スペシャルインタビュー

英語を活かしグローバルに活躍されている方や話題の企業や団体にインタビュー

海陽中等教育学校
  • 上段右から
    海陽中等教育学校 谷繁穂高先生
    慶應義塾大学名誉教授 鈴木佑治先生
    一般社団法人CIEE国際教育交換協議会 代表理事 根本斉
    下段左から時計回り(学年)
    海陽中等教育学校 岡本直樹さん(3)、古舘勇人さん(2)、平石雄大さん(2)、内川涼介さん(3)、穴田悠人さん(3)、桜田晃太郎さん(3)、田口仁さん(3)、兒玉太陽さん(3)
TOEFL® テスト日本事務局の一般社団法人CIEE国際教育交換協議会(以下、ETS Japan)は、全国の高校生が、理科・数学・情報等の複数の分野で科学の力を競う「科学の甲子園全国大会(主催:科学技術振興機構)」に協賛しています。2019年3月に行われた「第8回科学の甲子園全国大会」の優勝校には、昨年同様米国にて開催される全米の科学好きの高校生が集う「SCIENCE OLYMPIAD」への参加資格と、副賞として「CIEE/TOEFL賞」である2日間の英語研修が授与されました。
「第8回科学の甲子園全国大会」で優勝し、「SCIENCE OLYMPIAD」に参加された、愛知県代表・学校法人海陽学園海陽中等教育学校の皆さんと顧問の谷繁穂高先生、2日間の英語研修をご担当いただいた慶應義塾大学名誉教授の鈴木佑治先生との対談の様子をお届けします。

“短い準備期間の中で「SCIENCE OLYMPIAD」では2競技で10位以内に入るという快挙”

「SCIENCE OLYMPIAD」の感想

鈴木先生:
科学の甲子園全国大会」で優勝されてから、2か月という短い準備期間の中で「SCIENCE OLYMPIAD」(以下、SO)では、2競技で10位以内に入るという快挙を成し遂げ、とても素晴らしいことだと思います。FORENSICS(*1)、FERMI QUESTIONS(*2)、WRITE IT DO IT(*3)、CHEMISTRY LAB(*4)に出場をされましたが、改めて皆さんから出場された競技と順位を発表していただけますか。
兒玉さん:
FORENSICSは岡本と古舘で出場し9位、FERMI QUESTIONSは田口と私で出場し7位、WRITE IT DO ITは穴田と平石で出場し39位、CHEMISTRY LABは桜田と内川が出場し29位でした。
鈴木先生:
本当に素晴らしい結果です。皆さんとても頑張ってくれたと思います。競技に参加するにあたり、準備したことや意識されたことはありますか。
古舘さん:
FORENSICSは犯罪捜査を行う競技ということもあり、日本では全く勉強してこなかった分野です。アメリカの他の出場校に比べ知識や経験の差がかなりあるのは分かっていたので、その差を埋めるためにも、準備にある程度の時間をかけなければいけないと意識をして取り組みました。具体的な対策として、知識を身に付けることはもちろん、実験や筆記の練習をすること、さらに問題が英文なので英語の勉強もしなければいけませんでした。
鈴木先生:
問題の英文は読めましたか。
古舘さん:
実験で時間がなくなりほとんど問題を読むことはできませんでした。

第8回科学の甲子園全国大会」優勝校スペシャル対談
▲ 英語研修の様子(FORENSICSの発表)

鈴木先生:
実験も複数回行うと聞いていますが、何種類ぐらいの実験を行ったのですか。
岡本さん:
8種類ぐらいの実験を50分以内に行いました。具体的には犯人の血液型を特定したり、繊維やプラスチックの破片から種類を特定したり、指紋照合などを行いました。
古舘さん:
事件の状況を読んで、実際に実験で出たデータと関連のあることを抜き出して書くということが、高得点を取る上で必要なことだと思いますが、過去問をやって実験で出たデータから犯人に繋がることが書いてあれば良いことが分かりましたので、作戦として状況などには何も触れずにその点だけを書くようにしました。
鈴木先生:
FORENSICSは、法医学、物理学、生物学、心理学など複数の知識が必要であるにも関わらず、2か月間という短い準備期間で9位という好成績を収めたのはとても素晴らしいことですね。
次にFERMI QUESTIONSの話を聞かせてください。
田口さん:
FERMI QUESTIONSは一問一答式の問題を解く競技で、問題数は50問あります。英文の量としては、1問1~2行ぐらいで量は多くありませんでした。
兒玉さん:
英語に関しては他の競技に比べて楽なほうで、実際に解答用紙には自分の名前と数字しか書いていません。
鈴木先生:
どのような問題が出ましたか。
田口さん:
出題された問題は「世界に木は何本あるか」「日本からコーネル大学に電波を飛ばすと何秒で到達するか」などです。他にも日本に関連した問題も出題され「虎ノ門ヒルズの全フロアに20インチ×20インチのタイルを敷き詰めると何枚必要か」という問題もありました。
鈴木先生:
「科学の甲子園全国大会」優勝チームがグローバル・アンバサダーチームとして競技に出場し成果を上げてきたので、日本に関する問題が出題されるようになったのかもしれませんね。競技時間は何分ぐらいあったのですか。
田口さん:
50分間で、2人で分担して解きました。1問目から兒玉が解いて、私は最後の問題から解きました。また競技の対策として事前に科学や地理のあらゆる数値の一覧表を暗記しました。英語研修のSession2を終えてから、競技の直前まで覚えることに集中し、2週間ほどで全てを覚えました。
鈴木先生:
それはすごいですね。皆さんはとても意欲があり、英語研修Session1とSession2で見せた飛躍がすごかったと私は感じているので、その短い期間で覚えられたということも納得できます。

第8回科学の甲子園全国大会」優勝校スペシャル対談
▲ 英語研修の様子(FERMI QUESTIONSの発表)

田口さん:
暗記したことが出題されたのでやって良かったと思いますし、実際とても役に立ったと思います。そのほかに国内で練習をしているときも、アメリカのチームが練習会で使っている問題をインターネットで見つけたので、その問題で毎日2~3セット練習を行いました。また問題に成績表が記載されていることもあったので、それと自分たちの成績を比較した時に意外と点数が高い方だと気づくことができ、そのこともモチベーションになりました。また点数の目安も書かれており7割取れていれば十分だということも分かりました。
鈴木先生:
田口さんは暗記をしただけだと謙遜していますが、私はただ暗記をしただけだとは思いません。覚えた知識を論証に引き出して使えるように訓練し、活きた知識として入っていたからこそできたことだと思います。情報が短期記憶でなく、ワーキング・メモリーとして内在化していたから、しっかりと記憶に残り全て解くことができたのだと思います。正答数はどうでしたか。
兒玉さん:
何問正解したか答案に結果が書いてないので分からないのですが、体感としては、時間内に全問解けて最後5分で見直しすることもできましたので手応えはありました。
鈴木先生:
なるほど。手応えがあったというだけあり、7位という素晴らしい成績でしたね。本当に誇りに思って良い成績だと思います。
続いてWRITE IT DO ITはどうでしたか。
穴田さん:
WRITE IT DO ITは一人が出題された物体について書いたものを、もう一人が組み立てるという競技ということもあり、練習量が大事な競技だと思います。しかし実際2回ぐらいしか練習する時間がなかったこともあり、結果としては練習不足で他のチームとの差を埋めることができず、良い成績を収めることができませんでした。ただその限られた時間の中で平石が良い戦略を思い付いてくれて、戦略的には他のチームには確実に勝っていたと思います。
鈴木先生:
戦略的に良かった点とはどういったことですか。
平石さん:
WRITE IT DO ITは日本語で書いても良い競技なのですが、実在しない物体を時間内に文字で表現してパートナーに伝えなくてはならず、書く担当としては悩みました。特に位置を表すのが難しい競技だったので、それをどうやって伝えようかと考えたときに、座標を使うことで表現できると考えました。図や絵で伝えることは禁止されているので、例えば長方形だったら、縦横で0~10として、6と5の位置というように座標で伝えるということを事前に決めておきました。

第8回科学の甲子園全国大会」優勝校スペシャル対談
▲ 英語研修の様子(WRITE IT DO ITの発表)

鈴木先生:
実際にやってみてどうでしたか。
穴田さん:
座標はとても分かりやすかったです。例えば歯ブラシなどのありふれた物体だと形が決まっているので作りやすいですが、紐など形の自由がきいてしまう物体が特に難しかったです。今回も紐が2本使われていたので、状態を理解するのに、苦労しました。
鈴木先生:
それは難しいですね。材料の種類は多かったですか。
穴田さん:
材料は思いのほか種類が多かったです。
鈴木先生:
それは皆さんがいつも見慣れているものですか。日本では見かけない初めて見るものもありましたか。
穴田さん:
小さいマシュマロみたいなものや子供がよく遊ぶちょっと細長いスポンジの道具とか、日本では見ないものもありました。
鈴木先生:
その点はFERMI QUESTIONSと非常に似ていますね。英語力だけでなくアメリカに住んでいないと分からないことも含まれています。
では最後にCHEMISTRY LABについて教えてください。

第8回科学の甲子園全国大会」優勝校スペシャル対談
▲ 英語研修の様子(CHEMISTRY LABの発表)

内川さん:
CHEMISTRY LABは記述も含める一問一答式の問題と実験を行うもので、各担当式になっています。私は実験の方を担当しました。
鈴木先生:
どのような実験をしたのですか。
内川さん:
簡単にいうと、砂糖水か、弱い酸、緩衝液という3つの液体を判別するという問題と、水とアルコールを使ってプラスチックの密度を求めるという問題でした。どちらの実験も問題なくできましたが、解答用紙が英作文形式で、実験過程を全部書きなさいというものだったので、私は英語が得意じゃないこともあり頭が真っ白になってとても焦りました。実験器具名も日本語名は分かっても英語名が分からないこともあり、その都度、通訳の方に聞きながら書いていました。また、解答用紙が一緒だったこともあり、二人で解答用紙を渡し合いながら書くという状況で、最後まで解くことができませんでした。
鈴木先生:
実験するのはそれほど苦ではなかったけれども、記述するのに時間がかかったということですね。今後も必要になってくると思いますので、実験器具の英語名は今から覚えておくと良いと思います。
桜田さん:
一問一答は、問題自体はそこまで難しくなく、日本の大学受験のレベルでも十分対応できる内容でした。英語も多少はつまずく部分はありましたが、問題はありませんでした。ただ時間配分をミスしてしまいました。競技の途中で、解答用紙の裏面に15問ぐらい記述を含む問題があることが分かり焦りました。英語の単語だけ拾うように読んで、なんとか解ききってそれなりに手応えはありましたが、後半の問題の配点が高いこともあり、点数が伸びませんでした。完全に戦略ミスではありましたが、後半部分にもう少し重点をおけるような時間配分にしておけば良かったと思います。
鈴木先生:
科学用語は理解できましたか。
桜田さん:
科学用語よりも科学用語以外で分からないものが多々あって、問題文を読む上で障害になりました。また非常に問題数も多く、問題を解く時間だけでも、日本語であっても最低40~50分ぐらい確保したいレベルなのに、80問弱あったことを考えると、1問に10秒以上問題文を読むのにかけてはいけなかったので、本当に大変でした。

 

(*1)FORENSICS・・・事件現場に残された物的証拠を分析して犯人を特定する競技。英語の資料が与えられ、記述された内容を読み、実験や検証を行い根拠を述べて犯人を割り出す。証拠やデータは物理、科学、生物などの分野にまたがった物証が残されている。論理的な思考と計算力、実験力など総合した科学の技量が問われる競技。
(*2)FERMI QUESTIONS・・・フェルミ推定値を測定するのが難しい問題に対し、大体の答えを予想する競技。
(*3)WRITE IT DO IT・・・2人1組で行う競技で1人はどのように組み立てるのか説明を書き、それに基づいてもう1人の生徒がそのオブジェクトを構築する競技。
(*4)CHEMISTRY LAB・・・ガスおよび熱力学に関する実験を行った後、化学の科学プロセスにおける一連の質問に解答する競技。

 

次回は「第8回科学の甲子園全国大会」優勝校スペシャル対談 ―後編―をお送りいたします。

鈴木佑治先生
  • 聞き手:鈴木佑治先生
  • 慶應義塾大学名誉教授
  • 学校法人海陽学園 海陽中等教育学校(愛知県蒲郡市)
  • 海陽中等教育学校は、2006年4月に、トヨタ自動車、JR東海、中部電力を中心とした、経済界約80社からの支援により創設された、全寮制・中高一貫の男子校。
    この独自性を生かし、建学の精神である「将来の日本を牽引する、明るく希望に満ちた人材の育成」に則った教育を行っている。
    海陽中等教育学校 Webサイト:https://www.kaiyo.ac.jp/
  • 国立研究開発法人 科学技術振興機構
  • 科学技術振興機構(JST)は、日本の科学技術の発展を牽引する組織として、科学技術を支える人材の育成にも注力している。「科学の甲子園全国大会」はその一環として、2011年度よりJSTが開催している高校生の科学コンテストである。
    「科学の甲子園全国大会」Webサイト:https://koushien.jst.go.jp/koushien/
上記は掲載時の情報です。予めご了承ください。最新情報は関連のWebページよりご確認ください。