ETS公認トレーナーと勉強しよう!TOEFL iBT® テストWeb準備講座

学習者が書いたエッセイを、添削・アドバイスする「ウェブ公開授業」

  • 横川綾子先生
    明治大学 国際連携機構 特任教授
  • ETS Authorized Propell® Facilitator
    ETS TOEFL ITP® Teacher Development Workshop Facilitator
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みなさん、こんにちは。TOEFL iBT® テストWeb準備講座を担当するETS公認トレーナーの横川綾子(よこがわあやこ)です。今回から新しいモデル学習者・イズミさんをお迎えします。これまでは、モデル学習者の方が書き上げたエッセイを添削したり、アドバイスしたりすることで、エッセイの「完成形」をお見せしてきました。今回は趣向を変え、みなさんには、ブレーンストーミングから校正までのプロセスを、イズミさんと共に体験していただきます。エッセイのEvolutionary process(進化過程)を追体験することで、ライティング練習に新たな視点が加わるはずですよ。

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第8回 エッセイの味は「仕込み」で決まる

学習者のご紹介

今回の相談者:医学部1年生 女性
  • 高校3年生 イズミさん(仮名)
  • <現在の英語力>
    中学3年生の時に英検2級を取得。進研模試やセンター試験の英語の偏差値は75以上、リスニングは80以上。アメリカの高校に2014年9月から通っている。初めて受けた2015年1月のTOEFL iBTテストの結果は71点(R:15、L:16、S:22、W:18)。
    <TOEFL iBTテストを受験する理由>
    香港大学を受験するため、最低でも80点は必要。大学でも授業についていけるように、それ以上を目指したい。
    <TOEFL iBTテストの学習で困っている点や悩んでいる点>
    独学なので購入したテキストを使い格闘している。短時間でスコアを上げたいので、最低でも押さえておくエッセイのポイントや幼稚にならない書き方が知りたい。
    <留学したい理由>
    大学で英語を学ぶのではなく、大学で英語を使って、つまり英語を手段として専門的な内容を学びたい。アジアの最高レベルと言われている大学で、アジアと世界のつながりを学びたいと思っている。
    <英語学習全般での課題や質問>
    ボキャブラリーが少なく、単語を覚えるのが苦手。スピーキングでは、緊張してしまい、正しく整理された文法を使って、決められた時間で話すことが苦手。

 

イズミさんへの最初の課題は、以下のトピックについて賛成の立場をとると仮定し、エッセイを書くためのアイディア出しをしてもらうこと「だけ」でした。

エッセイのテーマ

Do you agree or disagree with the following statement?
Face-to-face communication is better than other types of communication, such as letters, e-mail, or telephone calls.
Use specific reasons and examples to support your answer.


以下の主張に賛成ですか、反対ですか。
対面でのコミュニケーションは、手紙、Eメール、電話といった他のコミュニケーション方法よりも優れている。
自分の意見の根拠となる特定の理由と例を用いなさい。

「エッセイは書かなくていいんですか?」とご本人から確認があったのも、無理からぬことと思います。なぜイズミさんに、アイディアを出すだけの課題をお願いしたのか。エッセイライティングを料理に喩えると分かりやすいかもしれません。料理では「仕込み」が大切と言われます。仕込みがしっかり行われていれば、調理は手際良く進むでしょうし、仕上がりも上々のはず。エッセイを書く際にも同じことが言えます。英文を書き始める前に、自分はどんなアイディア(=材料)を持っているかを棚卸しし、その中からどのアイディアを使うかを取捨選択し、エッセイの全体像を把握するプロセス(=仕込み)が、エッセイそのものの質(=料理の味)を左右するのだと思います。

料理の場合


エッセイ

エッセイライティングの場合


エッセイ

料理とエッセイライティング、実は共通点が多いと思いませんか?では、イズミさんの課題を一緒に振り返ってみましょう。

課題

<課題1>

Face-to-face communication (対面でのコミュニケーション)の利点を表すキーワードを、できるだけ多く英語で書いてください。
(例)more information

<イズミさんのアイディア>

  • ・Fast response
  • ・No misunderstanding
  • ・Can know the feelings of each other
  • ・Body languages
  • ・Can build relationship easier

<課題2>

課題1で書き出したFace-to-face communicationの利点のうち、説得力があり、具体例や詳細説明が思い浮かぶもの3つを選び、単語・フレーズレベルからセンテンスに発展させてください。
(例)You can get more information.

<イズミさんのアイディア>

  • ・You can use the body languages to express your feelings.
  • ・There is less misunderstanding in face-to-face communication.
  • ・Face-to-face communication helps building relationship.

横川先生からアドバイス

イズミさんは、課題1で書き出した5つの利点のうち、①身振り手振りを使える、②誤解が少ない、③人間関係の構築に役立つ、の3つを選び、センテンスにしてくれました。この①②③が、エッセイの本論(Body)を構成する各パラグラフの主題を示すTopic sentence(「第1回 エッセイライティングのポイント」参照)の原形となります。この段階では、英語としての自然さや文法の正確さにとらわれすぎず、自由にアイディアを出すようにしてください(イズミさんのアイディアにも英文校正はしていません)。慣れるまでは、日本語で行ってもいいでしょう。

このアイディア出しとアイディアの取捨選択は、以下のような図を使って行うと、自分の考えを視覚的に捉えることで、より自由に発想することができます。

アイディア出し用

中央にトピックを置き、関連するキーワードを放射状に並べていく

(例)


エッセイ

アイディアの整理用

中央にトピック、周りにセンテンスに発展させた3つのアイディア、右下に結論を配置する

(例)


エッセイ

図ではなく、シンプルに箇条書きするだけでも構いません。TOEFL iBTテストを受験する際も、試験会場で配布されるメモ用紙を使い、アイディア出しと取捨選択をしっかり行ってから、そのメモを見ながらタイピングしていきましょう。30分の解答時間のうち、3分前後はこの事前準備に使います。命名:「急がば回れ」作戦!最後に、今回のポイントを振り返りましょう。

【エッセイの「仕込み」手順】

1.まずは、単語・フレーズレベルでアイディアを自由に書き出していく
2.次に、具体例や詳細説明が思い浮かぶものを3つ選び、センテンスに発展させる
3.この段階では、英語の正しさにはこだわらない。アイディアの「量」が勝負
4. 図を使うと、発想が広がりやすい

 

いかがでしたか。これからモデル学習者のイズミさんはエッセイを書いていくわけですが、今までエッセイライティングの練習をするとき、いきなり第1パラグラフから書いていた人は、まずはアイディアの棚卸しをする習慣をつけてください。その方が、書いているうちにネタ切れを起こしたり、内容が気に入らなくて書き直したり、同じことを繰り返し書いてしまうことによる時間のロスを防ぐことができます。ぜひエッセイの「仕込み」を習慣にしてください。では次回(第9回 自分にとっての当たり前≠人にとっての当たり前)お会いしましょう。

TOEFL iBT Writing Section Scoring Guide
テスト構成

 

上記は掲載時の情報です。予めご了承ください。最新情報は関連のWebページよりご確認ください。