TOEFLテスト日本事務局30周年記念
読者投稿コーナーは、読者の皆様にご自分の経験等をシェアしていただく場です。前回に続いて津島玲子先生の「プロセスライティング講座 その3」をお届けします。津島先生はTOEFLメールマガジン92号「達セミに学ぶ 英語学習のヒント」コーナーでレポートいただき、読者の皆様より、「すぐにでも始められる方法だ」、「わかりやすい」とご好評でした。生徒さんのライティングを読んでいつも感動されている、愛情溢れる熱血先生でいらっしゃいます。自分の意見を表現するライティングは、私たち日本人にとって苦手意識の強いスキルの一つかもしれません。しかしライティングのルールを理解し、一つ一つ順序を追って練習していくことのできるスキルでもあるのではないでしょうか。TOEFLテストの学習にも大いに活用してください!
津島 玲子(ツシマ レイコ)
千葉県船橋市出身。津田塾大学国際関係学科卒。
一般企業にて5年半働いた後、大学時代に味わった英語恐怖症を打破するべく一念発起しアメリカへ留学。ライティングの面白さに魅了され、2004年サンフランシスコ州立大学にてM.A.(TESOL)とCollege Composition Certificate (大学レベルCompositionの教授資格)を修了。帰国後、自らのESL体験を元にライティング指導に力を入れている。現在、テンプル大学ジャパン校アカデミック・イングリッシュ・プログラムなどで教授。最近は教員対象のセミナーなどでプロセスライティングの指導・普及に努めている。
94号 – その1
95号 – その2
前回は、説得力のあるパラグラフに必要な4つの構成要素のうち、最初の2つであるトピックセンテンスとサポートセンテンスを作る3つのステップをご紹介しました。3回目である今回は、残り2つの要素である具体例とまとめを取り上げます。これでパラグラフを完全攻略です!
パラグラフの基本構成をもう一度確認しましょう。前回も紹介したモデルパラグラフと構成要素をもう一度見てみましょう。
Large companies are stable. Big companies expand their markets world-widely, so they are not influenced easily by minor economic changes. For instance, a lot of small companies go bankrupt when domestic demands decrease. However, big international companies can cover losses by profit they make abroad. Therefore, large companies can survive difficulties in their homeland.
具体例は、「例えば・・・」と分りやすい例を示す文です。トピックセンテンスで意見をガツンと言い切り、サポートセンテンスでその理由を説明しました。しかし、トピックに馴染みがなければ、状況を頭に思い描くことは意外とむずかしいものです。「あぁ、そういうことか!」と読み手が納得するように、具体的な例を使う必要があります。
まとめは、トピックセンテンスで述べた意見をもう一度言及する文です。読者は、読み進めていくうちに最初に読んだ内容を忘れてしまうものです。最後に意見を繰り返すことで、「ほらね、最初にこういったでしょ!」と念押しするのがまとめの役割です。
今回は、この具体例とまとめを書くための簡単なヒントと注意点をご紹介します。
具体例は、分りやすい例を使いましょう。自分の経験や、周知されている事実を用いたり、数字を使った情報や固有名詞を使うとより効果的です。特に、5W1H に関した情報を入れるとより明確になります。
では、モデルパラグラフの具体例に使われている5W1Hの情報を見てみましょう。
For instance,
a lot of small companies go bankrupt
(who/what) (what)
when domestic demands decrease.
(when) (where)
However,
big international companies can cover losses
(who/what) (what)
by profit they make abroad.
(why/how) (where)
2つの短い文の中に、5W1Hの情報が入っていますね。全てを入れる必要はありませんが、情報が多ければより理解しやすい例になります。
具体例は、トピックセンテンスとサポートセンテンスの内容に沿っていなければなりません。内容から外れた情報が含まれているパラグラフは、一貫性がなく論理性に欠けてしまいます。
しかし、例を書き進めていくうちに、関係のない情報をつい入れてしまうケースをよく目にします。例えば、モデル具体例に次の文を付け加えたらどうなるでしょう?
A large company can pay high salaries.
「大企業は海外で得た利益で国内の損失を埋めることができる」→「だから給料が高い」と書き進めたくなるのは分ります。しかし、サポートセンテンスの「大企業は多少の経済変化に影響されにくい」の具体例ではありません。これでは説得力に欠けてしまいます。
何度も見直し余計な情報が付け足されていないかチェックするように心掛けましょう。
まとめは、トピックセンテンスの意見を再度述べるものですが、単に繰り返してはいけません。英語では、同じ言葉が重複して使われるのを避ける傾向にあります。そのため、違う単語や表現を用いて表す必要があります。
まとめにはリフレーズ(rephrase)とパラフレーズ(paraphrase)の2つの方法があります。
違う言葉を使って書き直す方法です。つまり同義語に置き換えるだけで簡単にできる方法です。
Large companies are stable.
↓ ↓ ↓
Big firms are secure.
表現したい内容を、違う表現を使って表す方法です。違う表現を使うだけでなく視点を変える必要があるので、リフレーズよりも多少難しいかもしれません。モデルパラグラフのまとめはパラフレーズです。
Large companies are stable.
↓
…large companies can survive difficulties in their homeland.
どちらの方法を使っても構いません。まずは簡単なリフレーズから始めてみましょう。日頃から類義語辞典で言い換えの表現を調べておくと役に立ちますよ。
サンプルトピックの別の理由を使って練習してみましょう。ご自身でも挑戦してみてください。(トピックセンテンスに赤色、サポートセンテンスに青色で下線が引かれています。)
Big firms offer a variety of welfare programs to their employees. A large company has a lot of money to provide its employees and their families with well-organized welfare programs which include medical, mental, and recreational supports
(具体例: 5W1H)
For example, a large company can pay part of the medical insurance and set a clinic or counselling for the workers. Also, it supplies many kinds of accommodations and institutions such as hotels and gyms that their family members can use at cheaper prices or for free.
(まとめ:トピックセンテンスの言い換え)
A big corporation can support its workers' well-being in many different ways.
今度は、前回練習した例2を使い、自分で具体例とまとめを考えてみましょう。とくに、具体例がきちんとトピックセンテンスに沿っているかどうかに注意してください。
Wokers of large companies have more chances to work abroad. Large companies often have their branches and factories in foreign countries and send their staff there to manage or supervise the local workers .
(具体例: 5W1H)
(まとめ:トピックセンテンスの言い換え)
他人が書いたパラグラフは意外と客観的に読めるものです。ペアだとお互いを気遣って言えない場合がありますが、3人グループでチェックし合うとかなり効果的ですよ。
第3回目となる今回は、パラグラフの後半部分である具体例とまとめの書き方を練習しました。
“Writing is thinking, asking, and convincing!”
たった一つのパラグラフの内容と構成を考えるために、かなりの時間を要するものです。説得力のあるパラグラフを書くことは、何度も考え、何度も書き直すことです。納得できる最高のライティングを目指し、「thinking」 「asking」 「convincing」を繰り返し考えるようにしてみましょう。