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話題校トップによる英語教育、国際化への想い

東北大学 副学長 山口昌弘先生
  • 2020.04.20
  • 山口昌弘先生
  • 東北大学 副学長
    (教育改革・国際戦略担当)
    教授(理学研究科)、理学博士
東北大学 国際文化研究科 岡田毅先生
  • 岡田毅先生
  • 東北大学大学院
    国際文化研究科 教授

前編に引き続き、東北大学の山口昌弘副学長と東北大学大学院国際文化研究科の岡田毅先生にお話を伺いました。前編の内容はこちら

“ETSとの連携に基づいて、これを学べば世界水準の英語力に到達する、ということがはっきりと分かるシラバスやカリキュラムができた”

東北大学の英語教育は具体的にどう変わるのでしょうか

編 集 部:
昨年からEducational Testing Service(以下、ETS)との連携を進めてこられましたが、今まで東北大学で行ってきた英語教育改革との違いを教えてください。
岡田先生 :
今回の英語教育改革では、非常勤を含む数十名の英語教員が、統一した目標に向かって明確なロードマップや目標をはっきりと打ち出した改革を行っています。それは前回の英語教育改革には不足していた部分です。ですから、今回の英語教育改革では、これまで豊富に培ってきた本学の英語教育に関する経験をはっきりとカリキュラムや授業に反映させるということに成功しているのだと思います。そのためにETSとの連携、TOEFL®テストの考え方、理念、効果を本当に見事に上手に組み合せることができたと感じています。
編 集 部:
統一されたシラバスの内容を教えていただけますでしょうか。
岡田先生 :
現在公開待ちなのでまだお話しできませんが、シラバスは全て英語で書かれています。先ほど副学長が説明なさったような学習目標をまず明示しています。次に、そこに到達するための具体的なスキルが列挙されています。そして、それらをどのようにして身に付けるのか、に応えていけるような授業を提供するためのシラバスやカリキュラムができました。ETSとの連携に基づいて、これを学べば世界水準の英語力に到達する、ということがはっきりと分かるものです。

東北大学 国際文化研究科の岡田毅先生インタビュー

編 集 部:
全て英語で書かれているということで更なる留学生の増加や交換留学、大学院留学なども意識をされていると思います。最近ではアジアの英語力が伸びてきていると言われていますが、東北大学においても留学生の英語力は高いのでしょうか。
山口副学長:
本学では日本人学生と留学生が一緒に授業を受けています。単に座って授業を受けるのではなく、様々な課題を設定し協力して取り組んでいく問題解決型の授業を展開しています。その中でやはり問題になるのは、留学生の英語力に比べて日本人学生の英語力が劣る点です。留学生はアメリカへの交換留学の基準点とされているTOEFL ITP®テスト550点を軽々と超えるレベルの英語力を持っています。そういう現実があります。そういった現状からも高いレベルの英語力が必要になってくるという認識は持っています。また、大学院でも本学では、外国の有力な大学と共同で研究教育を行う学位プログラムもありますし、グローバルな社会の中で外国からの研究者、留学生も増えていますので、英語を使う機会は更に増えると思います。既にアジアの他の国の学生たちは、非常に高い英語力を持っていて自ら発信する能力も高い。こうした学生と伍していく競争力を付けるということも重要です。

東北大学 副学長 山口昌弘先生インタビュー

編 集 部:
今回の英語教育改革では、指導される先生方も従来と違った視点の教育や指導を行うのでしょうか。
山口副学長:
そうですね。例えば高大接続などの観点で言いますと、我々としては学生に対してしっかりした英語力、英語教育をしていくことを掲げ、これから始めるところですが、まずは学生の英語力が本当に伸びていることを示すことが非常に重要ですし、当然それと同時にこのことを発信していくことが重要だと思います。その変化によって、高校までの英語教育も変わっていくことが望まれると思っています。その意味では、例えば今回の協定の中でETSと一緒に教員対象のワークショップを開催するということもアジェンダの中に入っているわけです。本学の英語教員だけではなくて、中学高校の英語教員の方にも参加いただくことで、例えば少なくとも本学のような研究型の大学を目指している高校生に向けては、高校側と一緒に同じベクトルを向けて展開できればと思っています。
編 集 部:
実際に中学高校などで学ぶ英語の内容も影響してきますね。
山口副学長:
そうですね。別な観点で申し上げますと、本学のオープンキャンパスには、毎年6万人以上の高校生が集まります。その中で新しいカリキュラムの授業を高校生に体験してもらい高校生自身に気づいてもらうことも重要だと思っています。今、入学試験のことで色々な議論がなされているわけですけれども、これは一般論となりますが、大学の英語教育が変わっていく中で、入学者の選抜の形が変わっていくのは当然だと思っています。本学でアカデミックな場面を想定した英語教育を行う時に、そうした教育を受けるための基礎学力を持っている学生が本学を目指し、また、それに相応しい資質を持った学生を選抜できるような入試になっていくのは自然な流れだろうとは思っております。どうしても高大接続と言いますと、入試や受験などその一点だけで捉えがちですが、高校までの教育と大学に入ってからの教育がある中でそれらを一体的に考えていくことが重要だと思いますので、そういった部分でも今回の連携が、一石になればと思っているところです。
編 集 部:
お話を伺って、テストにおいては、まずアカデミックであるという視点と、一貫性や公平性が重要だと思いました。ETSがテストを設計する際にはその辺を非常に重要視していますが、その点について貴学では重要視されているのでしょうか。
山口副学長:
ETSのことで申しますと、昨年の7月に協定を結ぶにあたり、取り組みを初めて見せていただいて非常に感銘を受けました。ETSが提供しているTOEFLテストの信頼性が非常に増しました。協定締結に先立つ昨年2月にはETSの幹部の方数名に来ていただいて、TOEFLテストの取り組みを紹介していただきました。それによって、本学の英語担当の先生方にETSと連携することの重要性を強く分かっていただくことができ、非常にインパクトがあったと思っています。その意味でもETSからも力強いサポートをいただけると思います。まずは、今回ETSとの連携を持ちながら英語教育改革を進めていくということですが、その成果を上げていきたいと思っていますし、そのフィードバックをしながら、より良いものを作っていくということがこれから重要になってくると思っています。ETSとの連携、それから英語教育改革もまだスタートしたばかりですので、本当に重要になるのは今後だと思っておりますので頑張っていきたいと思っております。

東北大学 副学長 山口昌弘先生インタビュー

TOEFL® Web Magazineの読者にメッセージをお願いします

山口副学長:
東北大学で新しい英語教育が始まっていきます。その中でグローバルに活躍できるような学生を育てていきたいと考えています。まずは、成果を上げていきたいと思いますのでぜひ注目していただければと思います。
岡田先生 :
大学の英語教員として「もっとご自分の授業を公開しましょう」と呼びかけたいと思います。入念に準備したモデル授業でなくても、「この目標に向かって、今回の授業ではこういうことをやっています」といった内容を公開することで、一部からは批判やフィードバックがくることもあると思います。それによってご自身の授業は良くなるはずです。ご自身が設定された具体的な目標に向かってこのような工夫をしているのだということを明確に示せる授業を同僚のみならず、中・高、そして小学校の先生方にも積極的に公開なさるべきだと思います。少し勇気の要ることですが、ご自分の授業をブラックボックス化しない方がいいでしょう。「生徒や学生には提供できても他の先生には見せられない」という事などないと私は思っています。
編 集 部:
ありがとうございました。

 

東北大学 副学長 山口昌弘先生
  • 東北大学 副学長 (教育改革・国際戦略担当)
    教授(理学研究科)、理学博士
    山口昌弘先生プロフィール
  • 東北大学教養部助手、理学部助手、助教授を経て、2003年より理学研究科教授。2018年より副学長(教育改革・国際戦略担当)。東北大学英語教育改革推進ワーキンググループの座長を務める。専門は素粒子物理学。西宮湯川記念賞受賞。
東北大学 国際文化研究科 岡田毅先生
  • 東北大学 国際文化研究科
    教授
    岡田毅先生プロフィール
  • 浜松短期大学英語科講師、山形大学教養部・教育学部助教授、ロンドン大学バークベックカレッジ客員教授を経て2004年より現職。英語教育改革推進ワーキンググループ副座長。専門は英語コーパス研究および英語教育(特にeラーニング)。英語コーパス学会理事、日本ラーニング学会、英国応用言語学会等会員。
東北大学
  • 東北大学
  • 1907年の建学以来、「研究第一」、「門戸開放」、「実学尊重」の理念のもと、多くの指導的人材を輩出し、世界的に卓越した研究成果をもって人類の知の地平を拡大し、未来社会へ向けた変革・イノベーションを先導してきました。
    2018年11月に策定した「東北大学ビジョン2030」では、教育・研究・社会連携の好循環を実現し、社会とともに成長する大学として、最先端の創造と大変革への挑戦を表明しております。

    Webサイト:https://www.tohoku.ac.jp/
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