授業での実践事例

英語教員による生徒・学生の英語力向上に向けた授業での取り組み

 

同志社大学・内山八郎先生
  • 同志社大学 全学共通教養教育センター
  • 内山八郎先生

同志社大学におけるTOEFL®を活用した取り組み:Intensive Courses for TOEFL® (I.C.T.)

Intensive Courses for TOEFL® について

同志社大学で行っているTOEFL® テストを活用した取り組みの一つにIntensive Courses for TOEFL®(I.C.T.)があります。I.C.T.はグローバルな人材の育成を目的に、私の前任者達によって2013年に立ち上げられました。I.C.T.は全学共通教養教育センターによって運営されている選択科目の一つで、受講生はPracticeクラス(1単位)とTutorialクラス(1単位)を併せて受講する事が前提となっています。2017年度には24のI.C.T.クラスが実施され、春学期に416名、秋学期に330名の登録者がありました。これらのクラスは同じ教科書を用いて実施されています。選択科目である事から、留学をはじめ、グローバルな事象や国際的なコミュニケーションに関心を持った受講生が多く、また学習意欲が旺盛な学生が多いというのもI.C.T.の特徴であると言えます。各クラスは最大でも20名の受講生によって構成されており、少人数である事から学生間及び学生と講師間のコミュニケーションが非常に盛んである事も特徴の一つです。

Practiceコース

PracticeコースはTOEFL ITP® テスト対策を中心に据えた内容となっています。毎学期、開講時にETS公認のTOEFL ITP® テスト公式問題&学習ガイドを用いて、プリ・テストという名称で、受講生の学期開始時のTOEFL ITPテストに基づいた英語力を測定しています。学期中にはTOEFL ITPテストに即した内容を学習し、学期末に学内で実施しているTOEFL ITPテストを受験して貰い、2つのスコアに見られる伸長度を測定しています。前述の公式問題集に加え、もう一冊のテキストを併用しながら、TOEFL ITPテストに頻出の単語、及びリスニングとリーディングの問題対策、実践的なアクティビティ等を中心に授業を行っています。私が担当しているクラスでは、図書館にある私が指定した新書の中から、受講生自身が関心のあるトピックを扱った本を一冊選んで貰い、読書後、学期末に印象に残った点と受講生自身の関連した意見を纏めた英語のレポートを作成・提出して貰っています。これはTOEFLテストで重要になる教養力の増強と併せて、タイピング等、留学時や社会人としての実生活でも必要とされ、かつ有用な技能の修得を促す事も目的としています。

Tutorialコース

その一方でTutorialのクラスではTOEFL iBT® テストを模範とした内容になっています。ここでは私がTutorialクラスで行ってきた事例をいくつか紹介させていただきます。TutorialコースではTOEFL iBTテストの解説に始まり、学期中にはTOEFL iBTテストのIndependent TaskやIntegrated Taskの実践練習も行います。またTutorialコースでは受講生がPracticeのクラスで学んだ事などを、より実践的にスピーキングやライティングで表現する機会にもなり、相乗効果があると感じています。学期末のアンケートでは、多くの受講生がTutorialクラスの能動的な側面を高く評価してくれています。このクラスのメリットとして彼ら自身の意見を述べる機会が豊富にある事や、クラスメートと英語でコミュニケーションを図る時間が充分に設けられている事を挙げています。

私が担当しているTutorialコースではIndependent TaskやIntegrated Taskを基とした取り組みの他にも、学期末に受講生全員にグループ発表を行って貰います。準備は学期の中盤から始まり、まず4、5人で構成されるグループに分かれてもらい、スポーツ、音楽、インターネット、映画、外国文化、京都と出身地といったカテゴリーの中から、グループごとにジャンルを選択して貰います。ジャンルが決まったら、次にそのジャンルの中でより具体的なトピック案を各グループ内にて出し合い、グループの構成員全員が興味を持って取り組める内容を反映したトピックを選んで貰います。受講生はこの作業完了後、それ以降のクラスでは授業内の約10分をグループ内での話し合いや準備を行い、授業外の時間にも図書館等の設備を活用して、最終発表に備えます。勿論、これらの準備が行われている期間にも授業ではTOEFL iBTテストに関連した内容の学習を進めています。

学期末に実施している発表の様子
▲ 学期末に実施している発表の様子

学期の最終授業では各グループが約15分から20分を割いて、自分たちが協力して調べた内容をパワーポイント等を用いて、英語にて発表します。これまでの行われた発表の中には音楽の分野ではジャズの歴史、フォーク・ソングの紹介、世界の代表的な楽器の紹介、外国文化のカテゴリーではロシア料理、ドイツ料理の代表例、京都と出身地の領域では、受講生の出身地の歴史や観光スポットの紹介や、京都の代表的なデザートの紹介など、多岐に渡った内容が含まれています。発表の評価はクラスメートも行い、私がTOEFL iBT® テストPropell® Workshopに参加した時にいただいたRubricsを簡素化し、発表者以外の全員で点数を付けています。この学期末の発表は、私自身が受講生の発表から初めて学ぶ事もよくあり、私自身も英語を教えるという好きな事をしながら、大変有意義に時間を過ごさせていただいいている事にいつも感謝の念を感じています。またこのような実践を通じて、受講生の皆さんに英語の楽しい側面や文化的な部分に少しでも触れていただけたと感じた時には、私自身も非常に喜びを感じます。

学期末に実施している発表の様子
▲ 今出川校地の新町キャンパスから見た今出川キャンパスの良心館

 

[参考文献]
Maruta, S., Izumi, E., & Kojima, N., (2016) “Intensive Courses for TOEFL” no Torikumi, Japan, Annual Report of Center for Learning Support and Faculty Development, Doshisha University, Volume 7, pp. 76-88.

Uchiyama, H.., Ikoma, M., Takagi, S., (2018). “Interdisciplinary Analyses of Lifestyle-related Factors, Social Capital, and Proficiency in English as a Foreign Language Among Students at a University in Japan,” Japan, JAILA Journal, Japan Association for International Liberal Arts, Volume 4, pp. 38-49.

内山八郎先生
  • 同志社大学 全学共通教養教育センター
    内山八郎先生 プロフィール
  • カリフォルニア大学バークレー校人文科学部卒業。神戸大学医学系大学院博士課程修了。博士。世界保健機関(WHO)健康開発総合研究センターの研究員、英語講師を経て、現在、同志社大学全学共通教養教育センター准教授。同大学にてIntensive Course for TOEFL (I.C.T.)を担当している。 また、英語教育に焦点を絞り、社会科学的な視点から計量解析と質的分析を用いて研究を行っている。
  • 同志社大学
  • 1875年、京都に新島襄によって前身である同志社英学校が設立され、1920年に設置された私立大学。今日でも新島襄の精神は国際主義、自由主義、キリスト教主義などの教義に反映されている。現在京都市内の今出川校地と京田辺市の京田辺校地にキャンパスを有する。国際色に溢れたキャンパスと学生の気質が特徴の一つになっている。
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  • TOEFL iBT® テストPropell® ワークショップについて
  • TOEFL® テスト主催団体ETSと当協議会が共同で毎年開催している英語教員対象のワークショップです。TOEFL iBT® テストにおける問題のねらい、採点基準や指導法等について理解いただき、今後の指導に役立てていただくことを主な目的としています。

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