スペシャルインタビュー

英語を活かしグローバルに活躍されている方や話題の企業や団体にインタビュー

2014.05.27
独立行政法人 科学技術振興機構 太田三晴さん
  • 独立行政法人 科学技術振興機構
  • 理数学習推進部 才能育成グループ
    副調査役 太田三晴さん

 

“「科学の甲子園 全国大会」に参加する生徒がどんどん増えて、理科と数学の勉強を続けることは楽しいと思ってくれれば幸い”

独立行政法人 科学技術振興機構について教えてください

太田さん:
科学技術振興機構(以下、JST)は文部科学省所管の独立行政法人です。国の研究開発を推進する事業を行っています。国の戦略目標に沿った基礎研究の推進や産学連携を行っておりますが、その前段階でも将来の研究者、技術者を育成するために色々なフェーズでのプログラムを用意しており、その一つとして「科学の甲子園 全国大会」を開催し、チーム戦で実験や工作などを行うような機会を高校生に提供しています。その他にもスーパーサイエンスハイスクールや国際科学オリンピックに出場する生徒さんを支援する事業などをいくつも行っています。

「科学の甲子園 全国大会」の開催経緯をお聞かせください

太田さん:
平成22年度に当時の政府から「科学の甲子園 全国大会」を創設したいという意向がありましたが、当時は高校生を対象とした理科・数学の知識や知識の活用能力をチーム戦で競うような競技会がありませんでした。例えば、スポーツの場合では高校生がチームを組んで目指すような大会があって、その大会に向かって努力をするわけですが、理科・数学に関してはチームを組んで目指すものがなかったので、そういった機会を創出したいというのが政策としてあったということです。
 
理科・数学を学んでいく中で、受験勉強というのは個人個人の勉強ということになりますが、その後大学・大学院を卒業してサイエンティスト、エンジニアになっていくと、企業であれ、研究機関であれ、チームを組んでプロジェクトを推進して課題を解決していくことになります。ですので、将来チームワークを活かしてそれぞれの素養を持った人たちとコミュニケーションを密にして、課題を解決するというアプローチを持ち込みたいという試みがありました。

「科学の甲子園 全国大会」の優勝校が出場できる「サイエンス・オリンピアド」について教えてください

太田さん:
JSTとしても「科学の甲子園 全国大会」を創るにあたり、アメリカの中高生が科学の知識や知識の活用能力をチームで競う場である「サイエンス・オリンピアド」を参考にイメージしたので、「サイエンス・オリンピアド」の趣旨を日本に導入するということはそれほど難しいことではありませんでした。「サイエンス・オリンピアド」では1チーム15人で23競技を競います。ディビジョンBが中学生、ディビジョンCが高校生の部となり、それぞれ全米50州、60チームから参加があります。参加できる60チームは、まずリージョナルトーナメントで勝ち、日本でいう都道府県大会にあたるステイトトーナメントで勝ったチームのみ全国大会にあたるナショナルトーナメントに出場できます。
編集部:
何日もかけて行うのですか?
太田さん:
全国大会は1日で行います。1日に23競技のスケジュールがあって参加できる時間枠(タイムスロット)を自分達で選ぶものと、あらかじめ主催者によって決められたものがあります。23競技の中には生命科学、物理、化学、地学と工作競技などがあります。中にはユニークなものもあり、例えば指紋の照合などを行って、刑事事件の現場を科学的に検証するというような競技もあります。理科好きの生徒が得意分野を競う別々の場面で評価され、当然、上位に入賞すると大変喜ぶわけです。彼らはこの大会のために1年掛かりで準備をします。
 
競技設定が異なるため、「科学の甲子園 全国大会」の優勝校は「サイエンス・オリンピアド」には体験参加することになります。ほとんどの生徒は海外に行った経験がありませんから、初めて世界に開かれたドアがこの大会になります。それは人生においてものすごくインパクトがあることです。多くの生徒が派遣後のアンケートで「語学力のなさを痛感した」と回答していますし、「サイエンス・オリンピアド」はアメリカの大学が会場になるのですが、キャンパスの広大さや、自由で自立性のある環境を体感することで、「将来留学したい」という回答も結構あります。
 
また、「サイエンス・オリンピアド」は開会式・表彰式がとても華やかです。アメリカ以外の参加国は日本のみということもあり、その会場では一番のフロントラインの席を用意していただいたり、紹介をしてくれたり、参加賞としてグローバルアンバサダーアワードという賞も作っていただきました。表彰式では生徒を壇上にあげてメダルを首にかけてくれるのですが、その際に会場からスタンディングオベーションが起こるわけです。そのようなアメリカ人のサービス精神を経験して帰ってきた彼らの何人かが「留学したい」「アメリカで学位を取りたい」と思うことは不思議ではないと思います。

独立行政法人 科学技術振興機構 理数学習支援センター 才能育成担当
副調査役 太田三晴様

「科学の甲子園 全国大会」の取り組みの成果はありましたか

太田さん:
教育に関わる事業は、短期的には具体的な成果がわかりづらいところがあります。結果的には彼らが研究者、技術者という道に進んでくれたらそれが成功という尺度になるのだと思いますが、その成果を測るためには、10年スパンのとても年数の長い話になります。現段階では、大会の認知度が上がり、「科学の甲子園に出たい!」という生徒が増えることが目標です。JSTでは毎回参加者にアンケートを取っていますが、満足度は9割を超えています。「また出たい」「後輩にも推薦したい」との回答も多くありますので、その点では成功していると思います。

「科学の甲子園 全国大会」の今後の取り組みをお聞かせください

太田さん:
今回の第3回大会で、兵庫県での開催が一段落しまして、次は公募で選ばれた茨城県にホストしていただいて開催することになりました。今後はこの大会をもっと認知度の高い事業にして、科学や数学に興味のある生徒の多くが「科学の甲子園 全国大会」に出場することがステータスだという理解が広まるように、大会の格を上げていくことを目指しています。第3回大会では6,704人の高校生が都道府県大会に参加していますが、参加する生徒がどんどん増えて、理科と数学の勉強を続けることは楽しいと思ってくれれば幸いです。

TOEFLテスト日本事務局であるCIEEに期待することをお聞かせください

太田さん:
まず、スポンサーとしてこの大会を盛り上げることに貢献していただいたことに感謝申し上げたいと思います。
 
CIEE様に期待したいことと言えば、理系の生徒は、将来国内が相手ではなく、研究者であろうが技術者であろうが海外を相手にしていくことになると思うので、彼らの目を海外に対して開かせるという点においてご協力いただければと思います。例えばアメリカに派遣する生徒に語学研修していただくなど、プラティカルなご支援になるかと思います。なお、「科学の甲子園 全国大会」は英語でのコミュニケーションや語学能力を問うものではないため、問題も日本語です。生徒に対しての「優勝のご褒美」ということもありますが、世界に対して目を開かせるという意味で、「サイエンス・オリンピアド」参加を優勝の副賞としています。

最後にTOEFL Web Magazineの読者にメッセージをお願いします

太田さん:
私自身の経験になりますが、民間企業に勤めた後、31歳でオーストラリアに留学しました。それまで日本的な価値観しかなかった人間が初めて海外に行って、違った言語で相手の文化を知りながら生活するということはものすごく人生にインパクトがあることだと思いました。私の時は支援する企業も組織もありませんでしたが、今の若い人は支援してくれる事業や奨学金など探せばいくらでもあると思います。海外に行ってチャレンジしたり、異文化を経験する機会が多くあるわけですから、是非、海外に出て行って、視野を広くして色々なことに挑戦して欲しいと思います。

独立行政法人 科学技術振興機構 理数学習支援センター 才能育成担当
副調査役 太田三晴様

 

「科学の甲子園 全国大会」公式Webサイトはこちら

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  • 我が国の第4期科学技術基本計画の中核的実施機関として科学技術イノベーションの創出に貢献することをミッションとしている機関です。戦略的な研究開発を推進したり、産学が連携した研究開発成果への貢献や知的財産の利用支援などを行っています。基盤形成のために次世代の理数系人材の育成も行っています。
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