TOEFLテスト日本事務局のCIEEでは、グローバルな視野を持つ人材育成を推進するために、「海外体験事業」も行っています。このコーナーでは、そのプログラムをご紹介することによって様々な形での海外体験・国際交流のあり方や意味、受けた影響などについてお伝えしていきます。
記念すべき第1回にご紹介するのは、教職員を対象とした海外派遣研修です。このプログラムは、1968年開始以来、42年にわたり、ご参加いただいた先生方は1万名にのぼります。小学校教員、英語教員、全ての教科担当教員と対象別にさまざまな研修コースがあります。
例えば、英語力アップ、教育現場・小学校外国語活動・青少年育成に役立つ指導法の習得、世界の英語教員と学ぶ教授法など、時代のニーズに答える多彩な企画で、たくさんの先生方から、夏休み中の自己研鑽の機会としてご活用いただいています。
この夏に実施した研修では、アメリカの地元の小学校を訪問し、クラス担任を補佐しながら教育実習を行う研修を新たに開設し、「アメリカの授業、学級経営を経験し、自分でも授業を行い、実際に研修地に赴き、体験しなければ学び得ない本物の体験になった。」と高く評価されました。参加者の先生の生の声をお届けします。
2003年に英会話学校に通っていた時に知り合った教員から紹介を受けました。2004年に初めて研修に参加して以来、過去3回参加し、今回が4回目となります。学校や家庭状況が許せば、毎年夏休みには何らかの海外研修に参加したいと思っています。
【学校外壁】
過去、数回参加していましたので、特に障害になることはありませんでした。応募手続きもわかりやすかったです。以前は参加申込の提出書類の中で推薦状が義務付けられていましたが、推薦状が必須でなくなったこともあり、手続きが簡単になったと思います。
夏休み5日と年休5日を合わせて合計10日間取りました。
学校では夏休み中、プール指導、補習、地域行事、部活動、合宿、学年登校日などがあるのですが、今年に関しては何とかやり繰りし、他の教員に負担をかけることなく参加できました。
過去数回参加しているので、一般的な準備、健康管理、手続きなどは心配していなかったのですが、過去の大学における研修とは違い、今回の研修は小学校でのインターンシップ・教育実習ということで、期待もしていた反面、不安もありました。一例を挙げますと、一緒に参加する教員間のコミュニケーションです。参加者同士でメールアドレスの交換はできないかどうかCIEEに相談しました。そして互いに趣旨を理解し了解を得られましたので、メールアドレスを交換し何度か連絡を取りました。簡単な自己紹介から始め、少しうち解けてきたところで参加の動機や普段の勤務先の様子なども自発的に伝えました。
その他は、教員としてのインターンシップは、今まで自分が参加した大学にて実施される短期研修に参加するのとは全く違うという認識がありました。現地の子供を相手にしての責任が伴いますし、自分の英語力、教師としての指導力、互いに面識のない日本人の同行教員の考え方のすりあわせ、現地の校長先生はじめ、直接お世話になる学年や学級の先生の人柄やルールなど、楽しみでもありましたが、不安でもありました。又、私の場合は、校長先生の家にホームステイすることになったので、うまくいけば24時間最高の時を過ごせると思いましたが、もしかみ合わないと逃げ場のない24時間を過ごすことになるため、不安でした。
先ずは参加教員間で情報交換を行い、現地とのやりとりはメールを使って現地コーディネーター、校長先生、学年主任の教員と情報交換をしました。電車やバスなどの公共交通機関は整っていないこと、ノートパソコンを持ち込めば使えること、教会に行くときはスーツが必要なこと、日本から持ち込もうと思っている教材(百ます計算、数独、皆既日食の新聞記事、日本の地図帳、折り紙の本、国歌や文部科学省唱歌のCDなど)のこと、算数や理科の授業で核となる教材について日米それぞれの現状を聞きながら工夫していきたいことなど、自由にやりとりができてよかったと思いました。
生活用品などについては、何度か参加しているのでいつも通りの準備をしました。
小学校の生活時程に沿って2週間生活しました。朝7:30頃、校長先生の車に同乗して出勤しました。生徒たちは8時頃登校し、校庭で少し遊んでいました。そして8:20頃に開門して児童が一斉に教室に入ってきます。20分程度、モーニング・スターターと呼んでいましたが、出席確認、宿題や提出物の確認、読書や計算などその日のウォーミングアップとしての学習を行います。驚いたこととして、ランチは日本ではメニューが決まっていますが、研修校ではランチを2種類のメニューから選ぶことができ、朝のうちに選んでおきます。午前中は60分×2と40分×1の授業、11:40~12:20ランチルームでランチ(学年ごとに時間差でランチルームを使用)、午後は40分×2の授業、休憩や軽い運動、補習や復習、15:20頃に解散です。授業は日本と変わりないのですが、1クラスは約25名で、英語(国語)と算数には時間をかけて授業を行っていました。生徒の中には英語が話せない子供もいましたので、英語(国語)がベースになっているということだと思います。英語と算数が中心でその他、理科や社会が少しずつあり、音楽や美術などはまったくありませんでした。生徒指導は非常にきめ細かかったです。様々なバックグラウンドを持った生徒が多いので、個別指導が必要になるのだと思います。
【ランチカウント】
研修校は小学校ですが、私は中学校の教員ですので、年齢が一番近い6年生クラスを担当しました。6年生位になると教科の専門性が強くなるため、教科担任制の授業があり、様々な先生やクラスに付いて指導を行いました。私の場合は、てこの原理、算数など担当教科の授業を21時間行いました。6年生は3クラスでローテーション授業(教科担任制のようなもの)を行っているので、授業内容としては21時間といっても7時間分です。それ以外にも、個別指導や部分的な授業(日本語、日本紹介、折り紙など20分程度のトピックスを数回)を行っています。現地教員は教室に同席し、私の英語では十分理解できない子どもに補助をしてくれました。
授業が終わると私は、校長先生の車で帰るため、荷物整理や翌日の教材の準備をして、図書室で16:30頃まで過ごしました。現地教員の一員となったような気分で非常に充実した毎日でした。一方が一方のために尽くす関係ではなく、相互に相手を尊重し児童のためになる授業を模索・試行・創造することができました。
【郊外の池】
ユタ州サンディー市郊外のウエストジョーダン地区にある小学校で研修を行いました。この地域の学校の特徴は、TRACKとよばれるシステムです。6年生は4学級ありますが教室は3学級分しかありません。3週間たつと1つのクラスが3週間の休みに入り、休んでいた別のクラスが戻ってきます。年間約180日の授業日がありますが、7月は全校で休みになります。そのほかの期間は交代で1つのクラスが休んでいます。あるクラスは夏休みを長くとり、別のクラスはクリスマスを長くとり、別のクラスは春か秋にゆっくりできます。学校の施設は年間を通して稼働率が上がりますし、保護者の仕事や休暇の取り方と学校のスケジュールを合わせれば、家族で過ごす時間を有効に使えます。日本では運動会や学芸会・文化祭などの学校行事は全校でそろえなければいけないので、こうした発想そのものがないのかもしれません。又、この地域は新興住宅地で子供が増えており校舎の改築が追い付かないこともこのシステムを取り入れた要因の1つだそうです。クラス間の授業の進度調整や季節に左右される内容の授業(例えば、植物、天体などの授業など)が気になりましたが、基本的には英語と算数に時間を使っていて、日本のように教科ごとのカリキュラムが厳密ではないので、やりくりできているようです。このおかげで私たちは日本の夏休みである8月に現地校でインターンシップを体験できたのだと思います。また、現地教員は授業が休みの期間を利用し、研修として別の学校の研究授業などを参観できるので好評のようです。
【教室】
私は過去4回研修に参加していますが、ホームステイが好きで参加しているようなものです。出発前は不安でしたが、全く問題はありませんでした。とても良いファミリーで24時間楽しく過ごせたのもホストファミリーのお陰だと思い感謝しております。地域柄モルモン教の生活習慣があるので、お酒、たばこ、コーヒーなどがお好きな方で、参加を考えている方は、事前に理解しておいた方がよいと思います。
【テンプルスクエア】
得たものは沢山ありますが、内面的に自分の中で気持ちの整理ができたり、自分の考え方について自信が持てたり、すっきりしました。日本とアメリカでは社会や文化も違いますので、現地で学んだことをそのまま日本に持ち込むことはできないと思いますが、その点はゆっくり自分の中で整理しながら、小出しにしているのが現状です。また、日本では給食指導から清掃指導、音楽、図工、プール指導、部活動、地域行事など学校にとっぷり浸かっていますが、現地では勉強を教えることに専念できて楽しかったです。
私はもう一度、このインターンシップに参加して今回お世話になった小学校に行ってみたいです。今回参加して現地事情がわかりましたので、事前の準備を充分に行いもっと良い授業を行いたいです。
【校庭】
私は過去数回参加し、今回はインターンシップの研修でしたが、もし初めて海外で研修を受けたいと考えている方は、大学での研修で、もし休みが取れるのであれば機関は2週間、滞在方法はホームステイをお奨めします。その理由は大学での研修は私が今回参加した小学校での研修とは違い、学生に戻ったつもりで、ある程度受身でも良いと思います。2週間の研修は間に週末が1回あります。海外に行って週末の過ごし方を体験するのは大事なことだと思います。私が参加したインターンシップのコースに参加を考えている方は、現地では何でも経験して、郷に入ったら郷に従う気持ちが必要だと思います。やりがいもありますが、同時に責任感も必要な研修です。協調性や適応能力が求められますが、研修を通して現地の教育に興味を持ち、そこに勤めているような気分で2週間を過ごす気持ちを持てれば、きっとうまくいくと思います。是非、勇気を持って参加してもらいたいと思います。
■「教職員海外派遣研修」の詳細はこちら
月/日 | 場所 | 現地時間 | 日程 | |
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1 | 8/2 (日) | 成田 | 13:25 | 成田空港に集合 |
16:25 | 成田発(NW020)。空路にてソルトレイクシティーへ | |||
ミネアポリス | (ミネアポリス経由) | |||
13:20 | ミネアポリス空港にて、乗り継ぎ手続き | |||
16:55 | ミネアポリス空港発(NW1081) | |||
ソルトレイクシティー | 18:49 | ソルトレイクシティー到着、ホストファミリーが空港に出迎え、ホストファミリー宅へ | ||
サンディー | (サンディー泊) | |||
2 ~ 6 |
8/3 (月) ~ 8/7 (金) |
サンディー | 午前 | 教育実習(現地教員の授業アシスト、授業担当等) |
午後 | 教育実習(現地教員の授業アシスト、授業担当等) | |||
(サンディー泊) | ||||
7 | 8/8 (土) | サンディー | 終日 | 自由行動 |
(サンディー泊) | ||||
8 | 8/9 (日) | サンディー | 終日 | 自由行動 |
(サンディー泊) | ||||
9 ~ 13 |
8/10 (月) ~ 8/14 (金) |
サンディー | 午前 | 教育実習(現地教員の授業アシスト、授業担当等) |
午後 | 教育実習(現地教員の授業アシスト、授業担当等) | |||
(サンディー泊) | ||||
14 | 8/15 (土) | サンディー | ホストファミリーの車にて空港へ移動。 | |
ソルトレイクシティー | 13:35 | 成田発(NW009)。空路にて成田空港へ(直行便) | ||
ミネアポリス | (機中泊) | |||
15 | 8/16 (日) | 成田 | 16:25 | 成田空港到着、入国手続後解散 |