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ビジネスパーソンのための 実践!英語でしゃべらナイト

NHKの人気番組「英語でしゃべらナイト」がまったく新しい形でスタートをきります!来月1日から始まる、新講座番組「ビジネスパーソンのための 実践!英語でしゃべらナイト」です。TOEFLメールマガジンではこれまでに4回、番組プロデューサーの丸山俊一氏にお話を伺ってきました。今回は、新番組の内容や見どころなど、放映開始に先駆けてインタビューしました。

丸山俊一 氏

丸山俊一 氏
NHKエデュケーショナル 語学部 専任部長
特集文化部 部長プロデューサー
1962年松本市生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。
甲府放送局、衛星放送局、制作局教養番組部ディレクター、文化福祉番組チーフ・プロデューサーなどを経て、現職。
ディレクターとして、「特集エルミタージュ美術館」「新装ルーヴル美術館・まるごと大中継」など多くの美術番組を演出、構成。その他にNHKスペシャル「英語が会社にやってきた~ビジネスパーソンたちの試練~」など。その後、「英語でしゃべらナイト」「爆笑問題のニッポンの教養」「ソクラテスの人事」「みんなでニホンGO!」などをプロデュース。
著書に「異化力!」(水高満との共著)など。

「英語でしゃべらナイト」 ビジネスパーソン向けに新発進!

編集部:
「英語でしゃべらナイト」が新たな形で始まりますね。おめでとうございます。
丸山氏:
ありがとうございます。今までの番組のファンで喜んでくださる方々も多いと思うのですが、我々としては、今回新番組としてのまったく新しい取り組みです。タイトルも「ビジネスパーソンのための 実践!英語でしゃべらナイト」と長くなっていて(笑)、今の日本の社会状況をし っかり取材した上で、実際に働く方々のための実践的な英語学習番組と位置づけてスタートさせます。
編集部:
それで今までのように総合テレビではなく、教育テレビで語学講座として復活するのですね。
丸山氏:
はい。「英語でしゃべらナイト」に流れる異文化コミュニケーション精神で講座番組をやったらどうなるかと、作る立場としては新番組を作るような新鮮な気持ちで始まりました。講座番組というと、先生がいて生徒がいて後ろに黒板があって、というものを思い描く方もいらっしゃるかもしれませんが、学びの要素を、テレビ番組としてもっと違う形で昇華できないかと考えました。テレビ映像というのはやはりドキュメントで訴えかけることがひとつの大事な手法なわけですが、視聴者の方々にも取材対象の方と問題を共有していただいたうえで、このビジネスの場面で自分だったらどう言うだろうと考えながら見ていただくことが重要だと思っています。そうやっていろいろと考えた結果、ドキュメントとして「語学講座」を成立させるというスタイルを目指しました。
編集部:
新番組ということですが、出演されるのはいつもの方々で、つながりがあり、安心感もあります。
丸山氏:
そうですね。その点は、総合テレビで放送していた時代の、カビラさんのナレーションによる英語のシャワーの楽しい雰囲気をイメージされる方々も多いと思うので、その楽しさをベースにどのように学習要素を散りばめていくか、試行錯誤をしながら工夫しています。

新番組でも出演!ジョン・カビラさん、パックンことパトリック・ハーランさん、

青井実アナウンサー

【新番組でも出演! 左からジョン・カビラさん、パックンことパトリック・ハーランさん、青井実アナウンサー】

現在の企業を見る ドキュメンタリーな語学講座番組

編集部:
もう収録は始まっているのでしょうか。
丸山氏:
ドキュメンタリー部分は、すでに何ヶ所かの会社に取材に行っていて、進んでいます。
編集部:
取材されるのは、今話題になっている英語を社内公用語化しているような会社でしょうか。
丸山氏:
そういうところもあります。ただ、今回取材してみて、非常に興味深かったのは、僕らがイメージしやすい一部の外資系や金融系ばかりではなく、むしろ国内市場を相手にしてきたメーカーでも、グローバル化といいますか、かなり英語を使わなければいけない場面があるということです。その意味で、この1年間で登場する業種や企業は、バリエーションに富んだものになっていくと思います。一例をあげますと、4月にはビール会社内の電話会議をご紹介する予定です。今アジアの中で、中国、日本に次いで、ベトナムが第3位のビール消費国で非常に消費量が伸びていて、10年後には日本並みのビール市場になるという予測もあるそうです。そこでその会社はベトナムにビール工場を設立したのですが、そこを本格稼動させるまでには 、もう少し時間がかかると。それまでの間はカナダにある工場でビールを作り、ベトナムに届けるという手法をとっています。すると、カナダの工場に対して、ベトナムの工場建設は今どれぐらい進んでいるのか、いつまでカナダでどれくらいのビールを生産するべきかといった、カナダとベトナムとの間を調整する仕事が生まれて、今まで英語などまったく使わなかった社員の方が、急に、まさに英語をしゃべらないといけなくなるという状況が生まれています。 そういう方にスポットを当てて、仕事での書類作成や、電話会議でどのように今の状況を誤解なく伝えるか、といった場面に密着させていただいたのです。 これはもちろん英語の勉強にもなりますが、同時に日本企業の今といいますか、こんなところでこんなに国際化が進んでいるといった情報性も楽しんでいただけるのではないかと思います。
編集部:
語学講座にとどまらない、社会が見える番組になるわけですね。
丸山氏:
私自身が、教室に閉じ込められた瞬間にどうしても勉強ができなくなり、急に英語を話せと言われたら、話せなくなるタイプだったので(笑)、英語を勉強すると言うよりは、何か伝えたいのに伝わらないというような状況に追い込まれた時、その何かを伝えるためのものとしての英語を学ぶにはどうすべきか考えました。英語「を」学ぶのではなく、英語「で」学んでいきたい・・・そんな姿勢でテレビでの語学講座番組の可能性を考えようという試みです。その方が、結果として、教育的な効果も生まれるのではないかと思っているんです。番組に登場するビジネスパーソンに感情移入し、そこに自分の身を置いて、自分だったらどのように言うか、自分ならどう対処するか、と考えながら見ていただくと、さらに楽しんでいただけるのではないかと思っています。
編集部:
一般の私たちには、楽天が英語を社内公用語化するとか、パナソニックが留学生の採用数を増やすとかいった情報は、ニュースとしてしか見えてこないのですが、そこで実際に働いている方々に起こっている具体的な状況を見て、自分に照らし合わせてみると、とても身近になりますね 。
丸山氏:
そうですね。企業の組織としての動きは日々のニュースなどでも報じられますが、働いているひとりひとりに要求されるものは、イメージしにくいと思います。その場のひとりひとりにしっかりカメラがついていくことによって、その方の一日の動き方、あるいはその方の現場での具体的なコミュニケーションがわかり、必要な表現もわかってくるわけです。どこまでがちゃんとできていて、できない場合にはもどかしさを感じるという部分もリアルに感じていただけると思います。こういった部分が、今回の番組の大事な部分です。ぜひ、共感をもって見ていただきたいと思っています。日本全国のビジネスパーソンのみなさんの切実さを受け止めて、番組に生かしていくつもりです。実際これから5年10年の間に日本が経験するであろう状況からすると、グローバル化は当然避けられません。その中で、単に欧米の真似をするだけではない、日本人が日本人らしく、しっかり仕事の上で英語をしゃべるというのはどういうことなのか、意思疎通のための道具として英語を使いこなすというのはどういうことなのかを、番組を通して我々も考えていきたいですし、視聴者の方々とぜひ共有していきたいと思っています。

実際にビジネスの場で使われている英語表現を”体験“する

編集部:
ドキュメンタリーの部分で、視聴者と状況を共有するということですね。
丸山氏:
はい。そして、このドキュメンタリーをベースに、ところどころで表現に着目して、この表現はよく使われる、あるいはこういうことを伝えたいのであれば、もう少しこういう言い方をしたほうが更にいいよねというように、その流れを妨げない程度に小気味よく、流しては止め、 流しては止めるようにして、カビラさんが様々な表現を提案し、物語をナビゲートしていく、という作りになっています。
編集部:
すると、企業内のドキュメンタリーがベースですから、ターゲットはビジネスパーソンに絞られてくるのでしょうか。
丸山氏:
そうですね、その層ではありますが、あえて一言申し添えれば、「ビジネス英語」と言うと、ちょっとハイソな、高層ビルの一角のオフィスで、英字新聞などを読みながらビジネスパーソンが談笑している、といったイメージが、ある意味古典的だと思うんですけれど、今の英語の使われ方は、もっと切実であると同時に、いろんなレベル、いろんな現場でのやり取りが生まれていると思うんですね。例えば、会社のホームページを作るときにインド人の技術者とやり取りするとか、あるいは中国の方と一緒にビジネスを進めるために、漢字の筆談を組み合わせながら英語を使わざるをえないとか。そうした仕事の様々な現場を丁寧に取材させていただく中で、様々な国の方々の、訛りも含めた英語が聞こえてくることにもなるでしょうし、 我々としてもホワイトカラーのプレゼンテーションのような場だけではなくて、現場のもっと泥臭いやり取りなどをむしろしっかり取材させていただきたいと思っています。その意味では、かなり広範囲の方々に関わりが深い内容だと思います。
編集部:
日本人は、何か英語というときれいにしゃべらなくては、ネイティブのように美しく発音しなくては、という強迫観念があるように思いますね。
丸山氏:
よく言われますけれど、国際会議でのアジアの皆さんの英語を聞きますと、ちょっとした発音やイントネーションの間違いは置いておいて、言いたいこと、主義主張をしっかり押さえているんですよね。ああいう姿勢はやはり見事だと思いますし、日本人もそれを取り入れた上で、どういった場所でどんな英語をどういう形で使うのが望ましいのか、ということを考えていければと思うんです。
編集部:
すると、ビジネスパーソンをターゲットにしながらも、これから社会に出るであろう学生さんにもぜひ見て欲しいですね。TOEFLメールマガジンは学生の読者も多いので、いま社会に出ると、どういう現場が待っているのか、ということを疑似体験できそうです。
丸山氏:
ええ、それは本当にそうだと思いますね。いま、ビジネスの領域が幅広くなっていて、英語も一部のホワイトカラーのものではありません。もっと広い層の方々に当てはまるお話を、いろんな角度から取材させていただこうと思っています。僕自身、ディレクターが撮ってきた映像の編集作業に加わって一緒に見ていますと、取材を通して勉強させていただいていると感じています。英語表現もそうですし、いろんな会社の社風をのぞけたりするのも楽しいですよね。
編集部:
TOEFLメールマガジン読者は、何らかの形で海外に興味がある方が多いと思うのですが、日本人全体として留学者数が減っていたり、 就職する際に海外勤務は断るという新入社員が多いといったニュースを聞くと、今後、日本はどうなってしまうのだろうと心配です。でも今のお話を聞いて 、何も海外勤務だけが英語に接する場ではない、日本にいて普段の仕事の中で、英語をしゃべらなければならない場面が出てくるという現状は大変興味深いです。
丸山氏:
もう一つ例をひきますと、これも4月にご紹介する予定の出版社の例ですが、ふろく付きの雑誌を、いまイタリアに売り出そうとしています。主人公は51歳の部長さんで、会議でプレゼンしながら、商習慣の違うイタリアではどういう風にしたらふろく付きの雑誌が売れるのかというアドバイスを受けたりしています。その出版社も昔はもちろん国内市場が主体だったのですが、そういう企業がヨーロッパに商品を売り込み、ビジネス化してゆくという時代が自然な形でやってきています。反対に海外からもいろんなものが日本に入ってきているので、経済やお金の流れは、どんどんボーダーレス化して、こちらが行かなくても向こうから来る時代になっています。その中で、もちろん英語ができなければ絶対ダメということではありませんけれど、仕事の幅を広げ、自分自身の世界も豊かに楽しくしていくためには、英語ができて損はありませんよね。自分の世界を広げるためのコミュニケーション、という風に捉えていただければいいなと思っています。

学研での撮影のひとコマ

【出版社での撮影のひとコマ】

編集部:
おっしゃる通りですね。英語は仕事だけでなく、人生の幅も広げてくれます。
丸山氏:
また、番組を組み立て、20分のドキュメントとしてまとめていく中で思うのが、ビジネスというものは、ある種サッカーのゲームに近いということです。いみじくも、ナレーションをしてくださっているのが、サッカー中継でキャスターも勤められるジョン・カビラさん。そこで番組演出の遊び心で、物事をサッカーのプレーに見立てて考えていったらどうかと、番組での呼びかけでもビジネスプレーヤーといった言葉を使ったり、ビジネスというゲームにおいてゴールを目指していくために、どんな形でパスを繋いでいくと一番的確なのかなど、イメージしてもらうようにしました。そうやって コミュニケーションをとってパスがしっかり繋がり、パスを繋げることを楽しんだ結果として、たまたまビジネスもうまくいったという風になれば、我々も嬉しく思います。仕事だから何かしなくちゃいけないという強迫観念が先に立つよりは、仕事の中にある異文化コミュニケーションをむしろ楽しんで、楽しんだ結果として仕事の成果が付いてくるという風に考えられればさらに素晴らしいのではないでしょうか。
編集部:
身構えずに楽しめばいいのですよね。世の中でもビジネスでも、ゲーム的な要素を取り入れるというケースがありますが、学びでも そういう方法を目指すのですね。
丸山氏:
皮肉なことに、あまりにビジネスで売らんがための目的意識が強くて前のめりになってしまうと、状況が俯瞰して見えなくなりますから、それはまさに、サッカーで焦った時に何もプレーできなくなることに近い気がします。物事に真剣に真摯に向き合っているけれど、半分はどこか遊び心でそのことを客観視しているというセンスがあっていいはずで、その辺りがうまく視聴者の方に共感をもって楽しんで見ていただければと思っているところです。
編集部:
その精神は以前の「英語でしゃべらナイト」と全く変わりませんね。今まで見ていた視聴者が、新しい番組をどのように感じるかというところが楽しみです。
丸山氏:
そうですね。昔エンターテイメントとして見てくださった方々が、また楽しく見てくださることもすごく嬉しいですし、逆にビジネス英語をしっかり学ぼうという入り口から入った方にも、結果として楽しさを発見してもらえれば、それも嬉しいです。スキルやビジネスなどしっかりや る部分と、楽しさの部分の両面がうまくかみ合うようになればと、我々も楽しみながら(笑)、努力しています。
編集部:
「英語でしゃべらナイト」の精神でつくった新しい講座番組に、新しいファンがついてくれそうですね。

日本人ならではの表現をなんとか伝えたい!「丸の内ZEN問答」コーナー

丸山氏:
もう一つ、番組中盤の短いコーナーに、息抜きともいえる「丸の内ZEN問答」というコーナーを用意しました。ビジネスでのやり取り、例えば会議の中で、日本人がきわめて言いたくなる日本人的なニュアンスのフレーズってあると思うんです。「そこを何とか」「なにとぞよしなに」とか。そういうものを、日本人的なニュアンスを失わないで、どういう風にしたら英語化できるだろうか、ということを、パトリックさんが問い、青井アナが答えます。実際に、街中を行くビジネスパーソンの方々にも突然質問をぶつけて、みなさんといっしょに考えるコーナーです。もちろん、これには絶対の正解はないわけですが、どういう状況のとき、日本人がその言葉を思い浮かべるのか、また、それを英語にするということはどういうことなのか、ということも含めて、楽しみながらも考えていただけるコーナーです。
編集部:
英語にはない日本語の表現、これをどううまく伝えたらいいんだろう、ということが確かにあります。
丸山氏:
このコーナーにはテキストの方では、監修として同時通訳のエキスパートである鶴田知佳子先生に入っていただいて、単に表現を覚えるということだけでなくて、日本人としての発想法、あるいは英語での発想法、これを両方並べて考えてみることで、さらに深まるような形になればと思っています。
編集部:
現在の日本企業内のドキュメンタリー部分と、そういった肩のこらないコーナーとの構成になっているのですね。
丸山氏:
ドキュメンタリーの部分も、ビートルズサウンドに乗せ、カビラさんの英語のシャワーがあったりと、今までの演出タッチも微妙に残しますが、主役はあくまで現場の皆さんという新しいスタイルです。
編集部:
新しい「英語でしゃべらナイト」はいつから放映開始でしょうか。
丸山氏:
4月1日(金)夜11時からです。テキストも発売されています。

【丸の内でのロケ風景】

【丸の内でのロケ風景】

ナレーションにも注目! ビジネス英語に必要な英単語2500語を厳選

丸山氏:
また、ナレーションにもひと工夫あります。ビジネス英語で一番基本的な単語2500というのを選んでいただきました。ビジネスで使う英語のおよそ90%は、中学校で学んだ単語に加えて2500語でカバーできるという統計学のデータを元に、できる限りこれらをベースにナレーションを組み立てようとしています。具体例で言うと、国際情勢について質問したい時、”International Affairs”という単語を知らなくても、”What is going on in the world?”というように平易な単語の組み合わせでも表現はできますよね。「明らかにする=Clarify」という単語は、学校の教科書には、なかなか出てきませんが、ビジネスの2500語の中ではかなり頻度の高い重要な単語です。そういった情報が、ナレーションの中にも出てきますので、忙しいビジネスパーソンにも、週に一度の20分間を、テキストと合わせて見ていただければ更にいいと思います。
編集部:
知らない単語がたくさん出てくるだけで嫌になってしまうことがあります。分らない言葉でも、自分の知っている単語に置き換えてしゃべるということはすごく重要なことで、最近では「グロービッシュ(=Globish)」という言葉が取りざたされていますけれども、ビジネスでも基本単語をベースにしていれば、忙しいビジネスパーソンの方にとっても入り込みやすいのではないでしょうか。
丸山氏:
そうなんですね。我々もグロービッシュの精神を共有しているところがありまして、グローバルイングリッシュの提唱者である船川淳志さんに、テキストの執筆をお願いしています。番組とテキストとホームページとうまく組み合わせれば、更に学習効果もあると思います。
編集部:
楽しみながら学んで成果が出る、これに越したことはないですからね。楽しんでしまえというその姿勢、それがやっぱり根底にないと。
丸山氏:
そう、そうでないと続かないですね。何かを急にやらなければいけなくなっても、そのために時間を割くことはなかなかできません。そうなると、通勤電車の中でやるということになるのですが、通常は通勤電車の中ではホッとしたくなるところを、あえてそれをやるようにするには、 多少の楽しみと言いますか、自分にご褒美をあげながらやる事が大事です。逆説的な言い方ですが、学ぶというより、遊びの中に学びの要素があるというのが、僕の1つの信条です。今回の場合も悩むところですが、真剣にやりたい方には学んでいただけると同時に、肩がこらない学びにもなっているというところのバランスには配慮していますので、新しい語学番組としての試みといえると思います。

仕事へのリアリティを体験したいという要望

丸山氏:
「実践!英語でしゃべらナイト」と同様に、仕事や社会のリアリティをのぞける番組として、語学ではないのですが、総合テレビで木曜夜8時から「仕事ハッケン伝」という番組が始まります。今の学生さんは働くことに対してのリアリティみたいなものに飢えているんですね。おじさんたちは、草食系は頼りないとか言いますけれども、これだけ文明的に成熟期に入ってしまった日本では、育ってきた環境がみな豊かで、食べるために働く とか、戦後の貧しい時代から立ち上がるといった目標がないわけですから、ある意味仕方がない部分もあると思うんです。自分探しも始まるでしょう。そういう世代にも向けて、もしもう一つの人生があったら、という発想法で、番組を作っています。内容は、タレントさんに1週間、ある企業に入っていただいて、特別扱い一切なしで働いていただき、それをドキュメントにします。そのドキュメントのVTRを後でその社員の方々や他の様々な方々に見てもらいながら批評もしてもらうというものです。昨夏放映した特集番組では、アンガールズの田中さんに建設会社に入っていただきました。実は彼は広島大学の建築科を出ていらっしゃるので、もし本当に人生が違ったら、今頃建設会社で入社10年目ぐらいのはずなんです。そんな田中さんに実際に建設現場でも働いていただき、挙句の果ては、シンガポールの大規模なマンション計画の現場にまで行って、世界中から集まっている労働者の方々に日本のラジオ体操などを教えたりすることにもちゃんと挑戦してもらいました。もう1人、優木まおみさんには、IT系の企業に1週間入っていただき、ここでは新規事業プロジェクトに加わってもらいました。その番組は高橋克典さんの渋いナレーションで、夜10時からだったのですが、若い方々や、あるいは40代、50代の女性で、たぶん息子さんの就職のことも考えておられる世代に、今の時代の会社ってこうなんだという情報性があったようで、非常に反響があり、この4月からは、夜8時という時間帯にお送りすることになりました。学生さんたちにお話をして番組を見ていただく機会があるのですが、実は、近年では 、この番組が一番反響がありました。みなさん、仕事に対するリアリティというのを本当に求めているのですね。
編集部:
そうですね。先ほどの「実践!英語でしゃべらナイト」のドキュメンタリーでも、実際にそこで働いているスタッフと自分を重ね合わせられると、より英語を勉強しないと、しゃべらないと、という気になります。
丸山氏:
そういう切実感というか、重みみたいなものに感情移入できれば、自分ならどうするだろうかと考えます。大きな会社の概観だけ見ている間は、どこまでいっても他人事でしかありませんけれど、その人の抱えている矛盾や葛藤も含めて、どういう処理をするのだろうという、ぎりぎりのところまで、我々も取材していきたいと思っています。
編集部:
今後とも「実践!英語でしゃべらナイト」をはじめ、視聴者が楽しみながら感情移入できるような番組を期待しています。今日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。

インタビュー: 2011年2月9日 広報部 部長 景山 傑

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