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話題校トップによる英語教育、国際化への想い

東京工業大学  学長 三島良直先生
  • 2017.10.10
  • 三島良直先生
  • 東京工業大学
    学長
東京工業大学  理事・副学長(教育・国際担当) 丸山俊夫先生
  • 丸山俊夫先生
  • 東京工業大学
    理事・副学長(教育・国際担当)

前編に引き続き、東京工業大学学長の三島良直先生と同大学理事・副学長である丸山俊夫先生にお伺いしました。前編の内容はこちら

“現状で満足せずに「もっと何かやれることはないか」と常に考え行動することが、若い時の最大のメリット”

三島学長ご自身のことについてお聞かせください

編集部:
三島学長ご自身も研究を続けられていると思いますが、サイエンス自体にご興味を持たれたきっかけを教えてください。
三島学長:
祖父も父も金属材料を研究していたこともあり、自然の流れで私も金属に行きました。私も金属を専攻すると言ったら「3代続けてやるのはやめた方がいい」と。やめた方がいいと言われると、やりたくなる性格なものですからチャレンジすることにしました。同じ道に進んで一番良かったと思うことは、自宅に全部専門書があるということ。ただ親父に聞くとなんでも答えてくれたかというと、そうではなく、「自分で調べろ」と言って教えてはくれませんでしたが、きっと分からなかったのだと思います。

東京工業大学 学長三島良直先生インタビュー

編集部:
三島先生は大学の入学式の式辞を全て英語でされています。三島先生と英語との繋がりはどうでしょうか。
三島学長:
これも祖父の影響が大きくて、当時祖父は学者としては有名だったので頻繁に海外に行っていまして、幼少の頃から祖父を見送りに、羽田に何度も行く機会がありました。飛行機を見ながら「どこに行くんだろうなぁ」「その国の言葉が話せるようになって、色々なところに行ったら面白いだろうなぁ」と思ったのが最初です。それともう一つは、ビートルズですね。彼らがデビューした1962年は、私は中学生になったばかりで、最初に聞いた時から大変感動して、そこから英語にも興味を持ちました。歌が暗唱できるぐらい英語もビートルズも大好きだったのですが、なぜか試験をやると全然点が取れませんでした。自分なりにその原因を突き止めてみたところ、文法が全然理解できていないということが分かりました。
また、当時は野球がすごく好きで熱中していたこともあり、英語だけでなく成績全体がガタ落ちしてしまいました。それで「プロ野球選手になれないけれども、しっかり勉強して大学の野球部に入り、新聞に載ろう」と思い、そこから熱心に勉強に取り組みました。

東京工業大学 学長三島良直先生インタビュー

編集部:
最下位に近い順位から大学に入れるまでの英語力にしたということですが、どのような学習をされたのでしょうか。
三島学長:
基本的には中1からのやり直しです。独学で演習問題を20冊行いました。そうしていくうちにだんだんと文法が身に付いてきました。そのほかにも英語の授業で習った文章の丸暗記。丸覚えってすごく良いですよ。何百という文章を丸覚えすると、共通の文法というのが自然と覚えられるんです。例えば、ケネディ大統領の就任演説を丸覚えしましたが、その時に覚えたことは、今でも時々思い出しますし役に立ちます。
編集部:
カルフォルニア大学バークレー校へ留学されていますが、先生もTOEFL® テストを受験されたご経験がおありなのでしょうか。
三島学長:
留学時の私のTOEFLテストスコアは、520ぐらいでした。当時のバークレー校は550が必要と言われていましたが、博士コースですから初年度にEnglish as a Second Languageのクラスを2つ取ることを条件に入学を許してもらいました。

TOEFL Web Magazineの読者にメッセージをお願いします

三島学長:
絶対に海外に行けということです。行かないと損します。学生にも学士課程のなるべく早い時期に行くようにと言っていますが、彼らの最初の反応として、「英語が苦手だから行きたくない」「ハードルが高い」「メリットが分からない」という理由を挙げます。しかし、これは行ってみないと分からないんです。ただ、いきなり1年2年留学するのはハードルが高いと思うので、サマースクールや3か月など短期のものを利用して海外の講義を聞いてから大学院留学を考えれば良いと思います。「チャンスがある若いうちに行かないと、大損するよ」と言っています。

また、ハードルが高いほど成長できます。最初から無理だと思わず困難なことに挑戦すれば、今まで自分はできないと決めつけていたことができるようになったり、想像もしなかった自分を発見することもあります。まず一番大事なのは海外へ行って異文化の中で生活環境を今とガラッと変えてみること。1、2か月でも良いです。挑戦することが一番大事なのです。よく「失敗したくない」と若い人は言いますが、若い時の失敗は失敗ではなくて、全部経験になるだけなので、心配せずにチャレンジすることが大事です。

東京工業大学 学長三島良直先生、丸山俊夫理事・副学長 インタビュー

丸山理事:
今の学生は内向きで、海外に行くのを躊躇していると言われていますが、少しの期間でも良いので海外に行く機会を作って行かせると、1回の経験だけでも大きく変わります。例えば、アジアのタイ、フィリピン、インドネシアなどの大学生と一緒に寝食を共にし、アジアにおける人口問題、食糧問題などを英語で議論する10日間のプログラムでは、お互いアジア人ですから満足に英語で会話ができなくてもその体験を終えて帰って来ると、次は3か月留学だ、1年間の留学に行きたいなど、急に海外に対しての関心度が高まって前向きに変わっていきます。

東京工業大学丸山俊夫理事・副学長 インタビュー

三島学長:
できないと思っていたことが、できるようになると自信がつきますよね。現状で満足せずに「もっと何かやれることはないか」と常に考え行動することが、若い時の最大のメリットだと思います。

 

東京工業大学  学長 三島良直先生
  • 東京工業大学 学長
    三島良直先生プロフィール
  • 1975年東京工業大学大学院理工学研究科修士課程修了。79年カリフォルニア大学バークレー校大学院博士課程修了。81年東京工業大学精密工学研究所助手。97年同大学大学院総合理工学研究科材料物理科学専攻教授。同大学理事・副学長(教育・国際担当)などを経て2012年10月から現職。
東京工業大学  理事・副学長(教育・国際担当) 丸山俊夫先生
  • 東京工業大学 理事・副学長(教育・国際担当)
    丸山俊夫先生プロフィール
  • 1977年東京工業大学大学院理工学研究科博士課程修了。78年同大学工業材料研究所助手。96年同大学工学部教授。同大学大学院理工学研究科長、工学部長などを経て2012年10月から現職。
  • 東京工業大学
  • 東京工業大学は創立136年の歴史を持つ我が国最高の理工系総合大学です。「ものつくり」の精神を大切に創造性豊かな教育を実践し、日本の産業界・科学界を支える多くの人材を輩出してきました。確かな基礎力と理工系専門力、そして、人文社会系教養をあわせもち、さらに、世界を舞台に活躍できるコミュニケーション能力を身に付けた人材の育成を目指しています。
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