOEFLテストとSATの勉強を一からやり直して再度大学を受験することにしました。そして、一年後には何とかTOEFLテストで600点越えを達成し、ワシントンDCの大学に入学することができました。
【Juniata Collegeの仲間たちと】
最後にTOEFLテストのスコアアップの方法について少し書こうと思います。当然、やり方は色々あると思います。参考書を使うのも良いでしょうし、予備校に行くのも効果的でしょう。まずは、自分に合った勉強方法を見つけ出すことがスコアアップの鍵になると思いますので、色々な方法を考えて試行錯誤してみる必要があると思います。といっても、私自身すべての方法を試した訳ではありませんので、自分にとって効果的だったと思う勉強方法をご紹介させて頂ければと思います。
まずは、リーディングとリスニングですが、私はある程度の基本的な語彙力と文法を身につけたあとは、とにかく問題数をこなすことを心がけました。やればやるだけ慣れてきますし、感覚的にテストの傾向もつかめてきます。色々な参考書や問題集がありますが、基本的な英語力を習得されている方には洋書の書籍をお勧めします。なぜかと言うと、まず英語で考える癖を付けるのが効果的だと思うからです。実際のテストではかなりの問題数を短時間でこなす必要があります(当然テストはすべて英語で出題されます)、その際に一々英語を日本語に訳していたのではいくら時間があっても足りません。高得点を出すためには、まず英語で考えることが必要です。もう一つ、洋書の書籍をお勧めする理由があります。それは問題数の多さです。日本語で解説が書いてある本は解説にかなりのスペースが割かれていますが、洋書の問題集はほぼ問題のみ。1000ページほどの本にぎっしり問題が詰まっています。それだけの量をこなせば、点数は自然と上がるはずです。
ただ、独学では点数を上げにくいなと思ったセクションがあります。それがライティングです。英語で小論文を書かなければならないわけですが、ただ英語で書けば良いわけではありません。英語には英語の論文の書き方があります。それに沿って書かれていない小論文はどんなに長いものを書いても減点されてしまうようです。このセクションについては予備校や大学の講座などを受講されると良いかと思います。私自身、プロの先生に教えて頂き点数がグンと上がりました。
私個人は問題数をこなし、正しい英語小論文を書けるようにすることで短期間で600点の大台を突破することができました。人それぞれ勉強の仕方は違うと思いますので色々試されると良いかと思いますが、少しでも参考にして頂ければ幸いです。来月号ではワシントンDCでの生活を中心に書かせて頂こうかと思っております。また、よろしくお願いします!