このコーナーでは俳人 灯声こと中村忠男さんに、世界で最も短い詩の形といわれる「俳句」について、日本語・英語のバイリンガルで俳句の魅力・楽しさを解説いただきます。
中村さんは、世界に発信する文化として日本語・英語両方での俳句作りに取り組まれています。季節感あふれる一句と、季語や句への思いがどう英語になっていくのかを是非お楽しみください。
灯声(中村 忠男氏)プロフィール
1950年生 東京大学法学部卒
1972年 日本航空入社
1978年 ジョージタウン大学大学院国際関係修士
2006年~2010年 日航財団常務理事として俳句事業などに携わる
俳誌「春月」同人
国際俳句交流協会(Haiku International Association)会員
Sherbet-like snow
strewn on the hood
a mischief of spring
(解説)
「春の雪」は季語です。すぐ溶けて消えていく淡雪(これも同じく春の季語)ですが、立春の後の2月とか3月に意外に大雪となることもあります。この句は本当の淡雪。車のボンネット(bonnet)にちょっとだけ溶けかかった雪が積もっている様子を「いたづらほどの」と表現したものですが、この英訳が一工夫でした。子供のいたずらと訳したいところですが、つまらなくなりますので詩情を優先して訳のようにしました。なおbonnetはイギリス英語、米語ではhoodです。「いたづら」は文語表記です。