For Lifelong English

  • 鈴木佑治先生
  • 立命館大学生命科学部教授
    慶應義塾大学名誉教授

第59回 全米の博士論文を収録したUniversity Microfilms Internationalのデータベース

デジタル社会においてデータベースは必要不可欠ですが、この分野で米国は先進国です。今から45年前の1968年、私は南部の大学でEnglish orientation programを受講し、その初日に社会保障番号(Social Security Number)の申請書を書きました。米国市民のみならず長期滞在の外国人にも9桁のID番号が割り当てられ、米国で生活する上でなくてはならないものと聞かされ、Nathanael Yuji Suzukiの登録名で申請しました。確かに、その後10余年の米国生活で、公私種々雑多の書類に何回もこのID番号を記入させられました。米政府は、このID番号により2億数千万人の個々人の誕生日、性別、国籍、学歴、職歴、納税や年金の記録などあらゆる社会的情報をデータベースに保管し、必要に応じて取り出すことができます。年金の記録漏れと不正受給、悪質な犯罪につながる詐称を速やかにチェックすることができるので社会生活の安全を保障するための番号と言えるでしょう。米国滞在を考えている人は、Social Security AdministrationのWebsite (www.ssa.gov)を調べてみましょう。

 米国は、図書のデータベースにおいても先進国です。日本では1、2の大学にしか図書館情報学(Library Science)という専攻がなかった時代に、全米の主要大学がこの専攻を設けて、全世界の図書情報を分類して記号化することに力を注いでいました。余談になりますが、私が首都ワシントンの大学の大学院を選んだのは、全世界の主要図書を集めた議会図書館(Library of Congress)があり、必要とする全ての書籍や論文を無料で読むことができたからです。高価な本や学術雑誌を現物で入手するしかなかった時代に、貧乏学生の私には無料で本を借りて勉強できるありがたい場所でした。図書館カードは誰でも簡単に入手できます。世界中で様々な言語で出版されている出版物をデータベース化した議会図書館の規模は想像を絶します。この図書館の分類方法は米国のみならず他の国々でも使用され、分類された新刊図書の情報も提供しています。Library of CongressのWebsite (http://www.loc.gov/index.html)を見てみましょう。

将来、米国大学院博士課程への留学を考えている人には、University Microfilms International(UMI)等のオンライン・データベースにアクセスすることをお勧めします。1930年代にミシガン州アン・アーバー(Ann Arbor, Michigan)に創設され、米国の大学院で受理された全博士論文(Ph.D. dissertations)を所蔵しており、オンラインで購入できます。皆さんが目指す大学院の先人達がどのような博士論文を書いたかを読んでみるとよいでしょう。米国の大学の専任教員の人事はPh.D.を前提としますので、どこかの段階でここから応募者の博士論文を取得し精査しているものと思います。内容とともに、論文審査委員会の構成委員(通常は主査1名と副査2名)の資格・資質まで厳しくチェックしていることでしょう。Ph.D.などの学位を売るディプロマミル(diploma mills)が乱立している昨今、大学人事のセキュリティーとしてこのデータベースを使用しているようです。

上記は掲載時の情報です。予めご了承ください。最新情報は関連のWebページよりご確認ください。