For Lifelong English

  • 2014.08.12
  • 鈴木佑治先生
  • 慶應義塾大学名誉教授
    立命館大学客員教授

第73回 世界トップのアメリカの医学部は大学院プログラム、学卒者なら誰にでもオープン!

大学受験界では国公立大学医学部人気は根強く続いています。募集人数も少ないことが重なり偏差値はうなぎ上り、頂点の東大理3に合格することは至難の業のようです。筆者が2008年より2014年までの6年間教鞭をとっていた立命館大学の生命科学部と薬学部には、国公立大学医学部受験に失敗したという学生さんがたくさん居ました。諦めきれずに予備校に通いながら医学部受験に再挑戦する人も居ましたが、多くの人は医学への夢を諦めていたようです。筆者は、医学はグローバル最前線の学問であること、日本の医学部はそのほんの一部、世界のトップの医学部はアメリカなどにあり、それらは大学院プログラムであること、そこに入る為には大学で幾つかの授業を取らなければならないこと、それらは生命科学部や薬学部で受けている授業で充足できること、等々を述べました。立命館大学生命科学部・薬学部の専門科目教授陣は充実しており、学生も非常によく勉強します。筆者は「プロジェクト発信型英語プログラム」を導入しましたが、全員が専門分野で独自のテーマを立てて英語でポスター・プレゼンテーションします。そんな学生達を見て、アメリカの医学大学院で成功すると思っていました。

Top 100 QS World University Rankings for medicine 2011(*1)を見てみましょう。世界トップ10の医学部の殆どがアメリカにあることが分かるでしょう。世界トップ・レベルの医学を勉強することができます。またBest Medical Schools : Research - US News & World Report(*2)にはアメリカの医学部の総合ランキングが、医療の専門別のランキングは、Top Medical Schools - US News & World Report(*3)にあります。ただし、以前にも述べましたが、こうしたランキングにとらわれずに、勉強したい領域がどこかを見極めて、その分野で世界トップの研究がされている学部を選ぶことです。日本でも脚光を浴びている統合医療(integrated medicine)ならアリゾナ大学の医学部でしょう。統合医療の創始者Andrew Weil博士(Founder, Professor, and Director of the Arizona Center for Integrative Medicine at the University of Arizona)の授業が受けられます(*4)。

              

前述した通り、アメリカの医学部は大学院プログラムで、4年制です。以下、Medical School in the United States(*5)の情報を整理します。修了するとM.D. (Doctor of Medicine) 、または、D.O.(Doctor of Osteopathic Medicine)を取得します。大学院ですからまず大学を卒業して学士号がなければなりません。大学のGPA(Grade Point Averages)、 Medical College Admissions Test(MCAT)(*6)のスコア、推薦状、インタビューを基に合否を決めます。留学生の場合はまたTOEFL iBTのスコアが必要です。普通、大学で生物学系専攻(biological sciences)の学生が多いと言われていますが、その専攻以外の学生でも、4年生総合大学ならどの大学にも設置されているpre-health sciencesと称するコースを取れば受験資格があります。詳細はネットで調べてください。ですから、このコースさえ取れば、文科系の学生にも医学部に行く道があります。むしろ、法学、心理学、ビジネス、工学、コンピュータ・サイエンスなどとの連携プログラムが盛んで、こうしたバックグラウンドをもつ学生は大歓迎でしょう。

              

残念ながら、アメリカでは医学部も授業料が高騰していて、私立校で約500万円、州立で250万円~400万円(各州の居住者)です。トップ10の多くは私立校ですから、授業料だけで4年×500万円=2,000万円も掛かります。医学部を卒業直後の多くが平均1,500万円のローンを抱えているとのことです。ただし、凄く優秀な人にはスカラーシップが出ます。インターネットでmedical school scholarships and fellowshipsと入力して調べてみましょう。これからの医療専門家も英語を使ってグローバル社会で活躍できなければなりません。シリコンバレーのスタンフォード大学ではオンライン化の動きが早く、この秋からオンラインでThe Stanford Mini Med School: A Free Course Now Onlineを始めるようです。他の医学部もオンラインで授業配信するでしょう。 pre-health sciencesについてもオンライン・コースを提供する大学が有ります。179,000,000ヒット数(2014年7月18日現在)があるので相当人気がありそうです。一見の価値ありです。

              

このコラムで以前紹介しましたが、筆者は立命館大学生命科学部・薬学部の「プロジェクト発信型英語プログラム」の一環として、カリフォルニア大学デイビス校(University of California at Davis)での短期研修を導入しました。その最大の理由は、文頭に述べたように、両学部で将来アメリカの医学部に進む道を開きたいと思ったからです。近い将来、UC Davis School of Medicineに進学する学生が出ることでしょう。昨年、UC Davisの関係者を招いて筆者らの授業を見ていただき、また、この2月には学生を送ってみたところ、彼らのプロジェクトは大変好評でした。Facebook (https://www.facebook.com/groups/410499435762037/)でその様子を見ることが出来ます。同行した山中司准教授の話では、参加者の中に、将来、UC Davisで生命科学はもちろんのこと医学を学びたいとの関心を寄せる人も出てきたようです。引退した今は、それが実現するよう心から願い、応援しています。

(*1)http://www.theguardian.com/higher-education-network/2011/sep/05/
    top-100-universities-world-medicine-2011
(*2)http://grad-schools.usnews.rankingsandreviews.com/best-graduate-schools/
    top-medical-schools/research-rankings
(*3)http://grad-schools.usnews.rankingsandreviews.com/best-graduate-schools/
    top-medical-schools
(*4)http://www.drweil.com/
(*5)http://en.wikipedia.org/wiki/Medical_school_in_the_United_States
(*6)https://www.aamc.org/students/applying/mcat/

上記は掲載時の情報です。予めご了承ください。最新情報は関連のWebページよりご確認ください。