現在、大学院で教育心理学の博士課程に在籍中の男性から、今年9月にTOEFL iBTを初受験したという、体験レポートをご寄稿いただきました。これから受験する方はぜひご参考にしてください。また、TOEFLメールマガジンでは、体験談等のご寄稿を随時募集しています!
(はじめに)
はじめまして。あるご縁があってここにTOEFL iBTの受験体験記を書かせていただくことになりました。さて、どのような体験記を書くべきか考えましたが、今回は私のプロフィールとおおよその英語力を知っていただいたうえで実際にTOEFL iBTを受験してみてどのように感じ、今後どのような訓練、対策が必要であると考えたかということをお話したいと思います。本体験記は「受験にあたっての事務的な手続き」、「問題形式の詳しい解説」、「一般的な英語の勉強法」には触れません。理由は、そのようなことはすでに他の方が体験記で書いていらっしゃる、他の書籍やサイトで調べれば分かるからです。また、体験記としてより役に立つものとなるよう、あえて私の英語学習プロフィール、英語力に関する情報を提供したうえでお話ししたいと思います。私自身もせっかくですから当たり障りのない一般的なことで終わっては面白くないですし、またしっかりと自己紹介をしたうえで書かないと、読者の皆さんにとって勉強法やアドバイスがご自身の現状に当てはまるかどうかわからないと考えるからです。では早速英語学習プロフィール、英語力に関してご紹介いたします。
私は英語学習に関しては一般的な日本人であると考えています。英語を初めて勉強したのは中学1年生です。それ以来英語は得意教科ではありましたが、特別な経験があったわけではありません。大学は日本の大学の教育学部の教員養成課程英語専攻に入学しました。大学に入ってから本格的に英語の勉強をするようになり、将来は留学したいと考えるようになりました。念願がかなって、大学在学中に約10ヵ月間交換留学でアメリカに留学することができました。帰国後は、教師など、英語教育にかかわる仕事に従事してきました。そして約3年半前に大学院に入学し、教育心理学を専攻、現在は博士課程に在籍しています。
ところで実を言うと、今回(2009年9月)TOEFL iBTを受験するのは初めてでした。数年前大学生時代に、アメリカに留学するために受けた、当時のTOEFL CBTが最初で最後でした。確か227点(TOEFL iBTで80点台)でしたがもちろんスコアは失効です。ぜひ帰国後留学の成果を知るために受けておくべきだったと今からは思うのですが、受験料が高い、帰国後さしあたってTOEFL iBTが必要ではない、などの理由からTOEICや英検などの試験ばかりを受けていました。現在の私自身の英語力は、TOEICはほぼ900点台をキープ、英検は1級、ACTFL-OPI(英語スピーキング能力の試験)はAdvanced-lowを取得しています。仕事では英会話のレッスンを英語のみで行っています。研究では英語の論文を読みます。プライベートではアメリカのドラマ“FRIENDS”をよく観ますが、理解度は字幕なしで8~9割といったところです。
…とここまで書くと、「やっぱり一般的な日本人ではないのではないか」と思われるかもしれませんが、要するに言いたいことは、私の英語力の基礎は文法ルールに基づくものであり、決してネイティブやバイリンガルの方のように自然に身につけたわけではないということです。今でも何かを話したり書くときは、「仮定法過去完了だからwould+have+過去分詞だな」という風に意識します。易しい文であれば自然には出てくるように感じるときはありますが、それはあくまでも文法ルールにのっとって何度も練習し、場数を踏んできたから反応スピードが速くなったわけです。
以上簡単ではありますが自己紹介させていただきました。大体の私の英語プロフィールに関してイメージを持っていただければ幸いです。以降ではそんな私が実際にTOEFL iBTを受験してどのように感じ、今後何が必要であると考えたかということについて各セクションごとにお話したいと思います。その際、「現在の力を最大限に発揮するための話」と、「力そのものを高めていくための話」に分けてお話したいと思います。前者は文字通り、現在持てる力をいかにTOEFL iBTの問題形式に合わせて出し切るかということです。後者は長期的にTOEFL iBT受験にあたってどのように英語力をつけていくかということです。
ただ、その前にひとこと、TOEFL iBTは難しかったです。はっきり言ってできませんでした。
初めのセクションです。誓約書のサインやマイクの音量テストなどが終わると早速始まります。私が受験した時は合計3題で、初めの1題を20分、残りの2題をまとめて40分という配分でした。問題数や時間は変わることがあるようです。
ここでお伝えしたいこと、それは時間が足りない、これに尽きます。1題目はまずパッセージをすべてざっと読んでから問題を解こうとしましたが、今の私の速読力では非効率的でした。リーディングでは、1つのパッセージにつき14問ほど出題されますが、最後の1問以外はすべて単語や文、段落を読み取れば答えられるものです。しかも文章の順番に対応して問題も前から順番に出題されます。したがって問題を解きながら読み進めていけば全体の話は把握できます。最後の問題以外はこの方法で行くのがよいでしょう。最後の問題はパッセージ全体の要約を作る問題なので少し厄介ですが、私の現在の速読力ではもう一度読み返して答える時間はありません。したがって対策としては、それまでの問題を答える中でも、段落ごとに論旨をまとめながら読むのがよいと思います。ちょうどテキストのまとめノートを作っていく感じです。実際にメモ用紙も使えますから、時間と相談の上でメモに段落ごとにキーワードだけでも書き留めておくのもよいかもしれません。
まずは読む量を確保することだと思います。当たり前ですが大切です。読む題材はやはり英書の大学レベルのテキスト、学術雑誌などがいいと思います。ただ、自分の興味のある分野に偏ってしまいがちなので、TOEFLテストの問題集や模擬試験も併用したほうがいいと思います。読み方はまずは理解度が下がりすぎない、心地よいレベルを保って概要をつかむ速読と、じっくりと細部にこだわる精読を同じテキストで行っていくといいのではないでしょうか。その際わからない単語、表現があれば調べます。単語帳については、私だったら使ったり作ったりしません。ある程度色々な単語が出てきた時点でまとめたくなったときが一番モチベーション、学習効率が高い時だと思いますので、そんな時にノートにメモリーツリー方式で書いたりすることはやってみたいと思います。例えば、何度も “…logy”(~学)という単語に遭遇して、「この際一つこのタイプの単語をまとめておくか」という欲求に駆られたら、まとめるという感じです。
まず、試験時間がとても長い。全部で約1時間ほどでしょうか。私が経験した英語関連の試験では一番長いです。しかも、前半戦の最後なので集中力の持続も問題です。まずはそれを念頭に置いておく必要があります。
話される英語は以前と比べてより現実的な場面に近くなったと言えます。言い間違いや言い直しも反映されているし、学生の話す英語はアナウンサーの英語ではなく、本当に学生が話しているように感じます(単語の短縮形を頻繁に使ったり、語尾を上げて同意を求めるようなイントネーションを使う)。ただ、それでもそこまでスピードが速いわけではないですし、音質はクリアで受験者にとって最適な音量で聴けます。そう考えれば映画や実際の日常場面に比べれば聞き取りは楽です。試験を難しくしているのはそれよりもむしろ内容です。
内容ですが、大学での場面における会話と講義です。会話も3分ほど、講義は5分ほどの長さでした。ただしメモを取ることは許されています。したがって、いかに要点を効率的にメモできるかということが重要になってきます。他の試験のリスニングと違って、受動的に聞いているだけでは対応できません。積極的に、聞いたことを元に自分で内容を構成するつもりで聴く必要があります。
後は解答の際に紛らわしい選択肢を選ばないようにすることです。これはリーディングにも言えますが、TOEFL iBTでは明らかに違うとわかる選択肢が2つ、迷わせる選択肢が1つあるパターンが多いように思います。とくに実際に放送された単語を使ってもっともらしく言っているような選択肢は要注意です。リスニングの際は解答時間も制限時間がありますが、それほど短いわけではないので、迷ったらじっくりと選択肢に使われている単語の意味を捉えて解答するなど、時間配分のテクニックも必要になるかと思います。
やはりできないときはその単語・表現を知らないということが大きな原因です。私の場合は、聞いてわからないものは音の変化についていけないとか、速すぎるからではなく、使われた英語そのものを知らないからなので、その意味ではリーディング力の養成と同じ原理で高めていけるような気がします(ちなみに映画などでは速すぎるとか、音の変化がわからないということがまだあります。英語の字幕をみると「なーんだ、こう言ってたんだ」ということはしょっちゅうです)。ただ、リーディングとの大きな違いは前に戻ることができないという点です。ですので、リーディング対策と同様の方法に加えて、講義などのまとまった量の英語を聞いてうまくメモにまとめる練習が大切だと思います。題材を手に入れるのが大変ですが、ぜひ実行していきたいものです。
余談ですが、リスニングが終わるとスピーキングの前に10分休憩があります。この10分間は結構重要で、水分補給、簡単な食事(おにぎりなど)、ストレッチをやっておくべきです。なにしろこの時点で2時間もぶっ続けですし、午前からの受験であれば、ここで水分・食事を取っておかないと午後2~3時くらいまで飲まず食わずです。
さて本題に戻ります。スピーキングは難しいです。自分の経験に基づいてあるテーマについて話す、パッセージを読んだ上で会話や講義を聴いて質問に答える、講義を聴いて質問に答えるというパターンからなります。書籍にはパッセージを音読するように求められることもあるとのことですが、私の場合はありませんでした。どのタスクも準備時間が15~30秒与えられたのち、45~60秒話さなければなりません。
どのように取り組むかということですが、ほとんどライティングと同様と考えたほうが良さそうです。求められる発話は意見を述べる、内容を要約するというものですので、つらつらとまとまりなく話すわけにはいけません。時間制限もありますので、言いたいことが言いきれないうちに時間切れということにもなりかねません。したがって、例えば「私の意見は~である」→「一つ目の理由は~である」、「二つ目の理由は~である」というような方法を身につけるのが最良であると考えられます。これはかなり徹底的に練習することによって上達するのではないでしょうか。対策としてはライティングにかなり近いと考えてよいかもしれません。
上に書いたように、型に沿って構成する練習が必要なのは言うまでもありません。題材としては、経験に基づいて話すタスクの練習であればTOEFL iBTのライティングのトピックが、質問に答えるタスクであれば、リスニング(講義)やリーディングの質問に対して選択肢を見ずに自分の力で答えたり、リーディングのパッセージを読んだ後に口頭でまとめてみるのもいいかもしれません。
そこで問題になるのが、ぱっとすらすらと口から言いたいことが出てこないということです。それにはやはりシャドーイングが一番いいと思います。題材はTOEFL iBTのリスニングがよいと思います。私はよく電車や自転車に乗りながら「口パク」でやっています。
テストの最後はいよいよライティングです。TOEFL iBTでは2題出題されます。一つは、まずパッセージを読み、そのあとそれに関連した講義を聴き、それらの内容に関する質問(要約)に答えるというものです。もう一つは従来通りの、あるトピックに関して経験や知識を元にエッセイを書くというものです。
前者に関しては、要するに読み取り、聞き取りがうまくできないとできませんので、当然リーディング、リスニングの力が大切になってきます。リーディングは書くときも読むことができるのでいいのですが、リスニングは放送が終わると2度と聞くことができないので、しっかりとメモを取ることが重要です。ポイントは<Listening>で述べたことと同じです。
この問題では、パッセージもリスニングの放送も割と理路整然と論を進めてくれますので、リスニングの聞き取りがうまくいけば何をどう書けばいいのかは割と明瞭かと思います。構造もパッセージやリスニングと同様に(例えば理由を3つ述べていたら同じようにそう書く)書くのがいいでしょう。
後者のエッセイは基本的にTOEFL CBTのときと同じです。しっかりと構造(Introduction-Body-Conclusion)を組み立て、お決まりの表現を使って書いていけばよいでしょう。
どちらのタイプにも言えますが、制限時間がありますので、すべての段落の骨格となるトピックセンテンスを書いてから肉付けするようにするとよいでしょう。肉付けの部分は時間切れのために書けなくてもダメージはそれほど大きくありませんが、最後の段落が途中で終わった、結論が書けなかった、などとなればダメージは計りしれません。
基本的にはスピーキングと同様に問題形式を意識して練習し、型を身につけることを目指すとよいでしょう。問題集の模範解答は大変参考になります。ただ、ライティングの練習は意識しないと量をこなせませんので工夫が必要です。日記やブログを書くというのも一考に値すると思います(私もまだやっていませんが)。後は、よほど恵まれた環境にいない限り、自分の書いたものを添削してもらえることはないと思いますので、見てもらうことは無理だと割り切って、模範解答など良いものに触れることと、量を書くことに集中したほうが良さそうです。
(最後に)
やはりTOEFL iBTは大変です。おそらく、英語の試験の中では受験を決意するのに最もエネルギーを要するものの一つだと思います。それでもやはり受験を、できれば定期的にしたほうがいいと思いました。
理由は、一つは自分の力を知ることができるからです。4時間余りというのは英語の試験の中では最長級だと思います。それだけ受験者の英語力を総合的かつ正確に測ろうとしているといえます。今これを書いている現時点ではまだスコアはわかりませんが、良くても悪くてもスコアが返ってくるのが楽しみです。
もう一つの理由は、TOEFL iBTを受験すること自体がかなり濃密な勉強になるからです。私自身も初めて受験し、このような体験記を書けるだけの体感や今後の課題への気づきを得ました。今後何をするべきかということもはっきりし、英語学習に対するモチベーションもかなりアップしたことを実感しています。TOEFL iBTに限らず、この手の試験はどうしても勉強してから受けようと構えがちですが、まずは受けてみることそれ自体が最大の勉強であると思います。4時間余りとなると、自宅で時間を取って模擬テストを解いてみようという気にも、なかなかなりませんよね。やはり本番を受けることには大きな価値があると思います。そういう意味では私もここ数年間TOEFL iBTを敬遠していたことが悔やまれます。
はじめに書いたとおり、この体験記では私の英語プロフィールを紹介し、実際に受験して感じたこと、考えたことを記しました。これから英語を本格的に始めようと考えている方、ずっと海外で生活されてきた方など、私のプロフィールとは合致しない方も読者の皆さんにはいらっしゃるとは思いますが、少しでも私の体験記がみなさんのお役にたつことを願ってやみません。