英語教師による英語教師のための情報シェアの場「達人セミナー」通称「達セミ」をご存知ですか。毎週のように自発的かつボランティアで全国各地にて開催され、それぞれの授業方法を公開しシェアしています。基本的には中学・高校の教師の方々が中心ですが、その授業には英語を楽しく学ぶヒントがたくさん隠されています。その中から毎号1名の先生にレポートしていただきます。
今回のヒントはこれ:
新潟県立新潟中央高等学校 教諭
水戸直和先生
(新潟大学大学院教育学研究科在籍中)
語学に反復練習やスピード感は大切です。ただ、時々、ひと息ついてみませんか。長い旅路を確実に歩む原動力となります。
■私の授業は音読重視だ。しかし、どれほど音読しても成果が出ない生徒がいるのである。豊富なインプットだけで、アウトプットは容易に、というのは単なる私の思い込みだった。原因は分かっている。ずばり文法を理解していないからだ。日々の音読練習を確実な成果に結び付けるには、やはり文法の「理解」が不可欠である。
■そうなると文法を勉強しなければ…ということになる。しかし、どうしてどうして。あれだけ分厚い参考書を通読する意欲はなかなか湧いてこない。それはそうだろう。書かれてあることを受け入れるだけだ。面白いはずがない。それに覚えたら覚えたで、逆に発信できなくなる。つのるのは間違ってはいないかという不安だけだ。
■話を音読活動に戻そう。音読の効用のひとつは触れる英語の絶対量を増やすことにある。そこで徹底的な音読練習の際に、ふと立ち止まる場面を盛り込む提案をしたい。すなわち、徹底的な音読によって触れた英語の中から、今度は自分で、文の特徴や共通点を「引き出し」てみるのである。つまり文法を帰納的に発見し、整理するのである。その際、それを自分の言葉で説明してみるとよい。次第に知識がつながり、英語が見えてくる。
■ここで私の授業の一幕をご覧いただこう。
■この授業は文法に息吹を吹きこむことをねらっている。単に人から言われたものではない。自分が導き出したものだ。納得もいき定着もしやすい。そして何より、自信をもってそれを活用したくなる。
■ここで2つ補足をしたい。まず、実際、自分で引き出した文法を使っても、残念ながら不自然な表現と指摘される場面もありうる。外国語だから仕方のないことだ。また触れる英語が多くなるにつれて自身の文法が研ぎ澄まされはするが、それが適応されない場面に遭遇することもありうる。しかしそんな場面にあっても、私たちの態度はすでに攻撃態勢となっている。少しくらいの修正や失敗は平気だ。確認のために勇敢に参考書を、いや専門書すら読み込む自分自身を見つけていることだろう。
■語学学習は練習・確認・修正の連続である。基本的な事項こそきちんとモノにしたい。例えばenjoyは誰もが知っている一語である。ところが、この en が高校レベルの単語enable のそれと同じ働きであることに「気づいた」のは何を隠そう、つい最近のことだ。語源辞典にもしっかりと書いてある。今、私が活用したくて仕方がない知識のひとつだ。
■このように発信することで人とを結ぶ。そして立ち止まることで知識をつなげる。こうして私たちの世界を広げてくれる言葉は、やはり魅力的なものである。
IATEFL ( International Association of Teachers of English as a Foreign Language ) に掲載されているCatherine Walter 先生の講義(動画・ハンドアウト入手可)が参考になる。