このコーナーでは俳人 灯声こと中村忠男さんに、世界で最も短い詩の形といわれる「俳句」について、日本語・英語のバイリンガルで俳句の魅力・楽しさを解説いただきます。
中村さんは、世界に発信する文化として日本語・英語両方での俳句作りに取り組まれています。季節感あふれる一句と、季語や句への思いがどう英語になっていくのかを是非お楽しみください。
灯声(中村 忠男氏)プロフィール
1950年生 東京大学法学部卒
1972年 日本航空入社
1978年 ジョージタウン大学大学院国際関係修士
2006年~2010年 日航財団常務理事として俳句事業などに携わる
俳誌「春月」同人
国際俳句交流協会(Haiku International Association)会員
Azaleas blooming fiery
the smoke from the volcano
on the day the castle was fallen and ravaged
(The ruins of the Hara Castle)
(解説)
原城は江戸時代初期の島原の乱で、天草四郎をリーダーとするキリスト教信者たちが立てこもった島原半島の先端にある城です。幕府の大軍に対して何か月も善戦しましたが、最後は落城し全員惨殺されたそうです。城は城壁に至るまで破壊されたそうですが、発掘によって当時の城壁の一部だけが復元されています。この句は、原城跡を訪れたときのもので、つつじが真赤に咲いていて、雲仙岳の噴煙がたなびいていました。落城したのは旧暦二月末だったそうですから、きっとつつじの季節だったろう、などと思いながら作った句です。因みに、「つつじ」の漢字は「躑躅」で、「てきちょく」とも読みます。俳句ではよく見る漢字です。